吉澤嘉代子がラブリーポップに仕込んだ“棘”とは?「私の曲はほとんどが妄想から生まれます」

「中学生の頃はサンボマスターが私の心の恋人でした」

――今作では「少女性」というテーマがあるようにも感じます。

吉澤:子供の頃に見てきたものが今の私の歌詞の底辺にあると思います。年齢にすると9~13歳くらいの頃で、その時期に魔女のおばあさんにさらわれる夢を見たんです。すごく怖かったんですけど、その夢が忘れられなくて「あのまま、さらわれてたら私も特別な人間になれたのかもしれない」と思ってたんです。それで、魔女修行を始めて…。魔女のおばあさんが迎えに来てくれるかもしれないと思ってたんですよね。私は実家が、工場をやっていたので、その屋上で本を読んだり、お年玉で買った箒にまたがったり、動物とお話をしようとして買っていた犬や、うさぎを連れてきたりしました。今から考えても病んだ子どもだと思いますね(笑)。大人になったとき、そんな子供の頃の自分をすごく隠したかったんですけど、その頃の妄想がちな部分が今の自分を作っていることは確実なので、『魔女図鑑』もその頃の自分を大事にしようと、タイトルに「魔女」という言葉を入れたんです。そこから地続きになっていてほしいという気持ちもあって今作には「変身少女」とタイトルをつけました。「美少女」っていうのは姿形の美しさだけじゃなくて、理想のものに変わる自分、という意味も込めています。

――魔女修行をしていた頃は、音楽はやっていましたか。

吉澤:子供の頃から歌うのは好きでしたけど、その程度ですかね。詩を書いたり、短い歌を作ったりはしていましたけど、本格的に始めたのは高校生になってからです。始めは鼻歌を軽音楽部の子にギターでコードをつけてもらったりしてましたけど、どこか頭の中に鳴っているコードと違っていて。で、ギターを始めて、そこから今につながります。曲作りは、言葉から始まることが多くて、タイトルをつけて、「それはどんな物語だろう」と考えて歌詞やメロディをつけて、それに合わせてコードを作る、というのが自然な作り方です。

――当時、好きだったアーティストは?

吉澤:中学生の頃にサンボマスターを初めて聴いて、その時、「私に歌いかけている」と思いました。それから、サンボマスターが私の心の恋人で、高校生になったら軽音楽部に入ろうと思ったんです。私はライブでも音源でも、聴いてくれる人との一対一の関係を大事にしているんですけど、その気持ちはサンボマスターから学んだことですね。

――今の吉澤さんの音楽性につながるようなアーティストでは、どのような方を聴いていましたか?

吉澤:子供の頃は、井上陽水さんや吉田拓郎さんを聴いていました。あとは山崎まさよしさんとか、みんなが聴いていたBUMP OF CHICKEN、くるり…女性で言うと、安藤裕子さんや、矢井田瞳さんが初めて買ったCDですね。

――憧れの女性アーティストで言うと?

吉澤:やっぱりユーミンです。ずっと活躍されている、というのももちろんですけれど、曲の雰囲気も様々で、引き出しの多さにも憧れますね。

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