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『RED ROSES FOR THE KILLER』リリースインタビュー

大野雄二が明かす、Yuji Ohno & Lupintic Sixの充実とこれから「気分が違えば、音も変わる」

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 ジャズ・ピアニスト/作曲家の大野雄二率いるYuji Ohno & Lupintic Sixが、2ndアルバム『RED ROSES FOR THE KILLER』を6月21日にリリースした。ライブ感をたっぷり含んだセッションアルバムのような本作からは、現在のバンドの充実ぶりが伝わってくる。リアルサウンドでは今回、大野雄二へインタビューを行い、同アルバムの制作プロセスや5月に開催した『ルパン三世コンサート〜LUPIN! LUPIN!! LUPIN!!! 2017~』を終えての感想、そしてバンドと自身の創作作法について語ってもらった。(編集部)

「漫才と一緒で一瞬でつかまなきゃダメ」

――コーラスグループ「Fujikochans」のデビュー盤『introducing Fujikochans with Yuji Ohno & Friends』のリリースから、約三ヶ月という早いペースで新作が届きました。「Yuji Ohono & Lupintic Six」の2ndアルバム、最近のライブでの盛り上がりやグルーヴ感が詰まった作品と感じます。

大野雄二(以下、大野):そうですね。今回は本当にあっという間だったね。Fujikochansのアルバムが2月2日に完成してから、3日、4日とそのまま名古屋でライブがあって、実質の準備期間は5日から14日まで。そこからレコーディングなんだけど、一度始まっちゃえばいつも早いから。Lupintic Sixとパーカッションで2日。ブラスセクションとストリングスで1日、コーラスと歌で2日。あとはちょっとソロを直してシンセ入れて約1週間。そのあとミックスして延べ10日ぐらいで作っちゃった。

――すごいスピード感ですね。そのスタイルは、ずっと変わらないのでしょうか。

大野:そう、ただ時間をかけてもしょうがないから。例えばライブだったら、間違えるのはしょうがないんですよ。「ごめん!」っていちいちやり直せないし、お客さんもそれを分かって見に来てるしね。レコーディングは間違えたところを直せるけれど、それを繰り返していたらスリルがなくなってつまらなくなる。だから、まず1回練習で録って、2回目を聴いて話し合ったら、3回目で本番。よかったらそれで終わっちゃう。今回のレコーディングもだいたい3テイクで終わってますね。

――多作だったYou & Explosion Bandの頃も、そんな感じで?

大野:いや、もっと早かったよ。僕もやたら忙しかったし、みんなもすぐに次の仕事があるから、録り直しなんてやってられないから(笑)。

――(笑)。メンバーやゲストミュージシャンの方には、早めに譜面を渡しているのでしょうか。

大野:いえいえ、全然。早めに渡すのは歌だけで、基本的に演奏はその場で。「BLUES FOR RED」みたいな比較的長い曲もそうで、ホントは録りも1回で終わりたいくらい。

――なるほど。例えば、今作で最もジャズ的で、ファンキーな「MIDNIGHT WHOOPIE」はどうでしょう?

大野:これもそう時間はかからなかったかな。16ビート系の曲で、言い換えればスタジオ系の音楽なので。それにみんな巧いし、気心も知れてるから。

――あらためてメンバーについてなのですが、初代You & Explosion Bandのメンバーでもある市原康さん(Dr)とミッチー長岡さん(Eb)というふたりのリズムセクションは素晴らしいですね。正確でありつつ躍動感があって。

大野:やっぱり安定感があるね。ふたりとも、もともと仕事がたくさんあった一番いい時期のスタジオミュージシャンですから。それこそ、毎朝10時から、夜中の1時くらいまで一緒に仕事してたよ。例えばベースだったら、ファーストコールが岡沢章だとして、次はミッチーとか、本当に数人しか使われない時代だった。僕なんかの場合、ドラムはほぼ市原くんだしね。本当にタフだし、譜面の理解力がすごい。特に市原くんとミッチーはコンビが長いし、テイク1を録ってそれを聴いたら、「バスドラはこうかな」「だったらベースはこうする」なんてすぐに意見を交換して、もう形ができる。

