松重豊、吉田鋼太郎、遠藤憲一……実力派アラフィフ俳優が脚光を浴びる理由とは?

 ここ数年、50代以上の俳優が主役を張るドラマがヒットする傾向にある。『三匹のおっさん』や『孤独のグルメ』は、あまりの人気で即シリーズ化され、昨年1番のヒットである『下町ロケット』は、大手企業に対抗する町工場の中年社員たちの葛藤を描いたドラマだ。今シーズンも『お義父さんと呼ばせて』や『東京センチメンタル』など、アラフィフ男性を主役としたドラマが軒並み好調である。

 その背景には、『ハケンの品格』や『昼顔』、『オトナ女子』といった30〜40代の女性を主役にした女性向けドラマが多かったことへの反動や、視聴者の年齢層が上がっていることなどももちろんあるだろう。だが、なによりも特筆すべきは、アラフィフ俳優たちの充実ぶりだ。『下町ロケット』で言えば、阿部寛が51歳で吉川晃司が50歳。同時期に放送された『エンジェル・ハート』の上川隆也も50歳である。他にも唐沢寿明が52歳、豊川悦司が53歳、高橋克典が51歳、仲村トオルが50歳と、かつて恋愛ドラマで主役級の活躍をしていた俳優たちが揃っている。彼らの円熟した演技が、昨今の作品に深みを与えているのは間違いない。

 しかし、活躍が目立つのはかつての主役級俳優ばかりではない。むしろ最近は、それまでは名脇役として知る人ぞ知る存在だったアラフィフ俳優が、より個性を発揮しているように思う。『孤独のグルメ』に抜擢された松重豊は、その代表格だろう。ただ料理を食べるだけという実験的なドラマは、予算よりアイデアで勝負するテレビ東京ならではの良作で、毎回ゲストで登場する俳優たちの演技も味わい深く、作品に独特の親密さを与えていた。

 年始にBS JAPANで放送された『猫とコワモテ』も外せない。コワモテの田中要次(52歳)が、ひたすら猫と戯れるというシンプルな内容で、50代の男がまるで“ゆるキャラ”のような存在として描かれていた。ドラマの筋書きを追うのではなく、ただその行動を観察するという視聴体験は、『孤独のグルメ』にも通じるところである。

 今シーズンのテレ東深夜ドラマ『東京センチメンタル』もまた、個性豊かなアラフィフ俳優を主役として起用した作品だ。吉田鋼太郎が55歳バツ3役で連ドラ初主演となったことで話題を集めたが、『半沢直樹』でも唯一まともな上司役として渋い演技を見せて、視聴者の好感を得ていただけに、かなりツボを突いたキャスティングといえよう。

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