デビューアルバム『Flora』インタビュー
立花理香が語る、“6つの強い表現”を手に入れるまで「歌ってこんなに色々やっていいんだと知れた」
声優として『アイドルマスター シンデレラガールズ』などでも活躍する立花理香が、2月28日にデビューアルバム『Flora』をリリースした。同作は“6つの花”をテーマに多彩なジャンル・テイストの楽曲を収録しつつ、全曲を中土智博がアレンジすることで、一本芯の通った作品に仕上がっている。リアルサウンドでは立花にインタビューを行い、「自分の色がわからなかった」という制作前から、6つの強い表現を手に入れた現在まで、じっくりと話を聞いた。(編集部)【※インタビュー最後にプレゼント情報あり】
「就職活動の自己PRを作る」ように悩んだ制作当初
ーー今回の作品でソロデビューとなるわけですが、立花さんにとって、声優として演じることや歌うことと、一人の歌手として歌うことの違いはありますか?
立花:これまでは声優としてキャラクターソングを歌うことはやってきたんですけど、それはあくまで演じることの延長線上という感覚でした。「ここをもっとこうしたほうがこのキャラクターの良さが出るな、この子が魅力的になるな」という、あくまで“キャラクターのための歌”であったので。
ーーなるほど。となると今回のソロデビューは、立花さん自身のキャラクターを見つめ直す機会になったのでは?
立花:そうなんですよ! 就職活動の自己PRを作るような感じというか。「自分って何だ?」というのを探したんですけど、なかなか出てこなくて。
ーーでも、最終的にはジャンルもテイストもバラバラな6つの楽曲が揃ったわけですよね。アウトプットに至るまで、何を見つけていったのでしょうか。
立花:今までわりと、やりたいことをたくさんやらせてもらってきたんですけど、声優という仕事って幅広いじゃないですか。お芝居はもちろん、ダンスや歌もできないといけないですし。イベントやラジオで話すのも、いろんなキャラクターを演じれることも楽しい。でも、それって自分に強烈なキャラクターが無いからなのかもと思ったんです。声優さんって、興味深い経歴をお持ちの方が多かったりするんですけど(笑)、私は一般家庭で育って、特に面白い人生を歩んできたわけではないので、「立花理香として何を歌いたい?」と言われても、「何なんでしょうね……?」という感じだったんですよ。でもそれって、逆に考えれば「普通の人でもやりたいことに向かって頑張ればできる」というところを見せられるんじゃないかと考えたんです。そこから、良い意味での普通さというか、うっすら泥臭さを感じてもらえるような作品にしたいと思うようになりました。
ーーミニアルバムを聴いた印象としては、楽曲全体の雰囲気に立花さんの「強さ」のようなものが現れているように感じたんです。
立花:本当ですか? 嬉しい! 確かに、私は我が強いところがあって、「こうしたい!」とか「これは違うんじゃないですか?」と意見をはっきり言うタイプなんです。普通の人間が何かを成し遂げるには、意志の強さが必要になってくるじゃないですか。ミニアルバムでは色んな一面を知ってもらうとともに、そんな芯の強さを表現しようと思っていたので、そう感じてもらえて良かったです(拍手)。
ーー声優さんの歌手デビューは珍しくなくなってきていて、音楽的にも凝った挑戦をする方が多いフィールドでもあります。そのなかで立花さんはどんなジャンルを選び取ったと思いますか。
立花:私自身、もともとアイドルや80年代の歌謡曲が好きなんですけど、だから自分がやりたいかと言われるとそれはまた違って。私はその逆というか、人間の陰の部分を表現しようと思いました。
ーーそう言いますが、「Say Goodbye」は80年代歌謡曲の要素を感じましたよ。松田聖子的な爽やかで切ない美メロとか。
立花:ありがとうございます。キャラソンのお仕事を通じて、歌詞をちゃんと読み込むことを学んだんですけど、「Say Goodbye」を含む『Flora』の楽曲では、それがかなり役に立ったと思います。80年代歌謡曲って、歌や歌詞の意味、曲の持つものの伝わりやすさがダイレクトなところが好きなんですよ。私は何かが伝わる曲のほうが好きなので、それはスタッフさんにも話して、作品にも大きく反映してもらいました。
ーー歌詞を汲み取るという話は興味深いですね。歌詞の主人公になりきって歌うのか、歌詞の中で自分に当てはまる部分を探し出して歌うのか、どちらのタイプなんでしょうか。
立花:それを何も考えずにレコーディングしたのが、リード曲の「REALISTIC」でした。何も考えていないからこそできるリアルな感じというか。「こうしてやろう、ああしてやろう」と変な色気も出さずに、全力で必死に歌えたので、すごく楽しかったです。『Flora』の楽曲は、結果的に1曲目から6曲目までレコーディングした順番に並んでいるのですが、「REALISTIC」を通じて「こうやって歌うと自分が出せるんだ」というのが理解できたのは大きいです。他の曲では自分から出せないなと思う歌もあったので、「こういう女性がいるから、こうやってキャラクターを作って歌えばいいんだ」と色んなアプローチをしてみたり。
ーーたしかに、「REALISTIC」のようにストレートなものから、一風変わったものまで様々です。ご自身の歌の原点はどこにあると思いますか。
立花:音楽の原点と歌の原点は別のところにあるんですけど、私、昔はずっとクラシックピアノを習っていて。譜面通りに弾くいわゆる「正しい演奏」しかやってこなかったんですが、高校生の時に友だちからピアノの鍵盤を足で弾き鳴らしているBen Folds Fiveの動画を見せられて、「ピアノを足で弾くなんてなんてことだ!」と思ったんです。同じ時期、GOING STARDYやGO! GO! 7188のように叫ぶような歌い方をするバンドにも惹かれていて。ピアノも歌も「決まりの中でやる」と思っていた音楽の概念がどんどん「こんなに叫んでいいんだ、自由でいいんだ」というのに変わってきたんです。