クリープハイプ、再出発シングルに込めた決意を語る「ちゃんと地に足がついた曲を届けたい」

「曲を安易に”手渡し”はしたくない」(尾崎)

――紆余曲折を経て、今の4人があるのだと思います。バンドの関係性、あるべき姿というのは見えてきましたか。

尾崎:今も「どうなんだろう」と思いながらやっています。これがバンドのあるべき姿だったらいいなって。

――現在進行形ですから、評価は難しいかも知れませんね。

尾崎:そうですね。

――今回のシングルでは、2006年の「ねがいり」という評判の高い楽曲も収録されていて、これを今のバージョンではじめて聴きました。10年近く前の曲なのに、今のバンドの音に合っているし、豊かな音楽として響いていますね。当時できたときにはどうだったのかを想像しながら聴いたのですが、どんな変化がありましたか?

尾崎:当時、自分はメロディも歌詞も作れるけど、それをどう表現すればいいか分からなかったんです。自分も周りのメンバーも分からない中で、すごく絶望していました。せっかくいい曲を作っても、それが完成しない。そんな感覚を持っていたときの曲なので、あらためてやってみて複雑な気持ちになりましたけど、それを今の状態でやれるのは幸せですね。

――当時、音として実現しなかったものが、今バンドで一緒になってできたということですね。ただ一貫して変わらないという強い印象は受けました。「寝癖」と同じように、「ねがいり」というモチーフがあって。

尾崎:それにしても、昔の曲を今聴くと「曲長いな」とか昔足りなかったものが分かってきますね。

長谷川:この曲はバンドの財産だと思います。この曲の内容が口に出すのも恥ずかしいものに変わってしまっているなら、もう一度収録することはなかったと思うので。

小川:尾崎は昔からいい曲を書いていたんだな、とあらためて感じましたね。その当時から尾崎とは付き合いはあって、ただ「CD出せるんだ。いいな」とも思っていました(笑)。あのとき、ライブで観ていた曲を弾くというのはうれしいですね。今、このメンバーでやってみて、また違う表情の曲になったなとも感じたので、それもすごくうれしかった。当時はもう少しギスギスした感じもあったりして、それも「ねがいり」だし、これも「ねがいり」だと思います。

小泉:昔の曲でも響きますし、その一貫性についてはただただすごいなと思います。

――クリープハイプの音楽はこれからさらに多くのリスナーに届いていくと思いますが、聴き手にあれこれサービスするタイプのバンドではありませんよね。決して媚びないのに、リスナーをつかまえる。そのあたりのリスナーとの関係についてはどう考えていますか。

尾崎:結局、僕はひねくれているから、安易に“手渡し”をしたくないんですよね。キャッチーでポップなメロディは作るし、リスナーの前に置くところまではする。でも、その曲に合わせてふざけたことを歌ったりするんです。歌詞で……。

小川:いや、歌詞以外でもね(笑)。

尾崎:まだしゃべってるから、横から口を挟まないで(笑)。そうやって、安易に手渡さないで、リスナーの方から取りにきてもらうというか。……なんか、最後にオウンゴールしたくなるような衝動があるんですよ。「やっちゃいたくなる」というか(笑)。やっちゃダメなことをやっちゃいたくなる。多くの人が素敵だなと思えるような曲に、「ラブホテル」なんてタイトルを付けたくなる、というか(笑)。そういったことが「リスナーにサービスしない」と見えているなら、うれしいですね。

――広い意味ではサービスかもしれないですけど(笑)。

尾崎:まあ期待されているところもあるかもしれないですね。そこはまたうまくひっくり返していきたいです。そういう自分の感覚や判断基準は、昔から信じているので。だからこれからも99%できて、残りの1%でふざけるか、まじめにいくかは自分を信じていこうと思っています。

――JPOPシーンではアイドルに勢いがありますが、そんな中、バンドで音楽を届けていくということについては?

