アイドルのあり方はどう変化してきたか  気鋭の論者が43年分の名曲群から読み解く

岡島「大事なのはどれだけ差別化できるか、コンセプトを固められるか」

——2013年以降の今後のシーンの展望についてはどうでしょうか?

ピロスエ:今後の展望ということでひとつ言えるとしたら、これまでグループアイドルとソロアイドルが交互にきている感じはやっぱりあるので、今はグループアイドルの方が強いですが、もしかしたらソロアイドルがこれから強くなってくる可能性はあるかもしれません。それが何年後になるかはわかりませんけど。

栗原:これまでの歴史だと、山口百恵や松田聖子みたいな圧倒的な存在が現れて、一気に状況を塗り変えるという例が多かったから、ソロアイドルがこれから来るとしたら、やはりそういう人が登場するときかもしれない。武藤彩未ちゃんかなとも思ったりもするんだけれど、やっぱり違う気もする。その前は能年玲奈かなと思ったんですけど(笑)。

さやわか:それができる人がいるならば、全盛期の松浦亜弥をさらに上回るみたいな、歌もトークもあらゆることをマルチにできる人なんでしょうね。

岡島:BABYMETALが接触なしで売れました。あれが前例になると思っています。それだけ市場が広がったことの証明だと思うので、それならソロもいける、という状況にようやくなった気がします。

さやわか:そういう見方はできますね。

岡島:昔と違って代わりはいくらでもいるので、大事なのはどれだけ差別化できるか、コンセプトを固められるか、だと思います。もちろんアミューズはわかっていて、武藤彩未でコンセプトを固めようとはしています。ただ、さんみゅ~もそうですけれど80年代アイドル懐古みたいなものはいろいろな人がすでに試みていて、あまり成功していません。うまいことやっていかなければいけないと思います。

さやわか:2013年以降という話題に接続させて話すと、今や曲が良いことくらい当たり前になっているので、最低でも曲が良くないと逆に目立ってしまう、ということも言えるかもしれませんね。たとえ大手事務所でも、中途半端なことをやるとそう簡単には結果が出せないという。

岡島:ただ、まだまだ参戦していない大手事務所はたくさんありますよね。SMA(Sony Music Artists)は、アイドルネッサンスを結成しました。テレビのようなメディアに出て行くなど、大手事務所じゃないとできないことはまだまだあります。だからもっと大手も参入して多様性が増えた方がシーンはもっと面白くなるかと。

さやわか:レコードの売り上げ自体は2013年に下がっています。その意味では、楽曲がいいアイドルをたくさん見ることができるようになりましたけれど、それをやっても必ずしも儲かるとは限らないはずです。でも今、音楽で面白いことがやりたいのであったら、音楽誌もアイドルを取り上げざるをえないように、アイドルでやるのが一番お金も回って面白いことができます。今後もしばらくはこの状況が続くと思うので、違和感なく「アイドルを好き」と言える人にとってはありがたいです。ロックバンドだったら、単に売れなくて、ジャンルとしても狭くなってしまっていますから、それに比べたらアイドルの方が楽しいかな、と思いますね。

栗原:さやわかさんの『AKB商法とは何だったのか』の中に「表現活動としてのアイドル」というお話がありましたよね。あれがすごく腑に落ちたんですよね。昔のイメージを持っている人ほど「アイドル=スターを目指すもの」という図式に引きずられがちだけど、そうじゃなくて、インディーズバンドのような在り方にアイドルがなっている、と。

さやわか:「アイドルをやる」ことがバンドみたいな表現活動なんですよね。楽器は何もできなくても。

栗原:例えば、ゆずに影響を受けてギターで弾き語りを始めた人たちだって、必ずしもギターがろくに弾けたわけではなかった。むしろ、「アコギで歌う」というフォーマットに自分の表現活動を当てはめていったわけですよね。表現したい自分をはめ込んでいくという点でも、アイドルが今一番、旬のフォーマットなんでしょうね。

——最後に、3月15日(土)には新宿ロフトプラスワンでこの本の出版記念トークイベントがあります。どういう内容になりそうですか?

ピロスエ:本の内容を、もちろん時間に限りはありますがその時間内で丸々一冊再現するような、本の追体験ができるような構成を考えています。土曜の昼下がりですが、アイドル現場が被ってない方は、ぜひ来て欲しいですね!

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左から、さやわか氏、ピロスエ氏、岡島紳士氏、栗原裕一郎氏。

■イベント情報
『アイドル楽曲ディスクガイド』出版記念トークイベント
日時:OPEN 11:30 / START 12:00
価格:前売¥1,800 / 当日¥2,000(飲食代別・要1オーダー)
※前売はローソンチケット、web予約にて3/1(土)より発売開始予定
【Lコード:33642】
場所:ロフトプラスワン
160-0021 新宿区歌舞伎町1-14-7林ビルB2

【司会】ピロスエ、岡島紳士
【ゲスト】栗原裕一郎、坂本寛、さやわか、鈴木妄想、田口俊輔、DJフクタケ、 原田和典、宗像明将、岩切浩貴
【VJ】fardraut films

イベント概要:南沙織からAKB48まで。シングル850枚+アルバム100枚=950タイトル、徹底レビュー。70年代から現在までの女性アイドル史を捉えた驚愕の書『アイドル楽曲ディスクガイド Idol Music Disc Guide 1971-2013』を巡り、執筆者たちが集まって語ります!

詳細はこちら

■書籍詳細情報
ピロスエ・編『アイドル楽曲ディスクガイド Idol Music Disc Guide 1971-2013』
発売日:2014年2月27日
発行・発売:株式会社アスペクト
判型:A5判(オールカラー256ページ)
定価:2500円+税

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