米国で音楽ダウンロード売上が初めて減少 音楽記録メディアは今度どうなる?

 アメリカのビルボードが2013年の米国内における音楽販売の集計概要を発表した。CD は相変わらず不振が続き、アルバムの売上は前年比14.5%ダウンの1億6540万枚。今やアルバム総売上の41%をiTunesなどのデジタルダウンロードが占めるようになった(2011年は31%、2012年は37%)。しかし今回特筆すべきなのは、そのダウンロード売上が2003年の集計以来はじめて減少に転じたことだ。アルバムだと前年比0.1%ダウンの1億1760万件、曲単位では前年比5.7%ダウンの13億4000件となっており、特に「曲のバラ買い」の減少が目立つ結果となっている。

 デジタルダウンロード売上減少の理由を見つけるのは容易だろう。Spotifyに代表される「聴き放題ストリーミングサービス」の台頭についてはリアルサウンドでも幾度となく取り上げているが、この新興サービスがダウンロードの売上を喰っているとみて間違いない。事実、イギリスレコード産業協会が発表した2013年の英国内における音楽販売概要によると、ストリーミングサービスの売上は昨年から33.7%増加し179億5000万円近くまで成長。音楽総売上の10%を占めるまでになった(2012年は7%)。ダウンロードの普及でCDが売れない、それと同じことがストリーミングサービスでも起こりつつある。CDやダウンロード、ストリーミングなど全てのメディアを含めたトータルの売上は昨年からほぼ横ばい(昨年比0.5%減)であることからも「音楽が売れなくなった」のではなく「記録メディア」(※厳密に言うとストリーミングは「記録メディア」ではないが)が変化していると捉えるのが正解だろう。それも目まぐるしいスピードで。

 メディアの変化という観点からみると、レコード盤の売れ行きが好調なのは興味深い。先のビルボード調査によると、アメリカにおけるアナログレコード盤の売上は前年の455万枚から600万枚へと30%以上も増加している。この傾向は日本でも同様であり、日本レコード協会調べによる「アナログディスク生産金額」は2010年の1億7000万円を底に回復基調で、2012年度には6億7300万円と10年前の水準近くまで戻っている。2012年8月6日発行の日経MJは「生産量が前年の1.5倍に レコード人気、急回復のワケ」と題した特集でアナログレコードが好調な理由について「若いときにレコードを集めて、しばらく離れていたという団塊の世代の来店が目立つ」というレコード店員の声を紹介しつつ「一昔前は皆無だった20~30代の女性も来店するようになっており、年齢層の裾野は広がっている」と購買層の広がりも指摘している。ここ数年の高級オーディオブームを牽引しているのは 団塊世代であり彼らがレコードの売上を支えているのは紛れも無い事実だが、一方で若い世代、リアルタイムで聴いていない世代をも惹きつけているレコード盤。アナログ特有の温もりある音や、所有欲を満たしてくれるジャケット。デジタル全盛の時代だからこそ、そういったものへのニーズが高まっているのかもしれない。

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