オリラジの「PERFECT HUMAN」なぜ流行? ダンスミュージックとお笑いの“合流地点”を読む
お笑いコンビ・オリエンタルラジオを擁するダンス&ボーカルグループRADIO FISHの「PERFECT HUMAN」がiTunes総合ランキングで1位を獲得し、現在若者を中心に話題を呼んでいる。
RADIO FISHは、オリエンタルラジオの中田敦彦、藤森慎吾、中田の実の弟でありダンサーのFISHBOYとShow-hey、SHiN、つとむで構成されたプロジェクトグループ。2015年3月18日にオリジナル楽曲「STAR」でデビューを果たしていた。
これまでに数々の“リズムネタ”と呼ばれるものが流行してきた中で、なぜこれほどまでに「PERFECT HUMAN」がブームとなっているのか。2015年3月に自身のブログに『「ラッスンゴレライ」はどこが面白かったのか』を掲載して話題を呼んだ音楽ジャーナリストの柴那典氏は、芸人と音楽の接点を次のように解説する。
「リズムネタというジャンル自体は新しいものですが、お笑いと音楽の接点ということで考えれば、音曲漫才の川上音二郎一座が1891年に初めて演じ、1900年に日本初のレコードとして音源化もされた『オッペケペー節』という明治の流行歌までさかのぼることができます。また、トニー谷の『さいざんす・マンボ』や、植木等の『スーダラ節』、ザ・ドリフターズの『ドリフの早口ことば』など、昭和の時代から常に音楽とお笑いは近い存在でありつづけてきた。そう考えると、オリラジはまさにその系譜上の存在と言うことができるでしょう。彼らはデビュー1年目からリズムネタの『武勇伝』でブレイクし、近年はそれをアップデートしつつ、後輩である8.6秒バズーカーの『ラッスンゴレライ』をキレ良くコピーしています。フィジカルな面から見ても、中田敦彦さんのリズムに対する感性はずば抜けたものがありますね」
柴氏は続けて話題となっている楽曲「PERFECT HUMAN」についてこう分析する。
「『PERFECT HUMAN』の元ネタは、おそらく韓国の歌手・PSYの『GANGNAM STYLE』でしょう。また、『GANGNAM STYLE』の元ネタはおそらくアメリカのエレクトロホップデュオ・LMFAOの『Shots』だと思います。これらの曲の音楽的な共通点は、サビでフックの強いシンセのフレーズを繰り返し、4小節目に決めセリフを言う、というスタイル。ちなみにLMFAOは「Laughing My Fucking Ass Off」の略称で、英語圏のインターネットスラングの「(笑)」とか「www」みたいな意味。マイアミ・ベースやクランクなどアメリカ南部のベース・ミュージックやヒップホップの流れをくむサウンドに笑いの要素を融合させたという人たちです。ただ、一見ふざけているように見えて、実はLMFAOはモータウンレーベルの創始者、ベリー・ゴーディの実の息子と孫という黒人音楽の由緒正しい血統の持ち主。しかも影響を受けたミュージシャンにはエディー・マーフィーを挙げている。これまた音楽とお笑いをともにやってきた黒人コメディアンのレジェンドです。音楽からお笑いのほうへと流れているという意味で考えると『オリラジとは逆方向から同じ道を辿っている人たち』といえる存在。藤森さんが歌っている<na ka ta nakata na ka ta>というフレーズは、LMFAOの『Shots』に出てくる<Shots shots shots shots shots shots>と通じ合うところがあったり、なんとなく参照しているように見えて、実はオリラジとLMFAOはコンセプトの部分で逆向きに繋がっていた、ということがわかります」