栗本斉の「温故知新 聴き倒しの旅」
湘南サウンドの代表格 ブレッド&バターの傑作『マハエ(真南風)』を聴く
また、万葉集に曲を付けたという「我が夫子」なんていうオリエンタルなナンバーや、ラヴィン・スプーンフルという米国のフォーク・ロック・バンドのカヴァー「COCONUT GROVE」、ちょっとコミカルなインスト曲「ニライ・カナイ」という流れもかなりユニーク。裏を返せば、詰め込みすぎて一度聴いただけでは何をやりたいのかよくわからない迷作といえるかもしれません。しかし、まだレゲエがそれほど一般的ではないこの時期に、「SAILING ON BOAD」ではそれっぽいリズム(あくまでも、それっぽいですが)を取り入れているのも興味深いし、「にわか雨」なんてハワイのサーフ・ミュージックに通じるところもあることを考えると、今のシーンの元祖といっても言いすぎではないでしょう。リゾート・サウンドとしても秀逸ですし、あらためて湘南サウンドを代表するグループであることを実感できます。
今時の湘南では、おそらくこういったサウンドを聴くことはないのでしょうけれど、湘南乃風をガンガン流しながらナンパしている輩を横目でにらみつつ、そっとブレッド&バターの心地よさに浸るのもいいものですよ。では、Enjoy Summer!
■栗本 斉
旅&音楽ライターとして活躍するかたわら、選曲家やDJ、ビルボードライブのブッキング・プランナーとしても活躍。著書に『アルゼンチン音楽手帖』(DU BOOKS)、共著に『Light Mellow 和モノ Special -more 160 item-』(ラトルズ)がある。Blog/Twitter/Facebook