卒業発表の道重さゆみに見る、アイドルがブレイクに至る"物語”の重要性

プロモーションとコンテンツの両方の質を高めること

 モー娘再ブレイクの物語も、それが真実であれ、外側から見ればプロモーションの一環としても捉えることができる。つまり、道重のバラエティ番組での活躍やオリコン1位の連発、そして前述の物語という「プロモーション」と、EDM路線のつんく♂楽曲とフォーメーションダンスやメンバー自身の魅力などといった「コンテンツ」…この両輪がしっかりと働いていたからこそ、再ブレイクを果たすことができた、といえる。話題性だけで人を集めても中身がなければダメだし、曲やパフォーマンスだけが良くても世間に知られなければ、少なくともモー娘が目指したようなメジャーシーンでの再ブレイクは難しかっただろう。

 しかし、再ブレイクしたとはいえ、モー娘の人気が最も落ち着いていた時期でさえ、東京厚生年金会館や中野サンプラザなどの2000人規模の会場でコンサートをやれていたわけで、モー娘より売れていないアイドルの方が圧倒的に多い。それらのアイドルからすれば、どの時期のモー娘も常に「ブレイク中」に見えただろう。そうした実際的な状況はさておき、前述の再度の成り上がり的ストーリーを前面にして見せたところに、プロモーションの上手さを感じる。そしてこのプロモーションとコンテンツの双方の質を高め展開するということは、アイドルを手掛ける上で、事務所の大きさを問わず重要なことだ。モー娘擁するアップフロントという大手事務所に限らず、中小規模のアイドル運営にとっても、このモー娘再ブレイクから、学ぶべき点は多いのではないだろうか。

■道重さゆみ(みちしげ・さゆみ)
1989年7月13日、山口県生まれ。モーニング娘。の第6期メンバーであり、8代目リーダー。グループ在籍期間は4000日を超え、歴代メンバーの中でも最長記録を更新し続けている。アップフロントプロモーション所属。今年9月から行われる秋ツアーの最終日をもって、同グループ及びハロー!プロジェクトを卒業することが発表されている。
オフィシャルブログ
http://ameblo.jp/sayumimichishige-blog/

■岡島紳士(おかじま・しんし)(@ok_jm
1980年生まれ。アイドル専門ライター。著書、共著に『グループアイドル進化論』、『AKB48最強考察』、『アイドル10年史』『アイドル楽曲ディスクガイド』など。埼玉県主催「メディア/アイドルミュージアム」のアドバイザーと、会期中に行われた全9回の番組&イベントMCを担当。自身が手掛けるDVDマガジン『IDOL NEWSING vol.1』が5月21日に一般発売される。

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