『孤独のグルメ』が支持され続ける理由とは? 淡々と紡がれる物語の魅力を読む

 2012年にはじまった深夜ドラマ『孤独のグルメ』(テレビ東京系)は、今期でSeason5となる。登場人物が料理をひたすら食べるグルメドラマは深夜ドラマの1ジャンルとして完全に定着した感があるが、その先駆けとなったのは『深夜食堂』(TBS系)と本作だろう。

 原作:久住昌之、作画:谷口ジローによる同名漫画をドラマ化した『孤独のグルメ』の世界で起こることは実に淡々としている。

 輸入雑貨の販売を生業としている井之頭五郎(松重豊)は、仕事を終えた後で立ち寄った街で毎回、食事をする。入る店は家族や個人で経営しているような場所がほとんど。メニューには、名前だけではわからない料理が載っていたり、馴染みの客が、その店独自の食べ方をしていたりする。五郎は料理を食べながら、店の中で起きていることや料理の味についてモノローグ(心の声)でつぶやく。

 他のグルメドラマや情報バラエティ番組がやるような、大げさなリアクションは本作にはない。五郎は黙々と料理を食べているだけだ。

 こんな地味なドラマがSeason5まで続き、ついにはテレビ東京の看板ドラマ枠(といっても深夜だが)であるドラマ24に登板するまでに至ったのはなぜだろうか。

 あまりに当たり前に続いているために、中々考えることの少ない本作の魅力について改めて考えてみたい。

 『孤独のグルメ』について考える時、もっとも重要な存在は原作者の久住昌之だろう。

 久住は作画の泉晴紀(現在は和泉晴紀)とコンビを組んで泉昌之というペンネームで81年に月刊誌「ガロ」に持ち込む。デビュー作となった『夜行』はトレンチコートを着た渋い男が、夜行列車の中で、駅弁の幕の内弁当を「どういう順番で食べたら美味しくいただけるか」を、モノローグで淡々と実況する作品だった。いわゆる、ハードボイルド小説のパロディなのだが『孤独のグルメ』でも展開されている「ごはんを食べている自分の実況」というスタイルは、デビュー作ですでに完成されていたものだった。

 久住は自身の所属するバンド「The Screen Tones」として『孤独のグルメ』の劇伴を担当し、脚本の協力もしている。

 そして、当初は3回だけの予定ということではじめた、番組終了後に劇中に登場したお店のモデルとなった料理店を紹介する「ふらっとQUSUMI」にも毎回出演。毎シーズンの最終話にはカメオ出演もしている。

 ここまで原作者が関わっているからこそ、原作の細かいニュアンスをドラマに持ち込めたのだろう。

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