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DJ和が語る、90年代音楽の面白さとシーンの変化「『Jポップ』という概念を再構築したい」

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「日本でヒットする音楽には、「歌謡」っていう視点がすごく大事」

ーー今作は90年代の楽曲が主体になっていますが、和さんにとって「90年代の音楽」と言われてまずイメージするのはどのようなものですか?

DJ和:自分の中では「ストレートな音楽」というイメージがすごくあります。深く考えなくても好きになれる、直感的なものが多いというか……売れる音楽って、歌詞も大事だと思うんですけど、やっぱりメロディなのかなと思っていて。そう考えたときに、あの時代の音楽はメロディがキャッチーすぎますよね。「歌詞は覚えてなくても鼻歌で歌える」みたいな感じって音楽がエンターテインメントになる時にすごく重要だと思うんですけど、そういう要件を兼ね備えていたのが90年代の音楽なんじゃないかなと。あとは、海の真ん中で風がバーンみたいなMVとか。

ーーT.M.Revolutionですね。

DJ和:はい。あとは「Winter, again」でGLAYのTERUさんが吹雪の中で歌っていたりとか、視覚的にも直感に訴えかけるものが多かったように思います。

ーー今お話しいただいた「ストレート」という印象はよくわかります。T.M.RevolutionやGLAYの時代に入るとまた少し趣が違いますが、90年代の前半だとまだ「Jポップ」という言葉自体もそこまで広がっていなかったですし、どちらかと言えば演歌や歌謡曲の延長線上にある音楽だったような気もするんですよね。だからサウンドとしての広がりはそこまでない一方で、すべてをメロディと歌詞で持っていってしまうような迫力があるというか。その辺が今の音楽とは少し違うように思います。

DJ和:今は「ロック」と一口に言っても「どのロック?」ってなるくらい細分化されていますし、全然違いますよね……ただ、サウンドとしていろいろなものが出てきても、やっぱり日本でヒットする音楽には今おっしゃっていた「歌謡」っていう視点がすごく大事だと思うんですよね。星野源さんの歌にもすごく歌謡性があると僕は感じるし、「Jポップ」というもの自体がビートのついた歌謡曲っていう側面もあると思っています。

ーー「ビート」と「歌謡」のバランスの変遷がJポップの歴史ということなのかもしれないですね。今はビートの作り方がどんどん多様になっている。

DJ和:そうですね。でもやっぱり日本の中だけで見ると、売れるものに歌謡性はマストですよね。さっき自分の家がいわゆるJポップが好きな家庭だったという話をしましたけど、「自分の母親に届く音楽ってなんだろう?」っていうことをいつも考えるんです。たとえば去年だと「恋」と「前前前世」はうちの母親でも知っていると思うんですけど、どちらもサウンドがかっこいいだけじゃなくて、ベースには歌謡性、言い換えれば日本人が遺伝子レベルで好きなメロディの良さみたいなものがあるんじゃないのかな。逆にそこを捨てると大ヒットにはならない気がします。

ーー去年は今挙げていただいたようないろいろなタイプのヒット曲が出て、音楽シーン全体が再び元気になっているような雰囲気がありましたよね。その盛り上がりの一つの側面として、「90年代ブーム」とも言うべき動きがあったように思いました。宇多田ヒカルやTHE YELLOW MONKEYが久々の作品を出したり、あとこれは少し前からですがインターネット上では渋谷系に関する議論が盛り上がったり。ただ、自分の観測範囲だと、今回の和さんの作品に登場するような楽曲って、最近の「90年代ブーム」的な話の中にはほぼ出てこないんですよね。

DJ和:ああ、確かに。

ーー渋谷系のあといきなり「98世代」が出てきた、くらいの極端な歴史観で語られる話もあったりして(笑)、結構違和感を覚えることも多いんです。そんな中で和さんのCDを聴かせていただいて、個人的には「正しい90年代がここにある!」と思いました。

DJ和:なるほど(笑)。自分の印象としては、最近よく言われる「90年代の音楽は良かった」というような話の多くはあの時代の一番尖っていた部分を取り上げているものだと感じています。今音楽に関わっている人がそういうものをピックアップしていて、そこに説得力があるからそんな流れになっているのかなと……たとえば渋谷系の音楽はかっこいいし、それが一つの文化だったのは間違いないですけど、時代の真ん中にいたわけではなかったよなとは思います。

ーーそれこそ和さんのお母さんはその時代を生きていたけど、もしかしたらご存じないかもしれない。

DJ和:かろうじて「今夜はブギー・バック」は知ってるかも、くらいの感じでしょうね(笑)。90年代という時代の真ん中には今回選曲したような楽曲があって、それを本当にたくさんの人が聴いていて、そういうものがあったからこそそこから少し外れたところにおしゃれでかっこいい音楽がたくさんあった、ということなんだと思います。だから『俺のラブソング -BE ESQUIRE.– mixed by DJ和』に入っているようなミリオンセラーの曲と渋谷系の音楽、両側があってこその90年代ということなんじゃないでしょうか。

ーーともすれば「尖っている」ものを取り扱う方がかっこいいと思われる風潮もあるように感じますが、それでも今回選曲したような楽曲にこだわる理由があれば教えてください。

DJ和:確かにベタな曲をかけ続けるというのはDJとしては評価されないかもしれないですけど……でも、こっち側の音楽を聴いていた人たちのボリュームはめちゃくちゃ多いぞ! って思うんですよね。その人たちはもしかしたら今はクラブやフェスの会場には行っていないかもしれないんですけど、そういう人たちを巻き込むことができたら音楽を聴く人って一気に増えるじゃないですか。「今音楽が好きな人」だけではなくて、かつてこういう音楽が好きだった層のことも忘れちゃいけない、そこに向けて届けたい、という気持ちでやっています。

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