花澤香菜が初のシングル作詞曲で伝えようとしたこと「『変わりたい』という気持ちを肯定しました」

花澤香菜、初のシングル曲作詞で感じた“成長”

 花澤香菜が、6月1日に10thシングル『あたらしいうた』をリリースした。同作では、花澤が初めてシングル曲の作詞に挑戦している。昨年11月から今年2月まで開催した、朗読とアコースティックセットのライヴサーキット『かなめぐり〜歌って、読んで、旅をして〜』で全国各地を巡り感じたことや、前作『透明な女の子』のトータルプロデュースを担当した山崎ゆかり(空気公団)との出会いで得たものを生かし、これまでの経験と花澤の思いを詰め込んだ歌詞に仕上がっている。また、作曲はソロデビュー以来、彼女のサウンドプロデューサーとして音楽活動をサポートしてきた北川勝利(ROUND TABLE)が担当。表題曲はソフトなポップスというパブリックイメージから一転、疾走感のある楽曲に仕上がっているなど、10作目にして詞曲の両面で新たな扉を開くことに成功している。リアルサウンドでは今回、花澤へ単独インタビューを行ない、収録曲の歌詞にまつわるエピソードや作詞の原点、シンガーとして新たに会得したものや影響を受けたインプットなどについて語ってもらった。

「表題曲の裏テーマは『ゼーガペイン』」

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ーーまずは今作の話に繋がる部分として、先日終了したライヴツアー『かなめぐり ~歌って、読んで、旅をして~』について聞きます。同ツアーは朗読も交えたアコースティック編成のライヴで歌を届けるという機会でしたよね。

花澤:振り返ってみると、「本当に集中力のいるものだったな」と思います。来てくださった方々は、3人編成のアコースティックライヴだし、距離感も近くてアットホームで、リラックスして見ていただけたと感じているんですが、こちら側としてはやったことがそのまま伝わる環境だったので、集中力を切らさないよう心がけていました。朗読は普段声優のお仕事でやっている部分をみんなに見て欲しいということから取り入れたのですが、歌との切り替えが難しくて……。でも、すごく楽しかったです。

ーー歌手としての花澤さんと、声優としての花澤さん、両方のパーソナリティを最大限に活かす場だったわけですね。最少人数のアコースティックセットでツアーをしてみて、歌への意識は変わりましたか?

花澤:これは「あたらしいうた」の歌詞にも関わってくるんですが、毎回違う場所、しかも歌ったことのない会場でライヴをすることが多かったんです。だからこれまで東京でのライヴが多かったので、地方のお客さんは初めて私のライヴに来てくれたという方が多いように感じました。そんな人たちの前で、どういう風にパフォーマンスしようかを都度考えて、歌やセットリストを調整するというのは、やはりプレッシャーもありました。

ーーそこをどのように乗り越えたのでしょう。

花澤:以前にRealsoundさんで空気公団の山崎ゆかりさんと対談させていただいた(参考:花澤香菜✕山崎ゆかりが語り合う、“挑戦の季節”の始まり「私を支えてくれるものが増えている」)のですが、そのときに山崎さんが「学生時代に朝の音を録音してた」ことを話してくれて。「この日の朝は1回しかこないから、その時間が貴重だと思って録りためていた」らしく、その話がずっと印象に残っていたんです。だから、開き直って『かなめぐり』のライヴもその瞬間しかないわけだし、「私がその場で歌を歌えば、それはもう“あたらしいうた”になるんじゃないか」という感覚を途中から掴みはじめて。それで次第にツアーが楽しくなっていきました。

ーーでは山崎さんプロデュースの『透明な女の子』も今回に繋がる貴重な経験だったと。

花澤:大きい体験でしたね。表題曲の歌詞も、山崎さんとお話した中から出てきたものですし、あの歌を聴くと励まされるというか、心が整えられるような感覚になるんです。

ーー今回は再び北川勝利さんのプロデュース作となったわけですが、表題曲は個人的にすごく意外なアプローチで。ポップさは残しつつ、これまでよりもロック調な楽曲に、花澤さんの書くストレートな歌詞がしっかりハマっている印象でした。

花澤:最初は「こうきたか!」という驚きがすごく大きかったです。昨年末に北川さんから「今朝のこと」や「Looking for your Smile」のデモが届いていたのですが、「もうちょっとで出来そうないい曲がある」と言われて待っていたらこの曲が届き、スタッフみんなで「おぉー!」と歓喜しました。私自身もお客さんの反応を間近でみたとき「Eeny, meeny, miny, moe」や「マラソン」のようなノリやすい曲をもっと増やしたいなと思っていたので、北川さんとも気持ちがシンクロしていたのかも。

ーーそして何より大きなトピックとして、花澤さんにとっては今回が初のシングル曲作詞となるわけですが、前アルバム『Blue Avenue』で作詞を手掛けた「プール」は詞先で、「タップダンスの音が聴こえてきたら」は曲先でしたよね。今回の3曲はどうですか?

花澤:今回はすべて曲先です。テーマになりそうなものは『かなめぐり』以外もいろんなところから集めてストックしていたので、そこから組み合わせて書いていきました。「あたらしいうた」に関してはもう一つテーマがあって。アニメ『ゼーガペイン』が10周年記念に『ゼーガペインADP』という新しい動きをするのですが、過去の映像を再編集して新解釈を撮り直す、という当時のファンにとっては衝撃の内容になっているわけです。「あたらしいうた」のなかには過去の自分が出てきたりするのですが、これは10年前の『ゼーガペイン』で、私が演じた主人公のカミナギ・リョーコを再度演じるうえでどう向き合うか、という裏テーマも含んでいるんです(笑)。あとは『かなめぐり』でも思っていた「変わりたい」という気持ちを肯定して、今できることを精一杯やろうという決意も込めていますね。

ーー「プール」や「タップダンスの音が聴こえてきたら」の作詞時には、花澤さんの楽曲の作詞を多く手掛けている岩里祐穂さんに相談したそうですが、彼女から作詞家として学んだものも今回は活かされているのでしょうか。

花澤:そりゃもう存分に(笑)! 岩里さんには企業秘密にしたいくらい色んなことを教えてもらいましたから。岩里さん曰く、私は感覚がちょっと変みたいで。「その部分を詞に活かせばいい」と言われたのですが、その“変”が自分ではわからなくて苦労しました。やっているうちにちょっとずつその引き出し方が分かってきたという感じです。

ーーその“変”は、花澤さんが度々発言している「自分で詞を書くと明るいものが書けない」という部分だったり?

花澤:まさにそういうところで、書いているうちにどんどん暗くなっちゃうんです(笑)。でも今回は、『かなめぐり』で素敵なパワーをいただいたので、自分の中では最大限ハッピーな歌詞を書くことができました。

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