黒木華、『重版出来!』の衣装が目を引くワケ スタイリスト・堀越絹衣氏の仕事に迫る

 黒木華主演ドラマ『重版出来!』(TBS系/毎週火曜22時〜)の“衣装”が、ドラマファンの注目を集めている。一話目の放送からSNSでは、「着ている服が可愛くて真似したくなる」「衣装が個性的でおもしろい」などの声があがっており、同作の見どころのひとつとなっているようだ。個性の強いキャラクターが次から次へと登場するこのドラマは、柔道少女である主人公・黒沢心が、新人編集者として週刊コミック誌「バイブス」編集部に配属され、編集部員や漫画家、営業担当、書店員たちとの交流を通して成長していく模様を描いた“職業ドラマ”。登場人物のキャラクターをうまく反映した衣装が、それぞれの役割をより明確にし、その関係性を鮮やかに描き出していると評判だ。

 主人公の黒沢心(黒木華)は、何事にもポジティブで、明るく元気な“体育会系女子”。子供のように純粋無垢な一面も見られる彼女の衣装は、カラフルでポップな柄物が多く、また、一本筋が通った性格を表すように襟付きの洋服を着ていることが多い。色彩豊かで可愛らしい衣装は、特に同世代の女性から支持されている。編集部員の壬生平太(荒川良々)は、陽気でお調子者な大食漢で、いつも目立つ色のラフな格好をしている。食いしん坊キャラを際だたせるように、毎回食べ物に関連したイラストや文字が入ったインパクトのあるTシャツを身に着けているため、思わず笑ってしまう。

 営業担当の小泉純(坂口健太郎)は、営業先の書店で、ユーレイとアダ名されるほど、控えめでおとなしい性格。営業部ということもあって、グレーや青、紺など地味な色合いのスーツをキッチリ着ている。ネクタイは本来スーツにおいて一番個性をアピールしやすいポイントだが、自己主張が苦手な性格を表すようにノーネクタイだ。新人漫画家の中田伯(永山絢斗)は、複雑な生い立ちのため、他人の気持ちが理解できず、漫画以外のことに関しては無頓着。絵はド下手だが、ストーリーやコマ割りについては天才的な才能を持つ。そんな彼は、心を閉ざしている様を表すように、グレーなどの暗色が多く、肌をあまり露出していない。ファッションへの関心のなさを表すように、ノームコアで同じ衣装を着ていることも多い。

 衣装を手がけるのは、『すーちゃん まいちゃん さわ子さん』『東京オアシス』『かもめ食堂』などでもスタイリングをおこなった、堀越絹衣氏。過去作では、大人の女性が持つ朗らかで素朴な雰囲気を、優しくポップな色使いと繊細なディテールの衣装で、どこか浮世離れしたイメージに仕上げてきた。なかでも、フィンランドにて撮影した『かもめ食堂』の小林聡美、片桐はいり、もたいまさこの衣装は、役者陣のユニークな資質を際立たせ、作品の持つファンタジックな魅力を引き出していた。

 一方で、今回の『重版出来!』は、これまでの衣装とまた異なる印象で、よりリアリティ志向が強い。編集者たちが奮闘する現場を気迫のあるタッチで描いた、いわゆる“スポ根モノ”に属する作品だけに、その衣装も実際の編集部にいそうな現実味あるものとなっている。そのうえで、一人ひとりのキャラクターを活かした服装を意識しており、特に黒崎心は主人公ということでひときわ目を引く衣装にしているようだ。しかし、作品の世界観に寄り添った衣装で、その魅力を引き出すという点においては、これまでの堀越氏のスタイリングの延長線上にあるといえる。

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