『私の家政夫ナギサさん』が切り込む新たな“呪い” 『逃げ恥』と異なる目線で家事を見つめる

『わたナギ』が描く新たな“呪い”

 火曜ドラマが、新たな呪いにスポットライトを当てた。新型コロナウイルスの影響によって4月放送開始が延期になっていた『私の家政夫ナギサさん』(TBS系)。混乱の時期を経て、7月7日に第1話をオンエアした。

家事をキーワードにあぶり出す、現代女性の“呪い”

 新ドラマの収録が難しい期間、放送されたのが『逃げるは恥だが役に立つ』(以下、『逃げ恥』)だった。奇しくも、2つのドラマに共通しているのが、家事代行サービスから家事という仕事を見つめる展開だ。

『逃げるは恥だが役に立つ』(c)TBS

 『逃げ恥』では、主人公・みくり(新垣結衣)が家事代行サービスからヒントを得て、就職先としての契約結婚を提案。家事を時給換算し、その給料を雇用主となる夫・平匡(星野源)から受け取る。主婦=家事という仕事を手がける従業員として見ることで、夫婦になるとつい見落とされがちな「やりがい搾取」にも着目。“女性がやってくれて当たり前のもの”ではなく、家事はひとつの仕事であることを世の中に提示した。

 一方、『私の家政夫のナギサさん』では、『逃げ恥』とシチュエーションが男女逆転。主人公・メイ(多部未華子)が家事に手が回らず、ナギサさん(大森南朋)が仕事として家事を手がけるのだ。家事代行サービスを担うのが男性になると、また見えてくるものが変わってくる。

 「お母さんになりたいなんて、くだらないこと言わないで」「男の子に負けない仕事のできる女性になって」。そんな母の期待を受けて、バリバリと仕事をこなすMRとなったメイ。持ち前の頑張り屋な性格から、優秀社員賞にも輝き、若くしてチームリーダーにも抜擢される。仕事は順風満帆。

 ところが、その忙しさゆえに部屋は荒れ放題。ベッドの上は洋服だらけで、寝床はソファに。届いた通販の箱を開ける暇もない。そんな生活を見かねて、28歳の誕生日に妹がプレゼントとして送り込んだのが、エリート家政夫のナギサさんだった。

 最初のうちは知らないおじさんが部屋に入ることに抵抗を抱いたメイ。しかし、ナギサさんの確かな仕事ぶりに感心。そして、ついこんなことを聞いてしまう。「それほど仕事ができるのに、なぜ家政夫なんかに?」。それはメイの中に、母の言葉がすっかり染み付いていることを表す。家事なんて仕事のうちに入らない、誰にでもできるつまらないこと、だと。

 しかし、ナギサさんは「お母さんになりたかったから」と、小さいころのメイと同じ言葉を用いて、家事という仕事に対して誇りを持って取り組んでいることを語る。掃除や料理を通じて誰かの役に立つことに、心からやりがいを感じているナギサさん。メイは確かに自分の中に「呪い」があることを自覚するのだが、それにどう対応していいのかまだわからない。

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