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『BROCKEN SCENE TOUR 2017 AW』

ストレイテナーが実現した“曲の良さを届ける”ライブ 新木場スタジオコーストワンマンを見て

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 ストレイテナーの9年ぶりとなる対バンツアー『BROKEN SCENE TOUR』。今年6月に巡った前半戦にはgo!go!vanillas、きのこ帝国、My Hair is Badを迎え、11月からスタートした後半戦には、ねごと、BIGMAMA、9mm Parabellum Bullet、ASIAN KUNG-FU GENERATION、ACIDMANが参加。このラインナップの中には、10月にリリースした初のトリビュートアルバム『PAUSE~STRAIGHTENER Tribute Album~』に参加しているバンドが5組。さらに、参加したバンドもそうでないバンドも、ライブではストレイテナーのカバーを披露するという、“生トリビュート”がツアーという形で立体化されていた。その流れの中、12月12日に行われた新木場スタジオコースト公演は、今年3本しかないワンマンのうちの1本で、しかも年内最後のワンマンライブだった。

 「ありがとうございます。改めて俺たちストレイテナーって言います。20周年に先駆けて、トリビュートアルバムをリリースしました。仲間と愛情のつまったトリビュートを作れて繋がれて……僕らも参加してるんですけど(笑)。今日はそのトリビュート(の曲)を中心にゆっくりやります」と、序盤にホリエアツシ(Vo/Gt/Pf)が放ったこのMCが、2017年最後のワンマンのテーマを言い表していると感じた。

 というのも、『PAUSE』はほとんどの参加バンドがオリジナルのメロディをそのままに、なんならアレンジも忠実に演奏しながらも、カバーしたバンドのアンサンブルやグルーヴで素直な表現をしていたことに、多くのリスナーが感動したはずだからだ。90年代に登場し、20年近くシーンを走ってきたストレイテナーは、どこまでも音楽そのものが愛され、リスペクトされてきたという証明が、あのトリビュートアルバムだったと思う。自らのトリビュートアルバムがリリースされて、その楽曲(この日のワンマンでは全曲が披露された)を中心にしたライブを行うバンドを私は知らない。ストレイテナー自体がカバーされたバージョンに感銘なり、新たな触発を受けたからこそ、このセットリストは成立しているのだろう。

 さて、前置きが長くなったが、それも踏まえて、冒頭から披露された「ROCKSTEADY」「TRAVELING GARGOYLE」の連投。数年前なら、ライブの幕開けをブチあげる役割を担っていたこれらの曲が、今は穏やかかつ確かな高揚をもたらすことに驚いた。<僕らは進まなくちゃ 先を急がなくちゃ>なんだけれども、ストレイテナーがくれる清潔な勇気はすでにフロアの人々の胸の中にある。そう、この日の対バン、彼らをトリビュートするのはフロアにいるファンだ。

 「SIX DAY WONDER」「シンクロ」「SAD AND BEAUTIFUL WORLD」「冬の太陽」という、珠玉のスローが続いたブロック。リリース当時はチャレンジングだったじっくり聴かせる「シンクロ」は、当初、丁寧に刻まれる日向秀和(Ba)の和音や、叙情的な大山純(Gt)のアルペジオが、ともすると慎重に鳴らされていたのが遠い日のように思える。体のどこにも力を入れずに、バラードをバラードとして聴かせる今のストレイテナーのミュージシャン、そして人としての大きさを実感する。

 トリビュートアルバム所収の曲以外の選曲がまた絶妙なところを突いてきて、発表当時、主にUKのダンスアクト的なニュアンスをギターバンドに置き換えた「DISCOGRAPHY」が、日向のプログレッシブなフレーズや、テナー流のウォール・オブ・サウンドもしくはポストロックのごとくタフに構築されていくダイナミズム。また、目下の最新作で非常に多彩な楽曲を収録した『COLD DISC』から、ストレイテナーがナイル・ロジャース再浮上以降のファンクを解釈したらどうなるのか? といった回答にも思える「Alternative Dancer」の見事な抜き差しと、洗練されたグルーヴについニヤニヤしてしまう。そこにスペーシーなホリエのシンセが加わるのも良い。同作所収でチェンバーポップ的な素朴さがライブでより際立った「Curtain Falls」からは楽曲の構造的な新鮮さが感じられる。「まだやっていないこと」を大上段から挑戦するというより、楽しみながら増やしていくというのは、このバンドならではだ。

 さらに、重く歪むビートとギターのイントロから明るい場所に抜け出すような「DAY TO DAY」の変化の多い展開では、何度も訪れるエモーションの段階をファンも一緒に上がっていくようなカタルシスがあった。さらに、終盤のMCでナカヤマシンペイ(Dr)が「『DAY TO DAY』のリズムどりが難しい。これって三拍子? 叩いてて混乱する」と笑いを誘っている時に、ホリエが手振りでスネアとハイハットを確かめていたのがなんとも微笑ましかった。近年、トークタイムは常にラフな彼ら。先ほども書いたが、変な力が入っていないからこそ、肝心な力が発揮されるという、武道の極意めいた境地すら感じる。

 1曲目でも本編ラストでもない位置にアンセム「Melodic Storm」を配置し、何度も何度でもこのバンドの“メロディの嵐”という本質に歓喜できることをバンドもファンも認識したところで、「灯り」で初めて他アーティストとのコラボを実現した、秦 基博のオリジナル「鱗(うろこ)」のカバーを披露してくれた。あの突き抜ける伸びやかなサビはホリエも負けてはいない。というか、8ビートにリアレンジされ、ストレートなロックとして聴かせたのだが、秦の作るメロディをホリエが歌うことに驚くほど違和感がなかった。だからこそのコラボなのだと改めて思い知る。

 本編ラストは盟友ASIAN KUNG-FU GENERATION、それも後藤正文の「この曲を埋もれさせていいものか」という意思によりカバーされた「SENSELESS STORY TELLER SONY」が、ほぼアジカンによるアレンジでプレイされると、理屈抜きに喉の奥がぎゅっとなる。さらにこちらもこの曲の先祖(?)はもしかしたらthe pillowsの名曲の中にあったのでは? と錯覚するほど、いつも以上に「Farewell Dear Deadman」が、エバーグリーンなモッズソングに聴こえてくるから不思議だ。ライブのキラーチューンというより、ホリエアツシというストーリーテラーとして優れた書き手の側面が浮き彫りになったこの曲を、ある種、先輩への感謝も込めてラストに演奏したのかもしれない。

      

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