Sugar’s Campaignが考える、AIに対抗する音楽「知性を超えるために知性のない時代に立ち返る」

Sugar’s Campaignが考えるAI時代の音楽

「普段やらないことをすることで、Sugar’sの本質が分かるようになった」(Avec Avec)

――あと、前作は基本的には歌ものポップスが詰まっている作品でしたが、今回はSeihoさんによるインスト曲が増えています。これには何か理由があったんですか?

Seiho:今回はアルバム全体が2つに分かれてるというのがあるんですよね。1~5曲目と7~10曲目(と、それをまとめる最終曲「SWEET HOME」)で分かれてて。

Avec Avec:その真ん中にSeihoの「マリアージュ」が入ってるイメージなんで。

Seiho:マスタリングの最後に全部を並べて聴いて、一番最後に曲順を決めたんです。あと、曲順として、「ポテサラ」から始まって「SWEET HOME」で終わる頃には、フィクションの世界から現実に戻って来られる道筋を作りたいという気持ちもありましたね。「SWEET HOME」で終わる頃には「はい、今からあなたは現実を生きなければいけないですよ」という風にしたかったんです。

――今回『ママゴト』を作ってみて、何か気づいたことはありましたか?

Seiho:今回大きく気づいたことは、「音が後についてくる」ということですね。僕らにとって大事なのは、「こういうテーマでやろうよ」と考えた結果、偶然今回の作品みたいな音になるということだったんで。だからメロディも、それがたとえTakumaが普段やらないようなことであっても、居酒屋でパッとかかったときに「ああ、いい曲だな」って思えるようなものを入れてみたりしたんです。そうやって途中の構成をこうしたい、楽器はギターを入れたい、ということを積み重ねた結果、今回はなぜか90年代のJ-POPみたいになった。それは本当に偶然起きたことで、だからこそ音楽って面白いと思うんですよ。

――確かに、「ママゴト」のサビには前作にはないほど王道な雰囲気があります。

Avec Avec:「ママゴト」は特にそうですね。でも、全体として聴くと不思議とSugar’sっぽさがすごくあると思うんです。今回はそうやって普段やらないことをすることで、逆にSugar’sの本質が分かるようになった部分もあるのかな、と思いますね。

――8曲目の「HAPPY END」も、まるでLUVRAW & BTBのようになっていますし。

Seiho:そうですね(笑)。これはAIについての歌です。この曲だけ唯一「family」という単語が出てくるんですけど、ここでの「we」が人間で、「I」は人工知能みたいな感じで。

Avec Avec:で、その後、「猿」の曲も出てくるんで、「マリアージュ」以降は、ちょっとSFっぽい。でもそれが、最後の「SWEET HOME」で現実に帰ってくる感じになっていて。

――では、今回の作品を『ママゴト』というタイトルにした理由は?

Seiho:これは、「ママは神」ということですね。

Avec Avec:つまり、ママが……ゴッドなんです。

――『ママゴッド』(笑)。

Seiho:人間の何がすごいって、子供を産むことだと思うんですよ。だから「ママは神」なんです(笑)。とはいえ、僕らは母親の気持ちは本当には実感できないんで、今回はお母さんの悩みみたいなものは極端に削りました。娘が思う母親像みたいなものにしたというか。『天才バカボン』のお母さんみたいな感じですよね。

Avec Avec:そうそう、(あまり)作品に出てこない。『ゴドーを待ちながら』(登場人物が作品を通じてゴドーを待ち続ける、サミュエル・ベケットによる不条理悲喜劇)みたいな感じで。

――上手いこと言ってますけど、全部ダジャレじゃないですか……。

2人:(爆笑)。

Avec Avec:でもほんと、お母さんは出てこないんです。最後まで。

Seiho:それは今回のアルバムでも重要だった、「それぞれの役割」ということで。娘は別に娘になるためだけに生まれてきたわけではないし、お父さんはお父さんとして生まれてきたわけじゃない。お父さんは、娘が生まれた瞬間に娘によってお父さんという役割が与えられるわけで。そうやって、それぞれの役割を演じていくことで、家族になっていくと思うんです。それがタイトルの『ママゴト』という言葉に置き換わっているんですよ。

――それはある意味、Sugar’s Campaignが作るポップ・ミュージックの在り方とも似ているかもしれませんね。

Seiho:そうですね。Sugar’sの場合は、2人で「自分たちが作りたいものはこうだよね」って作ったものが、akioやmomoちゃん、小川(リョウスケ)くん、スピードスターレコーズのスタッフの人たちみんなで話し合って、最終的に「ポップスになる」ということが重要なんです。

Avec Avec:それこそ、バグの話と一緒で。

Seiho:「この曲はいいけど、一般的には受けないよね」みたいなことではなくて、関わってくれた人みんなが本当にいいと思って、それが多くの人に受け入れられるのがポップスだと思う。むしろそうでないと、僕らはポップスって成立しないものだと思うんですよ。

(取材・文=杉山仁)

■リリース情報
『ママゴト』
発売:2016年8月10日
価格:¥2,500(税抜)
〈収録曲〉
1.ポテサラ
2.ママゴト
3.週末のクリスタル
4.いたみどめ
5.ただいま。
6.マリアージュ
7.いつかの夢から連れだして
8.HAPPY END
9.1987
10.レストラン-熱帯猿-
11.SWEET HOME

■ライブ情報
「「ママゴト」リリース記念インストアイベント」
スペシャルトーク&ミニミニライブ<※CD購入者にはジャケットサインもあり>

タワーレコード梅田NU茶屋町店
日時:2016年8月20日(土) 13:00スタート
場所:タワーレコード梅田NU茶屋町店イベントスペース

タワーレコード新宿店
日時:2016年8月21日(日) 21:00スタート
場所:タワーレコード新宿店7Fイベントスペース

「Sugar's Campaign単独公演『あしたの食卓』」
8月25日(木) 心斎橋SUN HALL
8月26日(金) 代官山UNIT

■オフィシャルサイト
http://sugarscampaign.com/

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