なぜ少女は“おじさん”に恋い焦がれるのか 姫乃たまが『友だちのパパが好き』を考察

なぜ少女はときに、おじさんを好むのか?

 この映画は危ないな、と、思いました。

 『友だちのパパが好き』という、少女コミックのようなタイトルのこの映画は、ロベルト・シューマン(友だちのパパが好き、ならぬ、師匠の娘が好きになって、結婚するのに苦労した末、精神を病んで投身自殺した作曲家)の、幻想的で暗鬱としたピアノ曲「予言の鳥」とともに蠢き始めます。

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 少し変わり者の親友・マヤを持つ妙子の生活は、「妙子の父親が好き」というマヤの突飛な告白から、徐々に、しかし確実に変化していきます。笑い飛ばす母親の隣で、呆れているだけの妙子でしたが、事態は次第に「私がいうのも変だけど、あの人、奥さんいるからね?」と、トンチンカンな釘を刺さなければならないほど、混乱していきました。

 肝心のパパはひどく魅力的です。しかし、あからさまに魅力的でないところが、この映画を危険なものにしています。若い女性がおじさんを好きというと、必ず訝しがられます。人々はその好意に理由を求め、納得できる答えが出ないと、経済的余裕や背徳感など、適当な理由を付けます。ファザコンや、父親の愛情不足を疑うのもよくあることです。しかし、好意の理由は、そんなに理解しやすいものではありません。

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 パパはとても普通のサラリーマンで、世間的なモテるおじさん像からはかけ離れています。しかし、近くに寄ってみると、実は愛人がいて、さらに娘の親友からの好意もだらしなく受け取るような男でした。しかし、その、実はワルいところが魅力なわけでもありません。さらには、娘にも妻にも愛人にもマヤに対しても、女性との大事な話し合いを先延ばしにして避けるという短所まであります。それでもパパは魅力的です。

 何が彼の魅力なのか。それは序盤のとあるシーンに凝縮されていました。急に現れたマヤが、パパの帰路に付いていくシーンのことです。不意にスマートフォンで2ショット撮影してきた娘の親友に、ぎこちなく接しながら「本当に載せるの、フェイスブックに? いいけど……つまんないでしょう(俺との写真載せても)」と、何気なく口にするのです。

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