『科捜研の女』なぜ長寿番組に? 科学捜査 × 高いドラマ性が織り成す新鮮なストーリー

 忘れてはならないのが、京都府警捜査一課の刑事・土門薫(内藤剛志)だ。犯人逮捕に情熱を注ぐタフでプロフェッショナルな大人の男である土門。犯罪を許さない信念を徹底して貫く彼の姿は、本作の大きな軸の一つといっていい。決して揺らぐことのない土門の正義は、そのまま作品の正義となっている。

 事件を追及するマリコを助ける研究員たち、ときに行き詰まるマリコの力になる早月、そして、マリコとともに事件を解決する土門。彼らが絆やチームワークを発揮する姿もまた『科捜研の女』の醍醐味なのである。

 このマリコたちと真っ向から対決する好敵手が、今シーズンから登場した組織犯罪対策第三課の刑事・落合佐妃子(池上季実)だ。

 銃器や薬物の犯罪で輝かしい業績を上げてきた「銃器薬物のクイーン」である佐妃子。だが、その手法は強引で、ときには平気で同僚を欺き、犠牲にすることもある。第1話でも、捜査の手を暴力団に向けさせるため、偽造したデータを平然と科捜研に持ち込んだ。目的のために手段を選ばない佐妃子を、当然マリコと土門は受け入れない。この「祖対の死神」ともいわれる佐妃子に、マリコたちがどう立ち向かうのかが、今シーズンの見どころの一つとなっている。

 1999年から現在まで、シリーズが続いている『科捜研の女』。ミステリードラマとしての骨組みは、主人公・マリコが仲間と協力して事件を解決していく…というスタンダードなものだが、事件解決のキーとして「科学捜査」をテーマに据え、最先端の科学技術が駆使されることで、切れ味の鋭さや重厚感が失われない作りとなっている。科学技術のすごさとメンバーたちがチームワークを発揮するドラマ性が融合したこのバランスのよさが、長寿シリーズとして続いている秘訣なのではないだろうか。

 2016年1月3日に放映予定の『科捜研の女』正月スペシャルで、マリコと土門は危険ドラッグが絡む殺人事件を追い、落合佐妃子は薬物の密輸ルート摘発を狙う。捜査の過程で、どのような科学捜査が展開するのか? そして、マリコたちと佐妃子の対立の行方はいかに? 科捜研の研究員と刑事たちが繰り広げる白熱のサスペンスに、新春から目が離せない。

◼︎田下愛(たおり あい)
フリーランス・ライター。雑誌、書籍、Webメディアで、幅広いジャンルの仕事をこなし、現在は、映画・マンガ・音楽などエンターテイメントを軸に活動中。著書に「選挙はエンターテイメントだ!」(HK INTERNATIONAL VISION)がある。

◼︎ドラマ情報
『科捜研の女 正月スペシャル』 2016年1月3日(日) 午後9:00~午後11:00放送
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/kasouken15/

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