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Virtual Selfが来日公演で見せた、音楽ゲーム・アニメ楽曲の先鋭的な再解釈

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 5月31日、ポーター・ロビンソンのサイドプロジェクト“Virtual Self”が初となる日本公演をマイナビBLITZ赤坂で開催した。ポーターのパーソナリティやVirtual Selfの成り立ちを知っていれば、この東京公演がいかに大きな意味を持つものか理解できるだろう。改めて、「Utopia System」と名付けられたこの日を振り返りたい。

 はじめに、ポーター・ロビンソンはダンスミュージックシーンにおいて世界的に活躍するDJだが、彼の原点はここ、日本にある。ポーターのルーツは音楽ゲーム『Dance Dance Revolution』であり、その他『BEMANIシリーズ』の楽曲やPCゲームの音楽・アニソンに、トラックメイカーとして大きな影響を受けているからだ。とはいえ、その他の欧州のクラブミュージックやヒップホップなども聴いてきたポーターが自身の名義で生み出すサウンドでは、それらの要素を大々的にフィーチャーすることはなかったが、Porter Robinson & Madeon名義の「Shelter」ではA-1 Picturesとコラボするなど、次第に彼の思いが表面化。Virtual Selfでは「2000年代初期の音楽」に焦点を当てることで、存分にその“趣味性”が発揮されている。ポーターは来日前のインタビューで、「Virtual Selfは僕がもっと評価されるべきだと思う音楽やデザインをみんなに伝える、ある種ラブレターのようなもの」(参考:HYPEBEAST)と話しているが、今回のライブはその“愛”が面白いくらいに伝わってくるものだった。

 やはりハイライトは、BEMANIシリーズの楽曲を多く引用していたことだろう。今回は「PARANOiA」「Look To The Sky」(Sota Fujimori)「quaser」「TRIPMACHINE」と、4曲が彼の手によって生まれ変わり、赤坂BLITZにドロップされた。筆者は今年BEMANIシリーズの20年を振り返る書籍『BEMANIぴあ』の企画・編集を担当したのだが、ポーター・ロビンソンの存在がその動機のひとつだったことは間違いない。「ある時期は『音楽ゲームの曲はまがいもの』という風に誤解されていたことは間違いないですから。僕らはそれをひっくり返したくて、いままでこのシーンでやってきた」(Ryu☆)、「音楽ゲームの楽曲はクラブシーンのサブジャンルにもなれずに『これはクラブミュージックではない』と言われてしまっていました」(kors k)と作り手が語っていた(参考:Ryu☆×kors kがbanvoxと考える、“音楽ゲーム”からしか生まれないダンスミュージック)ように、攻めた楽曲を作ってもシーンとの乖離が起こってしまっていた苦難の2000年代を越え、彼らの手がけた音楽やゲームに影響を受けたクリエイターが国内外から飛び出してきたことで、再びその“攻めた音楽性”にスポットが当たり始めたのが、2010年代後半から現在にかけての動きだった。この日の彼のDJは、その流れを大きく肯定するように、UKのハードコアやディープハウス、ジャングル、ダークステップといった楽曲たちと音楽ゲームの楽曲を、違和感なく接続してみせた。

「面白いのは、beatmaniaの多くの日本人プロデューサーは、欧州から影響を受けていて、同時に日本の要素も取り入れていた。ジャングル・トランス・ハードコアなど、様々な音楽がミックスされていて、ものすごくユニークで、レイヴっぽいcyberなサウンドは一生好きな音楽です。Virtual Selfの目的はそれらの感情を大きく、拡大させて爆発させること」(えぐちゅんLIVE Virtual Selfインタビュー )

 このインタビュー動画では、番組MCであるRyu☆やkors kからの影響についても語っているが、この日も会場を大きく盛り上げた昨年リリースのEP『ヴァーチャル・セルフ』は、まさにその“影響”が垣間見られる作品だった。終盤の盛り上がりを担った「EON BREAK」は、カウントダウンのサンプルボイスやキャッチーなシンセの使い方にRyu☆の「I’m so Happy」のエッセンスを感じずにはいられないし、「Particle Arts」はDJ YOSHITAKAの「Evans」などを彷彿とさせるユーロトランスの再解釈なのかもしれない。ポーターの上記発言は、何も海外だけで起こっていたことではなく、日本でも2000年代にあった「欧州の影響を受けた日本の音楽ゲーム曲」を、さらに先鋭化させた楽曲が次々と登場している。『Virtual Self – EP』が面白いのは、その流れともシンクロしたといえるEPだったからだ。

 そして、EPの影響元といえば、同じく終盤とアンコールでドロップされた「Key」についても触れておきたい。発表時、あまりにもストレートなタイトルすぎて笑ってしまったのだが、彼が影響を受けたゲームブランド<key>から取ったものだろう。楽曲のメロディは全編に渡ってキャッチーで、サビのシンセが作る飛翔感は、“泣きゲー”と称される同ブランドの世界観を表現しているようでならない。そして、この日のライブでは<key>の名作『AIR』から、「鳥の詩」をDJ Sharpnelがリミックスした「鳥の詩(The Speedfreak’s Noise Rave Remix)」を披露。まさか赤坂BLITZ規模でLiaの声が響き渡るとは。しかもドイツのTHE SPEED FREAKがリミックスを手がけたバージョンということもあり、フロアは歓喜の声を上げるヲタクとただただ踊るパリピが共存するというカオスな事態に。ポーター自身、この曲のことを「best japanese song ever……」と話していたこともあったし、使わないという選択肢はなかったのであろう。

Virtual Self – Ghost Voices (Official Music Video)

      

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