窪田正孝、“影のある演技”で示す存在感 いしだ壱成~綾野剛らの系譜に続くか?
窪田正孝は、今期2本のドラマに出演している若手注目株の一人だ。同世代で活躍している若手俳優と言えば、福士蒼汰、山崎賢人、坂口健太郎らが挙げられるが、窪田は彼らとは異なる軸で評価を高めてきたように感じる。
同世代の若手俳優たちは爽やかさや可愛らしさ、あるいは誠実さを感じさせる端正なルックスと、それに見合った役柄によって人気を博しているが、窪田の場合は内省的であったり、心に影を落とす青年の役で抜きんでた存在感を発揮している。例えば、映画『ふがいない僕は空を見た』では、経済格差の底辺で苦しむ高校生役として出演し、明日の食事もままならない貧困の渦中にいる青年の不安定な心情を丁寧に演じて、国内の映画祭でも高く評価された。ドラマ版『デスノート』では、おとなしい少年の心に宿った苦悩や悲しみ、正体が暴かれることへの恐れ、身を守るため策略をめぐらすしたたかさ、そして、邪魔者を排除しようとする殺意など、様々な負の感情が揺らめく様を、おもに目つきや表情だけで見事に演じ分けていた。
その華奢なシルエットからは想像もつかない肉体美や、普段はクールだが笑顔になった途端に可愛らしさが前面に出てくる表情のギャップなど、その恵まれたビジュアルも彼が人気を博した要因ではある。しかし、それ以上に気になるのは一筋縄ではいかないミステリアスな存在感で、なにを考えているのかわからない不思議さが、人を惹きつける大きな要因となっているのは明白だ。
窪田正孝と同じく、内省的、あるいは内に秘めたものがある役柄でブレイクした俳優というと、古くは『未成年』などで、すねに傷のある少年を演じて人気者になったいしだ壱成、映画『御法度』のあやしい魅力を放つ美少年役でデビューし、今もひとくせある役に定評のある松田龍平、最近では、大河ドラマ『新撰組!』での一歩引いて苦悩する剣士役がブレイクのきっかけとなった堺雅人、『カーネーション』『八重の桜』などでの内省的な演技が光った綾野剛などがいる。彼らに続く次世代の「影のある演技」ができるホープが窪田正孝であることは、間違いないだろう。