――なるほど。おふたりを筆頭に、ジャズの素養を持っていながら、ポップスの大好きなメンバーだということが、Lupintic Sixのひとつの特徴でもありますね。

大野:うん、そうだね。Lupinticを始めた頃って、どちらかと言うと、僕がスタジオミュージシャンに飽きてきたところだったんですよ。だからジャズ系で、普段スタジオじゃなくてライブハウスでやっている人と仕事をすることが多くなってたんだけれど、そうこうしているうちに、「やっぱりスタジオでやっているやつも巧いな」「仕事が楽だな」と思うようになって(笑)。ジャズの人はどうしてもアドリブを長く取りがちで短くシンプルにまとめるのが苦手な人が多いので、ジャズとはいえポップに作っていこうとするとレコーディングが大変なんだ。だから、松ちゃん(松島啓之/Tp)とか(鈴木)央紹(Sax)も、最初はけっこう時間がかかった。

――いまは大野さんのやり方に馴染んで?

大野:うん。僕がいつも言っているのは、「つかみはOKか?」「(ソロは)お客さんに惜しまれつつ終われよ」ということで。漫才と一緒で一瞬でつかまなきゃダメだし、“抜け方”も大事なんだ。思い切りを持たなきゃいけないし、短い時間でそれを出せ、というのは難しいんだけれどね。今は良くなっているよ。

――いまの松島さんと鈴木さんの演奏は“つかみ”があるということですね。バンドにとっては2枚目ということもあると思うのですが、演奏の厚み、グルーヴがスゴいですね。

大野:そうだね。より、まとまりが出てきて。和泉(聡志/Gt)くんなんて本当に大人になっているし、宮川純(H.Org)も抜群にいい。彼の音が入って、よりファンキーになった。

――ファンキーさというのも時代によって変わりますが、大野さんにとってLupintic Sixの音はどの時代に近いですか。

大野:うーん、かなり昔の感じ(70年代後半)だと思うよ。ファンキーさでいうと、僕は60年代後半から70年いっぱいくらいまでしか認めていないから。ディスコの時代に入っていくと、ストリングスがメインになって、それこそハモンドなんて入る余地がない。本当に6~7人くらいのバンドで、ハモンドが親方、みたいな構成が僕は一番好きなんだ。個人的にはジミー・スミスとか、そういう真っ黒なファンキーさが大好きで。ただ、プロデューサー的な目線でいうと行き過ぎにならないように、ちょっと抑えているけれど。ある程度は洗練させないとね。

――そんななかで、特に市原さんのドラム演奏には魅了されます。とてもセクシーで。

大野:ただものじゃないよね、彼は。けだものです(笑)。今はああいうミュージシャンが少ない。本当に“(愛すべき)バカヤロー”で(笑)。スタジオミュージシャンだし抜かりがないと思いきや、ツアーをやっていて譜面をすべて忘れてきたりするから。でも、「あ、こういうところがあるから、あんなプレイができるんだな」と思うんだ。思いのほか大胆でね。一方で、ドラマーってどちらかと言うと、みんなで音楽を作っていく、というなかに入ってこないタイプが多いんだけれど、彼は一緒に作っていく感覚が強くて。そういうところでは、ものすごいデリケートですよ。ライブだけやっている人とは、ぜんぜん違う。プレイバックをものすごく真剣に分析して聴くしね。ライブしかやっていない人は、わりと他人事で聴くから。「すいません! ここだけやり直したいんですけど……」なんてことがあって、僕は「別にいいじゃん」って言うんだけど、「いや、リハの時と和泉くんのバッキングがちょっと違ったから」と。するとミッチーは「だったら自分もやり直す」なんて、話が通じちゃう。本当に細かいところで。

――大胆な面がある一方で、スタジオミュージシャンらしい細やかさも持っていると。

大野:そうですね。それと、スタジオミュージシャンでスゴいのは、やっぱりセクションの人。今回も参加してくれているけど、エリック(・ミヤシロ)には誰も敵わないから。うちの松ちゃんもアドリブは巧いけれど、セクションでやるとなると、やっぱり彼には敵わない。あんなに高い音を出しても、ひとつの節の区切り方とか、スピード感の調整が、ものすごくデリケートなんだ。さすがだね。

      

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