岩里祐穂×高橋久美子、名曲の作詞エピソード語り合う「新しいものは“違和感”から生まれる」

岩里祐穂×高橋久美子、作詞エピソード語る

ももいろクローバーZ 「空のカーテン」(作詞:高橋久美子)

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岩里:この曲はどんな感じで書きました?

高橋:彼女たちのふつうの姿が書きたいなと思ったんです。冬の曲というオーダーだったんですけど、「クリスマス」のワードは入れなくていいということだったので、あえてイベントっぽくしたくないと思って。カップリング曲だったので、高城れにちゃんは卒業してますけど、素の高校生を描きたかった。出だしはれにちゃんがいいというのもさいしょから考えていました。<昨日の失敗は/お茶の中に入れて飲んでしまおう>の「お茶」は、さいしょ「ミルクティー」だったんです。でも「最近の子ミルクティーなんて飲みます?」とディレクターさんから連絡が来て、れにちゃんは朝はきっとお茶が似合うだろうと思いこういうかたちになりました。

岩里:さんざん冬の話を展開しておいて、最後の5文字でまた<冬が来た>とあるのは?

高橋:最初じゃなくて最後に書くことで、冬が来たことを噛み締めようと思いました。

岩里:なるほど。そうやって余韻をつくりだしているんですね。

AKINO「創聖のアクエリオン」(作詞:岩里祐穂)

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高橋:この曲はカラオケ大会の番組を見ていたときに、すごい歌がうまい人がこの曲を歌っていて、サビでいきなり<一万年と二千年前から愛してる>と始まって、「だれの歌詞やー!」と思って調べたら岩里さんだったんですよね! びっくりしました。そこまでのくだりは序章にすぎないというか。一万年もすごいんですけど、そのあとも<八千年過ぎた頃からもっと恋しくなった>、そして、<一億と二千年あとも愛してる>とたたみかける(笑)。

岩里:改めて見ると、笑えるね。

高橋:笑えるけど、切なくなるんです。

岩里:この歌詞はタイトルありきではじまったし、アニメの脚本によせた歌詞で。でも、パチンコのCMで流れたのをきっかけに広まって、そういう意味では曲の力で広まった曲でもあって。難しい言葉が並んでいるし、若い人たちはこの歌詞のどういうところに惹かれているのかな、とずっと気になっていたし疑問だったんですよね。

高橋:文学的で哲学的なところがかっこいいと思います。サビの最後の<君を知ったその日から僕の地獄に音楽は絶えない>、キラーワードですよね。地獄って大声で歌うことってあんまりないなと。

岩里:今から思えば、この曲で言っていることはひとつ、「愛してる」だけしか言ってない。言葉は濃密だけど内容は詰め込み過ぎていない、そのバランスがいいのかな。

高橋:ももクロの「サラバ、愛しき悲しみたちよ」もそうですよね。最初に言葉を詰め込んで、サビの前「行かないで…」のとこはちゃんと隙間があるという。

岩里:それが私の遊びごころなのかしら。

高橋:サビで数字を使えるのもすごいです。私は数字はBメロにしがちなんですけど。大胆というか、岩里さんのお人柄が出てますね。

「私が詞を書く場所」コーナー

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インスピレーションが沸くアートワーク、映画のパンフレットなどで囲まれた岩里祐穂作業スペース。
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岩里は日常生活で気になった言葉をストック。ここから楽曲タイトルが生まれることも。
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詞は家事の合間に浮かぶことが多いと語った岩里。手元には携帯電話とメモ帳をスタンバイ。
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作詞はほとんど手書きで行うという高橋。足元の箱には長年書きためてきた詞がストックされている。
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高橋の作詞ノート。推敲を重ねることが多いため、履歴がわかりやすく残る紙がよいのだという。
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高橋は作業中、深夜の街を散歩してリフレッシュ。チャットモンチー「バースデーケーキの上を歩いて帰った」は深夜の街灯がローソクに見えた瞬間を詞にしたというエピソードも披露。

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