Virtual Selfが来日公演で見せた、音楽ゲーム・アニメ楽曲の先鋭的な再解釈
そしてアニメといえば、意表を突かれたのが『serial experiments lain』の楽曲であるbôa「Duvet」のリミックスだった。確かに『serial experiments lain』はVirtual Selfが打ち出している2000年代前半のSF観に近いものがあるし、スクリーンに同作のアニメーションが投影されたことからも、その親和性を意識していることがわかる。ほかにも、SHIKIの「Angelic Layer(Virtual Self Remix)」やGammer「Nostalgia」など、ヨーロッパのダンスミュージックと日本のゲーム・アニメカルチャーを絶妙な混ぜ具合で一つのセットに落とし込んでいたことに興奮するばかりだった。
ビジュアル面でも、先の『serial experiments lain』のほか、2000年代のPlayStation的なTechnic AngelとPathselectorという2人のキャラクターデザインや、Virtual Selfのロゴ(フォントをみるに『FINAL FANTASY』オマージュだろうか)、時折beatmaniaっぽくなるスクリーンの画角など、視覚的にもコンセプトとしている世界観をしっかり表現しよう、という意図が伝わってきたのも面白かった。元ネタがわかれば一層楽しめるが、海外でVirtual Selfとしてパフォーマンスするにあたっては、文脈を理解していない観客の前でのプレイも多い。だからこそ、このプロジェクトが単純にガバやブレイクコアなどを含む、ダンスミュージックのDJとしてもしっかり踊らせてくれるパフォーマンスをしていたことも記しておきたい。
今回は日本公演ということもあり、元ネタとの繋がりを中心に紹介したが、Virtual Self名義でのセットが増えることで海外のDJにも影響を与えていけば、彼のような“日本国内の循環だけでは生まれ得なかった表現”を持ったトラックメイカーが登場するかもしれない。このプロジェクトはポーターの“Utopia”でありながら、そんな大きなワクワクも内包しているのだ。
(取材・文=中村拓海/撮影=Masanori Naruse)
■リリース情報
Virtual Self配信限定リリースEP 『ヴァーチャル・セルフ | VIRTUAL SELF』
全5曲
好評配信中