クソアニメ『ポプテピピック』なぜ話題に? 構成センスとパロディ要素から紐解く

声優の入れ替えによって獲得したこと

 ここまでは『ポプテピピック』自体の魅力について解説を試みたが、映像化に際して、神風動画が行った特徴的な演出についても考えてみたい。

 まずなんと言っても声優が固定化されていないこと。毎週わけのわからないネタを30分見せられるだけのアニメに、「次はだれだろう」というワクワク感を与えたこの手法は賞賛に値する。ある意味、キャラクターの同一性を放棄するような演出だが、各声優の芝居の妙味を、毎週手を変え品を変え味わえるのはなかなかに贅沢であり、この演出によって、新たにキャラの不連続性や、無意味さを強化したといえる。

 本来、声がつくことによってキャラクターの固有性や個性は強化されるものだが(『伝染るんです。』はアニメ化に際して、声がつくことによってキャラの意味不明さが後退してしまった)、声を入れ替えることによって漫画以上にキャラの固有性を剥ぎ取ってしまったのは斬新だ。また、声優の組み合わせにも元ネタが存在しており(1話再放送分の三ツ矢雄二と日高のり子は『タッチ』の主役とヒロインで事務所の共同設立者でもある等)、パロディネタに厚みを加えている。

過剰なポリコレ時代に堂々と罵れる快感

 そして、自虐的に自身を「クソ」と罵ることで、ファンに対しても「クソアニメ」と叫ぶ自由を与えていることもユニークだ。過剰なポリコレ時代の只中で、何を発言するにも息苦しさを感じる時代に、堂々と公式に対して「クソアニメ」と罵れることに快感を感じている人もいるのではないだろうか。クソが蔑みの意味ではなく、褒め言葉としても機能してしまうのは、本作の自虐的姿勢からくるものだが、こういう点でも本作は観る人に自由を与えているのかもしれない。

 意味もわからず、ヒドいネタばかりなのに、鑑賞後に妙な爽快感を筆者は感じている。この爽快感は本作が計らずも観る人に自由を与えているからなのかもしれない。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■放送情報
『ポプテピピック』
TOKYO MX1ほかにて毎週土曜深夜1:00〜放送中
キャスト:【ポプ子】三ツ矢雄二、江原正士、悠木碧、古川登志夫、小松未可子、中尾隆聖ほか、【ピピ美】日高のり子、大塚芳忠、竹達彩奈、千葉繁、上坂すみれ、若本規夫ほか
原作:大川ぶくぶ(竹書房『まんがライフWIN』)
企画・プロデュース:須藤孝太郎
シリーズ構成:青木純(スペースネコカンパニー)
コンセプトデザインワークス:梅木葵
シリーズディレクター:青木純(スペースネコカンパニー)、梅木葵
アニメーション制作:神風動画
製作:キングレコード
公式サイト:http://hoshiiro.jp/

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