Brian the Sunが語る“遅れてきたルーキー”の戦い方「結果的に目的地が一緒、というのが理想形」

Brian the Sun、“遅れてきたルーキーの戦い方”

 大阪発の4人組ロックバンド・Brian the Sunが、9月7日にメジャー2ndシングル『Maybe』をリリースする。彼らは現在メジャーで活躍する関西出身の若手ロックバンドたちとともにキャリアを積み、『閃光ライオット2008』でも準グランプリという輝かしい成績を残しながら、メンバーチェンジなどを重ね、結成9年目の今年メジャーデビューした“遅れてきた大型ルーキー”。今作の表題曲はアニメ『甘々と稲妻』のエンディングテーマに起用中のミドルテンポの温かなポップ・ロックで、Brian the Sunの魅力である幅広い音楽性をさらに拡張させる楽曲に仕上がっている。リアルサウンドでは今回、メンバー4人にインタビューを行ない、メジャーデビュー以降の活動や前作の反響、今年の夏フェスでの戦い方、今後の展望について、じっくりと話を訊いた。(編集部)

「アニメを通じてバンドの名前や存在は認識してもらえた」(白山)

――今回リリースする『Maybe』はメジャー2ndシングルとなるわけですが、6月はメジャーデビューシングル『HEROES』が発売されましたよね。OPに起用されていたアニメ『僕のヒーローアカデミア』自体も人気で、音源のダウンロード売上も好調だったりと、今までBrian the Sunを知らなかった人に広くリーチした印象がありました。改めて作品の反響をどのように受け止めていますか?

森 良太(Vo./Gt.):僕らは一応ロックバンドとして、「邦楽ロック」というカテゴリに分類されると思うんですけど、それって音楽シーン全体の中で見るとニッチな場所で。音楽家としてはより広い人たちに届くことが理想だと考えているので、ラジオのパワープレイで流れているのを客観的に聴いたときや、地方のライブにおける動員が増えたり、アニメを通じて親子連れの方が来てくれたりと、そこに一歩ずつ近づけている感じがしました。

――自分たちの内面もそうですが、動員増加といった目に見える変化もあったんですね。

森:そうですね。アニメを通じてお客さんが来てくれたことに対して「メジャーデビューして、宣伝してもらうことの大事さ」を感じましたし、ラジオで多く流れるにあたって、曲単体で良いと思ってもらえるものを作らなければということにも改めて気づかされました。

白山治輝 (Ba./Cho.):良太の言ってるように、アニメを通じてバンドの名前や存在は認識してもらえたんですけど、僕たちの主戦場であるライブハウスにはまだまだ呼べてないし、コミュニケーションもしっかりできてないんじゃないかという実感があって。まったく見向きもしてくれなかった人たちに名前を知ってもらえるチャンスなんて滅多にないので、この機を逃さないように、反応してくれた人たちをしっかり引き込めるように頑張らなければと思います。

小川真司(Gt./Cho.):そことは違う反応だと、友達や家族のリアクションも大きかったですね。「あ、こんなんやってるんや」と知ってもらえたので、やりやすくなりました。

田中駿汰(Dr./Cho.):僕は遠方に引っ越した中学時代の後輩から手紙が来ましたね。

白山:めちゃくちゃピュアな話やん!(笑)

――音楽的な部分で言うと、これまでのBrian the Sunは、ザ・ストロークスやアークティック・モンキーズといった、ゼロ年代のUKロックバンドをルーツに持つキメの多いバンドサウンドが特徴でしたよね。

白山:良太は斉藤和義さんがルーツで、一人で弾き語りとかもやってましたけどね。

――そのカッティングエッジなサウンドに、白山さんの言ったようなルーツを持つ森さんの歌やグッドメロディが乗って、キャッチーな音楽になる。というのがバンドの強みだったと思います。でも、個人的には『Brian the Sun』(2014年12月リリースのインディーズ2ndフルアルバム)以降、バンドに“落ち着き”のようなものを感じていて。それがメジャー作以降も如実に表れているのでは?

白山:まさにそうで、『Brian the Sun』までは尖った曲が多かったんですけど、そのくらいの時期から、良太が自分の弾き語りで歌っていたような曲を持ってくるようになって。それでもBrian the Sunっぽさは出たので、「この4人で鳴らせばどんな音もBrian the Sunになる」と気付いてから、いろんな楽曲に挑戦できるようになりました。

森:もともとは「ここは誰にも触れられたくない」という自分一人だけでやりたい曲と、バンドに持っていきたい曲を分けてたんですけど、曲が足りなくなって弾き語りのストックを提出したら反応が良くて。次第にこだわりを持って、触れられないように置いておく必要性を感じなくなったし、自分のなかでも4人でやることの楽しさが分かったので、だいぶ楽になりました。

――本来そういう音楽性の幅に関する悩みって、デビューしてしばらく経ったバンドが直面することが多いと思うんです。でも、Brian the Sunは9年かけてじっくりと力を蓄えたからこそ、メジャーデビュー前にその悩みにぶち当たって、それを乗り越えることができたわけですよね。持っている手札の数もルーキーとは思えないほどに多いというか。

森:逆に言うと、それが新しく僕らを知ってくれた方にとっては「何が本質なん?」とわかりにくい部分になるかもしれないですよね。だからこそ、幅広いということは自分たちの長所やし、短所やとも考えています。デビュー作の『HEROES』がアッパーで、2枚目の『Maybe』がミドルテンポで出せたのは、このバンドだからこそできた挑戦でしょうけど。

――だと思います。今回の『Maybe』は、これまでのBrian the Sunにはないような、ミドルテンポのオルタナティブギターロックな表題曲と、ポップで疾走感のある「しゅがーでいず」の2曲が収録されています。表題曲はアニメ『甘々と稲妻』に書き下ろしたそうですが、どちらかというと「しゅがーでぃず」のほうがそれっぽいような……。

森:そうですね。書き下ろしのお話をいただいて、主人公のつむぎちゃんが元気な女の子なので、彼女をイメージして作ったのが「しゅがーでぃず」なんです。ただ、アニメ制作陣の方から「別のパターンも聴いてみたい」ということで、弾き語り用のデモとして(原形を)作っていた「Maybe」を提出したら、「こっちがいい。原作のテーマ性とも合っているし」と言ってもらえたので、こちらがエンディング曲になりました。シングルとしてリリースするときに、「しゅがーでぃず」もいい曲だから入れたいということで、カップリングになったんです。

――「しゅがーでぃず」もまたしっかりアニメの世界観に寄り添う楽曲に仕上がっているという印象なのですが、あらかじめどのようなお題をもらっていたのでしょうか?

森:お題はなくて、自由に作ってくださいとは言ってもらえたんですけど、作品を手掛けるうえで「淡々と現実と向き合っていくなかで、どういう風に心の整理を付けていくか」という表現をいかにして見せようかと真剣に取り組んでいたので、こちらも作品に込められた意図をしっかり読み解いて、中身のある曲を作ろうと思いました。『甘々と稲妻』って、『サザエさん』や『ドラえもん』のように一生変わらないものではなくて、つむぎちゃんが成長していく物語でもあるので、時間が流れてどこかで終わりが来ることを前提に「しゅがーでぃず」の歌詞を書いたんです。つむぎちゃんが大人になったとき、父親(犬塚公平)側から離れていった娘に対して昔のことを思い出すような歌詞にしたくて。だから時間軸は現在ではなく、未来から今を過去として見ているという形で書いた曲ですね。曲自体はつむぎちゃんに向けたアッパーチューンなんですけど、内容は父親目線という視点の変化も意識しました。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる