『第6回アイドル楽曲大賞2017』アフタートーク(前編)
欅坂46、BiSH、エビ中……『アイドル楽曲大賞』はメジャーアイドルシーンの何を写したか?
BiSHの「プロミスザスター」がメジャーアイドル楽曲部門の1位に、インディーズ/地方アイドル楽曲部門の1位にはTask Have Fun「3WD」が1位に輝いた『第6回アイドル楽曲大賞2017』。リアルサウンドでは4年連続となる『アイドル楽曲大賞アフタートーク』と題した座談会を開催し、ライターとして企画・編集・選盤した書籍『アイドル楽曲ディスクガイド』を著書に持つイベント主宰のピロスエ氏(写真中央右)、コメンテーター登壇者からはアイドル専門ライターであり、『IDOL NEWSING』制作・運営に携わる岡島紳士氏(写真左)、著書に『MOBSPROOF EX CREATOR LIFE is HARD「渡辺淳之介 アイドルをクリエイトする」』を持つ音楽評論家の宗像明将氏(写真右)、日本各地を飛び回るDD(誰でも大好き)ヲタの中でも突出した活動が目立つガリバー氏(写真中央左)が参加。前編では、メジャーアイドルシーンを中心に、楽曲の傾向や活動論、2018年の展望について語り合ってもらった。(編集部)
「欅坂46の2年目は苦戦した年」(ガリバー)
ーーまず、ランキング上位の楽曲について、発表された時の会場のリアクションを含めて伺わせてください。
ピロスエ:メジャーアイドル楽曲部門では、3位がエビ中(私立恵比寿中学)「なないろ」、2位が同じくエビ中「感情電車」で、1位がBiSH「プロミスザスター」でした。前評判的にも、今回は「プロミスザスター」が1位なんじゃないかと言われていたから、そんなに驚きはなかったですね。BiSHは、5位の「My landscape」のほうもいい曲だという声をいくつか聞きました。
宗像:「My landscape」は、ストリングスの録り方が凝ってますね。
ガリバー:「プロミスザスター」はキャッチーだし、振り付けもみんなで踊りやすいし、プロモーション的にも面白かったですね。
宗像:まず「プロミスザスター」は、『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で歌った曲というのも理由のひとつでしょうね。avexというメジャーレーベルではあるものの、事務所的にはWACKというインディペンデントな会社のアーティストが『Mステ』に出演したのは、非常にインパクトが大きかったです。
ーー4位の「不協和音」、6位の「エキセントリック」と、欅坂46のランクインも目立ちます。上位3組であるBiSH、エビ中、欅坂46の特徴についてはどう考えていますか。
宗像:BiSHと欅坂46の関係だと、昨年のアイドル楽曲大賞の順位が、欅坂46の「サイレントマジョリティー」が1位で、2位がBiSH「オーケストラ」で、その立場が逆転したんですよね。
ガリバー:欅坂46は100点満点といえる1年目に対して、2年目は苦戦した年だったなという印象があります。夏頃からずっと話題になっていたメンバーの体調についての問題が、大晦日の『NHK紅白歌合戦』(NHK総合)で、最悪の形として表れてしまいましたし。「エキセントリック」も「不協和音」も2017年の欅坂を代表する2曲なのは間違いないんですけど、ある種伸び悩んだ印象があります。11位には欅坂46の表現の幅を広げる「風に吹かれても」が入っているんですが、結果的に「不協和音」が一番上位にランクインしているというのは、前年のモードを更新できていないようにも見えてしまいますね。現場に通っていた印象としては、勢いはけやき坂46の方にあると感じています。
岡島:世間的には「不協和音」の方が、エビ中の曲よりも当然反響は大きかったということも含めて、楽曲大賞の順位って、そこまで世間の反応が大きく反映されるものではないと考えています。エビ中は以前から『アイドル楽曲大賞』に関心のある層の中で評価が高いんですよね。
ーーエビ中は2位が「感情電車」で、3位が「なないろ」という結果になりました。
ガリバー:もちろん、松野(莉奈)さんが昨年亡くなったことを抜きには語れません。「感情電車」は松野さんにとって最後にレコーディングした楽曲で、「なないろ」は7人として新体制でリリースした作品のリード曲。グループにもアイドルファンにも悲しいニュースでしたが、ポジティブに乗り越えたことを踏まえての順位だったと思います。
ーー他にも、Maison book girl、NGT48、=LOVEなど、デビューから1年前後のグループも多く上位にランクインしました。
宗像:Maison book girl「rooms」はサビの途中に無音の箇所がある楽曲で、これをメジャーでリリースすることに驚きつつ、上位に来るだろうという予感はしていました。これまでも実験的な構成や変拍子などに注目はされていましたが、実はしっかりとしたキャッチーなメロディーがあって、そこにポップスとして一定の強度があるというのも、この1年間で改めて提示できたのではないかと思います。
ガリバー:音楽的に尖っているグループがメジャーに行くと、大衆向けにアップデートされてしまって評価がブレてしまうことがあるんですけど、ブクガに関しては良い意味で何も変わってないんですよね。サクライケンタの作家性が、最初から何もぶれてないというか。
岡島:むしろ、メジャーに行ってマスタリングがすごく良くなりましたよ。
宗像:矢川葵ちゃんの肌の露出も増えました。
ガリバー:対バン企画のチョイスも絶妙ですよね。あと、NGT48に関しては、好調なスタートを切ったし、選抜総選挙でもあれだけの存在感を示せた。楽曲でもtofubeatsにRemixを依頼したり、個人PVを採用したりと、クリエイティブの売り出し方が上手いという印象です。SHOWROOMを見ていても面白いですし。
ーー同じ48グループでは、AKB48の「11月のアンクレット」が23位です。そう考えるとNGT48の勢いはすごいですね。
ガリバー:僕の周りの話ですけど、乃木坂から欅坂に流れて、欅坂から乃木坂3期生に戻って、その人たちがけやき坂に行って、そこからNGTあたりを行ったり来たりしているという人が少なくありません。明るい楽曲が多くてライブも楽しいし、メジャーグループに抵抗の無い新しいもの好きのアイドルファンはこぞって飛びついていたような気がします。
ーー9位の東京女子流「predawn」も印象的ですね。『TIF』(『TOKYO IDOL FESTIVAL』)で観て、改めてグループの魅力に気づいた人も多かったのではないでしょうか。
ガリバー:今のアイドルシーンを追いかけている人で、東京女子流を通っていない人はほとんどいないと言っていいと思います。だから、アーティスト宣言撤回もアイドルイベントへのカムバックも、基本的にみんな大歓迎だったように見えました。『TIF』をきっかけに久しぶりに聴いた、ライブに行ってみたという人も、実際に多く見ていて、定期公演が完売したのも久しぶりに見ましたから。
宗像:欧米のダンスミュージックの潮流に乗ったサウンドである東京女子流が、再評価されたのはよかったですよね。