各音楽誌選出の洋楽ベスト・アルバムを徹底比較! 見えてきた「2013年のベスト3枚」とは
洋楽ロックを扱う各音楽誌が、2013年12月発売の号で、恒例のベスト・アルバムを選定している。各誌の選定内容を比較してみると、”プロ“リスナーが共通して選ぶ作品の傾向が見えてきた。
洋楽ロックが売れないといわれる昨今だが、良質なアルバムは今でもリリースされている。まずは各誌のランキングを見てみよう。
洋楽ロックの年間ランキングといえば、音楽雑誌が華やかだった時代を経験した向きには2大勢力とも言える『ロッキング・オン』と『クロスビート』だろう(『クロスビート』は既に休刊し、ムックとしての刊行)。
『ロッキング・オン』が選んだ2013年ベスト・アルバム。
1位「シャングリ・ラ」ジェイク・バグ
2位「エー・エム」アークティック・モンキーズ
3位「アモック」アトムス・フォー・ピース
4位「リフレクター」アーケイド・ファイア
5位「ランダム・アクセス・メモリー」ダフト・パンク
6位「ザ・ネクスト・デイ」デヴィッド・ボウイ
7位「スナップショット」ザ・ストライプス
8位「モダン・ヴァンパイア・オブ・ザ・シティ」ヴァンパイア・ウィークエンド
9位「カムダウン・マシン」ストロークス
10位「オーヴァーグロウン」ジェイムス・ブレイク
ダフト・パンクは、ナイル・ロジャースやジョルジオ・モロダーも参加したこのアルバムで生音系ディスコにシフト。EDMの波には背を向けて、もはやポップスの域に達した音楽性で、幅広いリスナーを獲得し5位にランクイン。ダフト・パンクと同じダンス・ミュージック出身でも、ジェイムス・ブレイクのランクインは少々意外。現代のアシッド・フォークとも言える前作より、少々変則的で実験的なビート・ミュージックに向かっているので、10位とは大健闘(……とも言えるが、2013年に発売されたアルバムの中でも期待値が高かっただけに、他誌を含め、意外に評価されていないのが謎と言えば謎)。そして、トム・ヨークの趣味が多分に反映されたマニアックなプロジェクト、アトムス・フォー・ピースを選んでいるところも、少々洋楽ロック雑誌としては攻めの傾向だ。後述の『クロスビート』が、王道ロックスタイルのサヴェージズやフランツ・フェルディナンドを推して、いわゆる洋楽ロックというスタイルのバンドで固めているのと対照的。今勢いのあるジェイク・バグを、その勢いのまま1位に推しているのも、良い意味で『ロッキング・オン』がまだまだ感性の若い雑誌であるということを印象づけている。癖のあるヴォーカル、いわゆるロックのスタイルを少々斜めから切るようなひと捻りが効いての結果だろう。
お次は『クロスビート』のランキング。
1位「モダン・ヴァンパイア・オブ・ザ・シティ」ヴァンパイア・ウィークエンド
2位「リフレクター」アーケイド・ファイア
3位「ザ・ネクスト・デイ」デヴィッド・ボウイ
4位「ランダム・アクセス・メモリー」ダフト・パンク
5位「サイレンス・ユアセルフ」サヴェージズ
6位「エー・エム」アークティック・モンキーズ
7位「20/20」ジャスティン・ティンバーレイク
8位「mbv」マイ・ブラッディ・バレンタイン
9位「ライト・ソーツ、ライト・ワーズ、ライト・アクション」フランツ・フェルディナンド
10位「スナップショット」ザ・ストライプス
2013年はヴァンパイア・ウィークエンドの年でもあった。揺るがない透き通ったお洒落な音楽性。これが洋楽ロックリスナーの2013年における共通項の一つだったということだろう。他誌ではほぼ無視されているのがマイ・ブラッディ・バレンタイン。猛烈な信者が待ちに待った、久方ぶりのサード・アルバム。クオリティが高くはあるが、22年前から音楽的に全くと言っていいほど進歩が見られないことで、他誌は推すのを控えたのだろうか。実は好事家の耳にはしっかり届いているジャスティン・ティンバーレイクをベスト10に入れているところにはニヤリとさせられる。