海外ドラマライター・今祥枝が選ぶ、冬休みにイッキ見したいNetflixドラマ4選

 Netflixは、もともとはレンタル店から出発した会社だ。長年に渡ってユーザーの好みや傾向を蓄積したビッグデータを生かした同社のオリジナル・シリーズは、次が観たくなること間違いなしのイッキ見に適した作りが特徴。質は高いがハイブロウ過ぎず、13話程度で1シーズンが終了するので従来の地上波の番組のように10話~15話あたりで中ダレすることもない。同時に、オリジナル番組ではない他局の優秀なシリーズも多く配信しており、放送やDVD化されていない番組を視聴できるのも大きな利点だ。そこでNetflixで配信中の極めて“ハズレ”が少ないオリジナル・シリーズを中心に、冬休みにイッキ見をオススメしたいアメリカのTVドラマを紹介する。

BLOODLINE ブラッドライン

 美しくのどかな景観が広がる海辺の町でホテルを経営するレイバーン家。絵に描いたような完璧な家族だが、厄介者の長男ダニーがホテルの45周年記念のパーティーに合わせて帰郷したことから、家族に不穏な空気が漂い始める。製作にはグレン・クローズ主演の画期的なサスペンス「ダメージ」のチームが集結。過去、現在、未来を巧みに交錯させる作風は彼らが得意とするところで、ミステリーのひっぱり具合は絶妙。ただ、「ダメージ」では作りが巧み過ぎて一般的な視聴者が置いて行かれた感もあったが、本作では適度なので見やすい。日本ではなぜか放送されない傑作ドラマ「Friday Night Lights」のカイル・チャンドラー(映画「SUPER8」)がイメージ刷新でダークな役を演じるのも見ものだが、ダメさ全開、魅惑的な人たらしのダニーが最高!演じるベン・メンデルソーンは今期の多くの賞レースに名乗りをあげる怪演で気を吐いている(2016年1月10日発表のゴールデングローブ賞にもノミネートされている)。また、あるべき家族の姿に固執する、オスカー女優シシー・スペイセク演じる母親像が憐れを誘うと同時に、結局は「家族が一番」といった、実のところは保守本流が大勢を占めるアメリカ的な価値観に一石を投じている皮肉も効いている。シリーズは継続するが、シーズン1で提示された謎はほぼ全て明かされるのでイッキ見のカタルシスは大いにあるサスペンス。

Master of None マスター・オブ・ゼロ

 アメリカで最もハイクオリティなオリジナル番組を排出し続けるプレミアム・ケーブル局HBOにその才能を発掘され、「サタデー・ナイト・ライブ」が生んだ才媛エイミー・ポーラー主演の秀作コメディ「Parks and Recreation」(なぜか日本で放送されない)で名を挙げたアジス・アンサリ。コメディアンでジャド・アパトー監督作でも知られる彼が、思いっきり自分色を出した30分のコメディだ。有名映画を模して1話で一本の映画を見たかのような作りは、ウィットに富んだシニカルな笑いがウディ・アレンを思わせるものも。今時アラサー男子の恋愛事情に妙味があるが、米有力紙の多くが今年のベストエピソードの一つとしてあげている第2話は、移民として苦労した親世代とのギャップをほろ苦くも微笑ましい感動が余韻を残して秀逸。ちなみに“多様性”は今期の米国テレビ界が掲げるキャッチフレーズで、インド系、アジア系が主演、英語以外の言語が多用される作品が地上波でも増えている。劇中ではアンサリ演じる売れない俳優が、「ひとつの番組にインド系が2人は多すぎる。アフリカ系アメリカ人がようやくその域に達したレベル」と分析する場面も。ゴールデングローブ賞ではアンサリがノミネートされている。

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