ChouCho×yuxuki waga(fhána)対談 自作曲多数のアルバムで見せた音楽表現の“核”

ChouCho×yuxuki(fhána)対談

 アニソンシーンで輝きを放ちながら、自作曲では洋楽をルーツにした芳醇なサウンドを生み出すシンガー・ChouChoが1月17日、アルバム『color of time』をリリースした。同作は半分以上の楽曲を彼女自身が手掛け、これまでのなかで最もChouCho自身の音楽性が凝縮されたアルバムに仕上がっている。

 リアルサウンドでは、ChouChoと同作の収録曲「明日の君さえいればいい。」で作編曲を担当するyuxuki waga(fhána)との対談を行ない、2人の関係性や楽曲制作の裏側、互いの新作や音楽家としての特徴などについて、じっくりと語り合ってもらった。(編集部)

「本人のバックグラウンドがこれまで以上に曲へ出てきている」(yuxuki) 

ーーまずはChouChoさんとfhánaの関係性について掘り下げていきたいと思います。表に見える形としては、ChouChoさんが2012年にリリースした1stアルバム『flyleaf』の「looping star」(作曲はfhánaの佐藤純一・編曲をfhánaが担当)からの縁ですよね。

ChouCho:この曲を頂く前にはお会いしていなくて、まさに曲だけで印象を持っていたんですけど、fhánaの楽曲ってすごく印象的で輝いていたんです。そのときには2曲を提供していただいてたんですけど、どっちもよくて選べなかったので、1曲はアルバムに「looping star」として、もう1曲はシングル『DreamRiser』のカップリング曲「life is blue back」として歌わせていただきました。このときのレコーディングで、初めてfhánaに会ったんですけど、確か佐藤さんだけだった気がします。

ーーじゃあ、実際に4人揃って対面したのはもう少し先だったんですね。

ChouCho:そうなんです。fhánaとしてデビューした2013年にメンバー全員と会ったんですが、最初はお互い人見知りだったこともあって、深く話すことはなかったんです(笑)。でも、イベントで会う機会もすごく多くて、少しずつ歩み寄ったところ、4人ともめちゃくちゃ面白いしツッコミどころ満載で。

yuxuki:うちのバンド、ボケ担当ばかりですからね(笑)。

ChouCho:私のツッコミが間に合わないくらい(笑)。

ChouCho

ーーそれは忙しいですね(笑)。ChouChoさんから見てfhánaの楽曲は「印象的で輝いていた」ということですが、具体的にどの部分に魅力を感じましたか?

ChouCho:世界観がしっかりしていて、そのうえ掴みが強いんです。曲が始まった瞬間に刺さる楽曲がほとんどですし、イントロからすごく引き込まれることが多いな、とよく思います。サビも刺さるんですけど、それ以上に楽曲全体のサウンド感が考えこまれている音楽というか。

ーー確かに、細やかな工夫を感じるサウンド作りですよね。ちなみに「looping star」と「life is blue back」は、作曲を佐藤さん、編曲をfhánaが担当というクレジットですが、yuxukiさんが担当した部分は?

yuxuki:佐藤さんをメインに進行しつつ、「こうしたい」というリクエストを元に俺もkevinもアレンジをして作り上げていきました。佐藤さんからのお題をクリアしつつ、可能な限り自分の好きなことをやるという手法だったんですが、初期はお題をクリアするので精一杯でした。

yuxuki waga

ーーちなみに、yuxukiさんは最初、ChouChoさんにどんな印象を抱いていましたか。

yuxuki:お会いする前から、お名前も歌も声の良さも知っていましたし、話してみたらこうして人柄も面白くて。あと、曲も出すたびにどんどんカッコよくなってるんですよ。今回のアルバム『color of time』もまさにそうで、いわゆるアニソン的なフォーマットの曲だけではなく、本人のバックグラウンドがこれまで以上に曲へ出てきている感じがしていて、聴いていて気持ちがいいんです。

ーーyuxukiさんが、ChouChoさんのボーカリストとしての特徴や魅力をどう見ているのかも気になります。

yuxuki:柔らかくて伸びやかなんですけど細くないというか、ちゃんと澄んでて抜けてくる声だなという印象です。力いっぱい声を張り上げて歌う人とはまったく違う綺麗さと芯の強さがあるなと思っていますし、聴いていてあまり無理してない感じなのに刺さってくる、というのはすごい魅力ですよ。僕が今回書かせてもらった「明日の君さえいればいい。」も、ChouChoさんに歌ってもらえたことで曲の魅力が出たなと感じます。

ーー「明日の君さえいればいい。」は、アルバムの中でも異色の楽曲だと思います。アニメ『妹さえいればいい。』のオープニング主題歌としても愛されている楽曲ですが、どのように作り上げていったのでしょうか。

yuxuki:アニメの制作サイドからは結構リクエストをいただきました。曲がかかる場面も実際に「ここで!?」みたいなタイミングが多かったんですけど、「すごい大事なシーンで使うから、イントロのコーラスパートを20秒前後入れてほしい」と言われて最初の部分が出来上がったんです。構成に関しても「サビから始まって、AメロあってBメロあってサビがあってさらにもう1個サビがある曲にしてほしい」と。スタッフさんの思い入れが強かったこともあって、結構作り直したんですよ。

ChouChou:そういう噂は耳にしました(笑)。

yuxuki:サビの後にもう1段階サビが来る、<君が望んでいる〜>の部分も結構苦労しましたね。「これだと前のサビが物足りなく聴こえて勿体無い」、「これだとサビが長い」とか……。多分3、4回書いた気がします。全体で言うと、『妹さえいればいい。』は、わちゃわちゃした雰囲気のなかにふと良い話が入ってくるという印象だったので、明るい中にエモーショナルさを秘めた曲にしようと思いました。明るさはアレンジで補強している部分もあるので、アコースティックでバラード風にしても良い感じになる気がします。

ChouCho:なるほど、それは面白そう!

