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リアム・ギャラガー、メインストリームで勝負するための“英断” モダンな意匠施した新曲を解説

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 この曲でプロデュースを担当し、ギターにベース、ドラムにパーカッションと全楽器を演奏しているのは、今をときめくグレッグ・カースティン。アデルやシーア、テイラー・スウィフトといった大物たちに携わり、ケンドリック・ラマーの新作『DAMN.』でも1曲プロデュースしているほか、ポール・マッカートニーの来る新作にも起用されるという、現行のシーンで五指に入るべき名匠だ。

 彼の特徴は大きく2つ。ひとつは、主役のキャラクターを尊重し、ストロング・ポイントを伸ばすアプローチ。もうひとつは、今日のニーズを踏まえたモダンな音処理。エレクトロ・ポップやカラフルな曲調を得意としているが(Tegan and Saraの近作、ベック「Dreams」など)、シーアの出世作「Chandelier」のようにシリアスな楽曲を、ビッグだけど胃もたれしないメインストリーム仕様に組み立てるのも抜群に上手い。

 そんなグレッグのプロデュース遍歴から、「Wall of Glass」の参照点として、アデルの「Hello」を挙げておこう。レトロでヴィンテージな印象の強いアデルを、ここでエスコートするのは、エレクトロニックな質感を纏ったバンドサウンド。楽曲自体はアデル印のピアノ・バラードだが、この絶妙にクールなトラックに支えられることで、彼女の声はさらに力強く響き、楽曲も厳かなオーラを帯びていく。ここでのグレッグの貢献ぶりは、2010年の「Rolling in the Deep」(ポール・エドワースがプロデュース)と比べたら一目瞭然だ。

アデル「Hello」

 そんな「Hello」と同様に、「Wall of Glass」でもアナログな楽器を駆使しながら、エレクトロニックな音処理が施されている。それに、この曲で心憎いのが、リアムがサビを歌い上げたあとに入る女声コーラス。ここに長尺のギターソロではなく、ゴスペル風のコーラスをさりげなく配置しているのが今っぽいし、アーシーな色付けを耳にして「Oasisの曲より、アメリカのラジオで好まれそう」とすら思ったりもした。

 今っぽい音作りといえば、メロディラインや曲展開そのものはシンプルで、パワーコードで押しまくっているのに、3分44秒の収録時間を平坦に感じさせないのもポイントだ。そのあたり、サビの部分でベースの音を抜いたあと、上述したコーラスの入るインストパートで、サビ以上のカタルシスを用意していたりと、EDMを通過した近年のメインストリームに通じる作曲術も取り入れられていそうだ。

 実際、「Wall of Glass」には作曲者として、リアムとグレッグのほか、ブルーノ・マーズやマーク・ロンソンにも携わったアンドリュー・ワイアットなど、3人のソングライターが別途クレジットされている。今ではさほど珍しいケースでもないが、リアムがそうきたか!というインパクトは結構強い。これについて、本人の発言を引用しよう。

「俺は(自分で)“Live Forever”を書いたわけじゃない。だが、歌った途端、それを自分のものにした」(『ES Magazine』)

「(曲作りを)自分でやりたいっていうのは理想だ。でも、俺にはビッグ・ソングは書けない。限られている。数節の歌詞はある。でも、その次ができない」(同上)

 Oasis解散後も“バンド”にこだわったリアムは、Beady Eyeのときも、アンディ・ベルやゲム・アーチャーの力を借りてビッグ・ソングを書こうとしていた。しかし、当時のシングルを改めて振り返ると、メロディアスではあるのだが、全体的にのっぺりしている印象も否めない。『Be』に収録された「Flick of the Finger」もそう。ブラスも加えた華やかなアレンジなのに、どうにも起伏に乏しく、この曲でシンガロングさせるのは無茶がある。90年代に『Be Here Now』も証明しているように、大きな曲を書くのは簡単なようでいて非常に難しい。

 それに、今になって思えば、リアムに必要だったのは、彼が固執していたバンド・フォーマットではなく、自分を深く理解し、ときに客観的な立場から意見するパートナーだったのだろう。もちろん、彼にとって最大の理解者はノエルだが、簡単に仲直りできれば苦労しない。バンド・リーダーはBeady Eyeで懲りただろうし、二番手以下に甘んじるのは性格的にも絶対ムリ。そこでリアムは次の一手として、プロフェッショナルな職人チームに活路を見出したのではないか。

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