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lyrical school、現体制ラストライブで見せたグループの歩みと始まりの予感

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 ヒップホップアイドルユニット・lyrical schoolが2月26日、現メンバー5人体制でのラストライブ『lyrical school one man live 2017 “ラストソング”』を新宿BLAZEで開催した。そして、この日をもってオリジナルメンバーのayaka、mei、amiの3人はグループを卒業、lyrical schoolはminan、himeの2人を中心に新たな体制に入ることになる。

 前身のtengal6時代から数えれば6年を超えるlyrical schoolの歩みは、アイドルがヒップホップをいかに採り入れるかの道筋を開拓し、その間口を広めながら舗装してきた歴史である。今回、その6年すべてを駆け抜けてきたオリジナルメンバーが全員グループを去り、lyrical schoolが均してきた土壌はminanとhimeが引き継いでいく。tengal6からlyrical schoolに至る活動の重み、そして彼女たちの卒業がどれほど大きな区切りであるのかということは、このワンマンが単に卒業ライブではなく「現体制ラストライブ」と銘打たれたことにもあらわれている。

 とはいえ、これまでどの場所、どの客層の前に立っても変わらぬテンション、スタンスのままでライブに臨んできた彼女たちは、「現体制ラスト」であってももちろんいつもと変わらないライブのスタートを切る。昨年リリースのアルバム『guidebook』の冒頭を飾る「GOLDEN」「プレイルーム」で幕を開け、続いてオリジナル発表時とは比較にならない力強さを手にした「S.T.A.G.E」で「いつものリリスク」の楽しさを見せつけていく。ここから「brand new day」「ワンダーグラウンド」まで9曲を続けたパートは、あくまで最新型のlyrical schoolとしてフロアに熱を呼び込んだ。

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 けれども、この日のライブはやはり、グループの歩みを大切に振り返るためにある。最初のMCののち、彼女たちがlyrical school名義で初めてリリースしたシングルに収録されていた「おいでよ」をパフォーマンス後、tengal6時代の楽曲をたて続けに披露し、lyrical schoolの名前が定着した現在でも、立ち戻る足場がここにあることを思わせる。

 そして、さらに感慨深かったのはライブ後半、「マジックアワー」から「サマーファンデーション」「RUN and RUN」へとメジャーデビュー以後のシングルを新しい順に披露し、この一年間を巻き戻すような時間を現出したパートだ。「RUN and RUN」MVの大反響や作家陣のバリエーションに富んだアルバム、Zepp Tokyoでの年末ライブなど、ハイスピードで重要な出来事がいくつも起きていったこの一年は、もちろん大きな高揚感に包まれながら、ある種の切なさも常にはらんでいた。メジャーでの1stアルバム終盤に収められた楽曲と同名の「ラストソング」と題されたこのライブは、そんなメジャーデビュー後の足跡を振り返ってひとつの整理をつけるための時間でもあった。

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 lyrical schoolが発表する楽曲のリリックはしばしば、お祭り的な雰囲気の高揚感と、その高揚したひとときが儚く過ぎてしまう予感とが交錯するような瞬間を描いてきた。「マジックアワー」や「サマーファンデーション」もまた、その系譜上にある。儚く過ぎ去ってしまう切なさを伴っているからこそ、短い夏を祝福するような名曲がいくつも生まれ、聴く者それぞれの記憶にマッチする普遍性を持つ。そして、「RUN and RUN」の明るい未来を祝福するリリックは、いくぶんビターな後味を帯びながらも、この日も変わらず祝福の歌としてある。その高揚感と儚さとの混ざり合った楽曲たちは、lyrical schoolの歴史が一区切りを迎えるにあたって、ひときわ切なく輝いた。

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 アイドルというジャンルからいかにフィメールラップにアプローチできるのか。ハードコアに寄るでもなく、ある種の「つたなさ」に頼るのでもなく確実にスキルアップしてきた彼女たちの足跡は、やがて後続のアイドルラップ楽曲にとっての道標になった。彼女たちが探り当てた自然体の表現は、そのパイオニアとしてのプライドを尊大に歌うものではない。どこまでもナチュラルに、陽性の楽しさをフロアと共有することが目指されてきた。けれど、その道程が誇るべきものであること、アイドルラップにとってきわめて重要な歩みであることはライブ最後の曲、彼女たちに古くから寄り添ってきた「tengal6」で存分に示される。かつて在籍したメンバーであるmariko、erika、hina、そしてyumiのパートからワンフレーズずつ引用して歌われたこの日の「tengal6」は、6年前から現在まで彼女たちが繋いできた歴史を、あらためて全員の記憶に刻むものだった。

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 何かの終わりは、すぐさま訪れる新しい何かの始まりの予感とともにある。ライブの最終盤、「photograph」「tengal6」というtengal6時代から歌われてきた2曲に先立って披露されたのは、〈いつかまたこの場所で〉というフレーズが印象的に繰り返される「ラストソング」だった。ALI-KICKによって手がけられた同曲は、終焉の儚さと、その先にいくらでも待っている未来の景色とを同時に描いたマスターピースだ。ほとんど大仰ともいえるほどに、100年単位で未来を見据えたこの曲は、その射程の広さゆえに、まだまだ続いていくこの先の道への希望を照らしてくれる。新体制のlyrical schoolも、ここまでのlyrical schoolを繋いできたすべてのメンバーも、すでに過去ではなく今現在を生きている。やがて訪れる、「いつかまたこの場所で」の瞬間を心待ちにしながら。

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(文=香月孝史/写真=沼田学)

lyrical schoolオフィシャルサイト

      

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