ーーChouChoさんは実際に楽曲を受け取ったとき、どういう印象を抱きましたか。

ChouCho:イントロのコーラス部分がすごく印象的で、最初はしっとりした曲なのかなと思わせられるし、その世界に包まれるんです。でも、いきなりテンションが上がって、どんどん音数も増えていって。歌っていても聴いていても元気がもらえる曲だなと思いました。

ーーアニメを見ているときはそこまで違和感を抱かなかったんですが、この曲はドラムの暴れ方が面白いですよね。

ChouCho:私もレコーディング現場行ったんですけど。バンド感がすごい。ライブを見ているような感じでした。

yuxuki:バンドでドーンと一発録りでレコーディングをしたんですよ。個別で録音したら、あんなにグイグイ来る感じにはなっていなかったと思います。特にドラムのよっち(河村吉宏)さんの暴れっぷりがヤバかったですね。

ChouCho:ドラムもなんですけど、ベースの暴れっぷりもすごくいいですよね。

yuxuki:ノリ的には、いわゆる3ピースバンド的な曲の作り方をしていて。ギターをコードで弾いて、リズム隊で曲のポイントになるようなフレーズを作っていって、そこへ最終的に綺麗なピアノを乗せて、ピアノエモっぽくするというイメージでした。ギターはメロコアな雰囲気で弾きました。

ChouCho:バンドのレコーディングをした後に厚みのある華やかなストリングスが入ってきたので、ガラッと印象が変わったんですよ。

yuxuki:そうなんですよ。ストリングスが入っているのといないので、全然違う曲に聴こえるんです。

ーーChouChoさんの楽曲にしては言葉数が多いというのも印象的でした。アルバムのなかでもダントツに言葉が詰まっている曲で。

ChouCho:私が書く歌詞は、結構言葉数が少ないんですよ。ただ、この曲は松井洋平さんにお願いしたぶん、松井さん節が全開になっていて。歌うたびに好きになるし、アニメが進むにつれてどんどん気に入ってもらえる歌詞になりました。個人的には落ちサビの部分が、自分の歌声なのに聴いていて泣きそうになるんですよ。

ーーChouChoさんの楽曲は、言葉が少なくて伸びやかなイメージが強いんですが、ここまで言葉が詰まった曲だと、歌い方の面でもかなり工夫をしているようにも聴こえます。

ChouCho:そうですね。とはいえ、デビュー前にニコニコ動画で活動していて、言葉数の多いボーカロイド楽曲を歌っていたので、そのときに鍛えられたところもあります。でも、1曲を通してこのテンションを保ち続けるのは難しいですし、滑舌も気にしなきゃいけなくて。そのぶん「難しい曲だからこそ歌いこなしたい。この楽曲に勝ちたい」という気持ちが強かったです。

ーー楽曲制作において、お二人がお会いしたのはどのタイミングだったんですか?

yuxuki:レコーディングかプリプロ、もしくはキーチェックのときだったと思うんですが、スタジオで会ったのは覚えています。ただ、fhánaで海外に行く予定があって、歌録りは行けなかったんですよ。

ーーでは、実際に歌入りの楽曲を聴いたときの印象は?

yuxuki:当たり前ですけど、普段自分のバンドで聞いている声と違いましたね(笑)。あと、いつも作っている曲よりだいぶキーが低いんですよ。しかも、プリプロでさらに2つくらい下げてます。ChouChoさんの曲になったなって実感が湧きましたね。

ChouCho:プロデューサーさんに「キーを下げた方が声のいい成分が出る」と言われたんです。アニメの主題歌だとサビが高くなりがちなんですけど、低い音域の方がおいしい部分が意外とあったりとかして。

yuxuki:そうなんですよ。だから、聴いていて気持ちいい声の感じが多かったし、イントロとサビの歌い出しの部分を聴いて「勝った!」と思いました。

ーーこのサビの歌い出しの部分が、一番yuxukiさんっぽさを感じるんです。

ChouCho:私もfhánaっぽさを感じますね。そこからたたみかける感じも含めて、今まで歌ってきた楽曲とはまた一歩違う、新しい自分を引き出してもらえたような感覚になりました。

yuxuki:自分だと分からないですけどね。本当に歌うのが難しい曲だと思っていて、多分自分でうまく歌うのは絶対無理ですね(笑)。つまり具合もそうなんですが、歌のリズムが難しいんですよ。キメも多いし。

ChouCho:キメは確かに多いですね。この楽曲をリリースしてから、ある番組で初めてお会いするバンドさんとシークエンスを使わずに演奏して歌う機会があったんですけど。メンバーさんがすごく大変そうでした(笑)。

yuxuki:そう考えると、あのレコーディングを平然とやったChouChoバンドのメンバーが上手すぎるという結論になりますね(笑)。

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