「アイドルは楽曲が良くて当たり前」の時代に 乃木坂46チャート首位からシーンを俯瞰

 女性グループアイドルを取り巻く環境について改めて俯瞰してみると、一時の世間における過剰な盛り上がりは落ち着いた感があり、「当たり前のカルチャー」として定着していく過程に移行しつつある。一方で、先日の小金井の事件では「アイドル(およびアイドルファン)」というものに対しての偏見や嫌悪感が社会の中でいまだ根強いことも確認できた。そんなアンビバレントな状況が顕在化している2016年のアイドルシーンだが、作品のクオリティという観点で言うとかなり豊作となっている。48/46系からは『それぞれの椅子』に加えて欅坂46「サイレントマジョリティー」やAKB48「君はメロディ」といった素晴らしい楽曲が生み出されたし、48/46系以外でもNeggico『ティー・フォー・スリー』、ももいろクローバーZ『AMARANTHUS』『白金の夜明け』、わーすた『The World Standard』、WHY@DOLL『Gemini』など面白いアルバムが多い。アイドルポップスを評価する際には「実は良くできている」という類の「本来は良くできていないもの」という前提を置いたうえでの言説が見られがちだが、実際には「アイドルは楽曲が良くて当たり前」の時代が到来している。アイドル側からすれば競争環境としての厳しさが高まっているとも言えるが、そこで切磋琢磨した中からいい作品が生まれてくる今の状況はとてもありがたいものであり、今後もこの傾向が続いてほしいと思う。

■レジー
1981年生まれ。一般企業に勤める傍ら、2012年7月に音楽ブログ「レジーのブログ」を開設。アーティスト/作品単体の批評にとどまらない「日本におけるポップミュージックの受容構造」を俯瞰した考察が音楽ファンのみならず音楽ライター・ミュージシャンの間で話題に。2013年春にQUICK JAPANへパスピエ『フィーバー』のディスクレビューを寄稿、以降は外部媒体での発信も行っている。

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