尾崎:アイドルシーンにもいい音楽はあると思うし、勝てないなと思うこともあります。でも「この言葉、すごいな」と刺さるような曲はあまり目立たないので、やりがいはあるなと思いますね。「何を歌っているんだ!?」という驚きがある曲を作りたい。「まさかこんなことを歌っているわけじゃないよな…?」と思わせたいんです。

長谷川:今は、とりあえずお客さんがついてきてくれている実感があるので、よそに変な顔をつくってまでサービスや営業をする必要はないと思っています。その代わり、聴いてくれているお客さんを、求められている以上のことでびっくりさせるサービスをしていくことは大切だと思います。その人たちが満足してくれることによって、実感をもった口コミが拡大していく方が生き残れると思う。今回「寝癖」で見つけた表現を愛してもらう方向は変えずに追求していけばいいと思います。

小川:自分たちが信じるものでやっていくしかないですから。アイドルはアイドルで、そうやって受け入れられていると思う。いい曲だなと思ったり、なるほどなと思ったりする部分もあります。でもそこに歩み寄るのではなくて、自分たちが好きなもの信じているもので誠実に曲を作っていくことが大事なんだと思います。

小泉:僕は単純に「~~系」と括ってほしくないなと思っています。今の活動の仕方で、自分たちがいいと思っているものを出していけると考えていて。だから、その形での活動を継続していけたらと思っています。

――今の活動を継続し、加速させていくということですね。曲作りもどんどんしているのでしょうか?

尾崎:そうですね。曲はいっぱい作っています。ただまだ歌詞がない曲もたくさんあって、
またいろんなことが歌詞として言えるから、今から楽しみですね。

――「寝癖」は時間がかかったと伺いましたが、歌詞は普段すぐに書けるほうですか。

尾崎:きっかけの言葉さえ決まってしまえば、かなり早いですね。それまではいつも、あぁもう絶対に書けないと思っています(笑)。曲はいくらでも書ける自信はあるんですが、悩んでダメになったらもったいないから、歌詞はつけないようにしていて。曲に歌詞で意味を付けるのはとても大事なことで、曲がダメになるより、歌詞がダメになったときのほうがショックですね。

――なるほど。作詞家にもいろんなタイプがありますが、尾崎さんは自分の経験や記憶を元にするよりも、作家的想像力を使ってストーリーを生み出すタイプかなと勝手に考えているのですが、実際はどうでしょうか。

尾崎:ああ、そうですね。あまり自分の経験からというのはないかもしれないです。どちらかというと閃きや想像力だと思います。

――刺激を受けたり、アーカイブとして参照するジャンルはありますか。

尾崎:昔は小説をすごく読んでいたし、映画も観ていたんです。今は時間がなくてあまり観ていないですけど、小説、映画、あとは写真から受けた刺激が大きいと思う。音楽はあまりないですね。他のジャンルの作品のほうが、素直に楽しめるので。あと、雑誌だったら『ぴあ』を見て「ここに行ったらどうなるかな」なんて想像するのが大好きでした。いまは出ていないけれど、『ぴあ』が一冊あれば、いろんな物語ができる。そんな風にして歌詞を書いていますね。

(取材・文=神谷弘一)

■リリース情報
『寝癖』

発売:5月7日
価格:通常盤:¥1,296(税込)
   初回限定版/DVD付き:¥1,944(税込)

<収録内容>
○CD
01. 寝癖
02. ホテルのベッドに飛び込んだらもう一瞬で朝だ
03. ねがいり
04. 目覚まし時計 ※初回限定盤のみ収録

○DVD ※初回限定盤のみ収録
1.寝癖 Music video
2.寝癖 ドッキリ

<初回封入特典>
2014年全国ツアーチケット先行抽選受付シリアルナンバー
・受付期間
2014年5月6日(火・祝)12:00~5月18日(日)23:00まで
※初回限定盤、通常盤の初回製造分にのみ封入

クリープハイプ公式サイト

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