チケット高額転売、取り締まり強化へ 弁護士がチケキャン一時停止の背景を解説
チケットを大量に買い占めて高額転売するなど、インターネットにおけるチケット二次流通が一つの社会問題として語られるようになった昨今。ミクシィ傘下のフンザが運営するチケット転売サイト・チケットキャンプ(チケキャン)が、12月7日をもってサービスを一時停止することとなった。公式発表によると、サイト内で行えなくなるのは「新規会員登録、新規出品・リクエスト、新規落札」で、現在出品中のチケットで落札前のものについては事務局側が削除措置を取り、現在出品中のチケットで落札後のものについては通常通り取引を行うことができる。なお、フンザが直接公式チケットを販売している「チケキャンダンクシート」や「XFLAG JAMシート」は一時停止の対象にはならず、サービスの一時停止期間については未定とのこと。
エンターテインメント業界に詳しい弁護士の小杉俊介氏は、チケキャンのサービス一時停止について以下のように語る。
「今回の措置はフンザがジャニーズ事務所の許可なく『ジャニーズ』という名称を用いて、まとめサイト『ジャニーズ通信』の運営やチケット取引手数料が無料になる『ジャニーズ応援キャンペーン』をチケキャンで行ったことによる商標法違反と不正競争防止法違反の疑いによるもの。取り沙汰されていた高額転売が直接的な原因ではないものの、高額転売をどうにか規制したいという当局の強い姿勢を感じます」
昨年8月、一般社団法人日本音楽制作者連盟、一般社団法人日本音楽事業者協会、一般社団法人コンサートプロモーターズ協会、コンピュータ・チケッティング協議会の4団体が、多くのミュージシャン賛同のもと『チケット高額転売取引問題の防止』を求める共同声明を発表して以降、チケット高額転売問題に関する議論は、急速な高まりを見せている。しかし、営利目的の転売とみなす判断基準や、それらを取り締まるための法律がないこと、個人の特定が難しいインターネット上でのやりとりということから、抜本的な解決策が見つからぬまま平行線をたどっていた。小杉氏は転売サイト自体の問題点を指摘しながら、今回の取り締まりについて以下のような見解を述べた。
「転売サイトは必要な人にチケット流通を行うという建前に対し、より高額で転売されればされるほど儲かるという手数料システムを採用している仕組みにも問題がある。今回の業務停止までのプロセスに対しては一種の別件捜査ではないかという多少の疑問はありますが、こういったかたちでなければ本格的な捜査に乗り出せなかったということでしょう」
現時点で行うことができる取り締まりが強化される一方、自民党のライブ・エンタテインメント議員連盟は12月7日、国会内で総会を開き、コンサートチケットなどの高額転売を禁じる新法案の骨子をまとめたという。規制対象は(1)特定の日時や場所、座席の指定(2)主催者らによる転売禁止の記載(3)主催者等が本人確認などの転売防止策を実施、といった3条件を満たしているチケットで、転売目的で入手することや、定価を超える価格で商売として転売することを禁止する。2020年東京五輪・パラリンピックの入場チケットへの適用も見据え、議員立法で来年の通常国会提出を目指すとのこと(参考:毎日新聞)。
今年11月にはオークションサービス・ヤフオク!が、転売目的で入手したチケットを出品禁止物に追加。フリーマーケットアプリのメルカリも、転売目的のチケット販売を禁止している。チケットキャンプもヤフオクやメルカリ同様、高額転売を繰り返す出品者を締め出す対策を来年2018年1月以降実施していく方針を発表した矢先でもあった。すべてを取り締まることは難しいと言われ続けているインターネット上でのチケット高額転売であるが、東京五輪開催まで1000日をきり、現実的解決にむけた国と企業の体制作りが急がれている。
(文=編集部)