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『龍三と七人の子分たち』インタビュー

藤竜也が明かす、独自の演技論「まずは自分をだますことが、心の支えになる」

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龍三と七人の子分たち
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藤竜也

 観客動員数130万人、興行収入16億円を突破するなど、北野武監督の映画としては、『座頭市』(2003年)に次ぐ歴代2位の好成績を記録した『龍三と七人の子分たち』。そのDVD&Blu-rayが、10月9日(金)より発売&レンタルされている。引退した元ヤクザの“ジジイ”たちが、オレオレ詐欺や悪徳訪問販売でやりたい放題のガキどもと対決する、コメディ・タッチのエンターテインメント映画となった本作。リアルサウンド映画部は、このタイミングで主人公・龍三を演じたベテラン俳優・藤竜也への取材を敢行。メインキャストの平均年齢73歳(!)という前代未聞の本作が、観客の心を捉えた理由について、さらには俳優・藤竜也の“演技論”について、大いに語ってもらった。

「そもそも、こんなにお客さんが入るなんて、想像してなかった」

――本作に関しては、かなりいろいろなメディアの取材を受けていますよね。

藤竜也(以下、藤):そうですね。こんなにたくさん取材をやったのは、生まれて初めてかもしれない。やっぱり、メディアの反応も良かったということなんでしょうね。映画なんてものは、普通こちらからお願いして宣伝していただくようなものじゃないですか。なのに、これほどいろいろな方々に取材してもらって。それは本当にありがたいことですよね。

――ひと通りの取材を受けて、どんな感想を持ちましたか?

藤:個人的には、ものすごく楽しみました。そう、僕ら役者っていうのは、撮影が終了したら、そこで仕事が終わったようなものなんですよ。だから、こうやってDVDのタイミングで話すようなことは、滅多になくて……それも含めて、楽しいですね。まあ、そもそも、こんなにお客さんが入るなんて、想像してなかったですから。それにまずビックリしました。“ジジイ”が8人も集まって……しかも、若い世代と掴み合いをやるわけじゃないですか?

――安田顕さん率いるオレオレ詐欺の若者グループと対決するという。

藤:そんな映画、ちょっと信じられないわけで……それが面白がられるっていうのは、いったいどういうことなんでしょう? 逆に、僕が聞きたいですよ。

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――やはり「そんな映画はなかった」というのが、大きいのではないでしょうか。年配の方々と若者たちがこういう絡み方をする映画って、あまりなかったですよね。

藤:ああ、年寄りたちと若者が、お互いにやり合うような? でも、言われてみれば、確かにそうかもしれないですね。昔、流行歌であったじゃないですか。「男と女のあいだには、暗くて深い川がある」って。若い世代とジジイたちのあいだにも、そういう川が流れていたのかもしれないですね。で、若い人たちが、川の向こうから「おーい」って声をかけたら、ジジイたちが「なんだー」「こっち来てみろよー」って応えたというか。そんな感じなのかもしれない。

――確かに。

藤:でも、個人的には、そういう映画のほうがいいですよね。ジジイたちが若者に、上からものを言っているような映画は、僕はあまり好きじゃないな。やっぱり、メッセージ性とかお説教臭さが無いところが、良かったんですかね? 観るときにあまり負担にならないというか……むしろ「バカみたい」っていう(笑)。

「今回の役に関しては、ほとんど何の準備もしてないです」

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――そこで主演の藤さんが果たした役割は、非常に大きかったように思います。

藤:いやあ、そのへんはどうだろう。僕自身は、全然自信が無かったというか……いつも大体そんな感じなんですよ。実際に撮影が始まるまでっていうのは、その自信のなさを、どう克服しようかってことしか考えてないというか、それが仕事みたいなものなんですよね。だから、撮影前に自分の気持ちを整えて……自分がデザインした役になれるように、いろいろと準備をするんです。「本当に俺でいいの?」って思いながら。

――ちょっと意外です。今回は、事前にどんな準備を?

藤:いや、今回の役に関しては、ほとんど何もしてないです。若い人は知らないかもしれないけど、今回みたいなアウトローの役は、これまでずいぶん演じているんですよ。だから、基本的にその“切り口”は分かっている。

――“切り口”と言うと?

藤:そういう役の場合は、まず「“恐怖”って何だろう?」というところから考えていって……あと、これは誰でもやっていることだけど、その人物の出身地であるとか、そういう設定がある場合は、実際その土地に行って、自分の目でその風景を見てみるんです。その町をうろうろ歩きながら、「この人は、このへんの学校に通っていたのかな?」とか「この郵便局から手紙を出していたのかな?」とか、いろんなことを考えて。そうすると、だんだん役が馴染んでくるんですよね。

――なるほど。

藤:まあ、そんなのは、何の足しにもならなかったりするんだけど(笑)。ただ、少なくとも自分のなかでは、それが支えになるんですよ。まずは、自分をだますというかね。僕の場合、事前にそういうことをやらないと、何か不安なんですよね。

――しかし、今回の「龍三」役を演じる際には、特にそういうこともしなかったんですね。

藤:だって、こういうコメディ仕立てのものっていうのは、これまでやったことがなかったから。そんなの、いまさら勉強のしようがないというか……何と言っても、北野武さんが監督なんだから、そこはもうお任せしようと。僕は、与えられた役を一生懸命やればいいと思っていましたね。

     
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