なぜTM NETWORKは時代の先駆者となったのか? 「FINAL」作品を100倍楽しく観る方法

なぜTM NETWORKは時代の先駆者に?

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行き過ぎた社会の成熟、テクノロジーの進歩への警告

 TM NETWORK 30周年のアニバーサリー・イヤーの締めくくりとなった横浜アリーナ公演が『TM NETWORK 30th FINAL』(Blu-ray / DVD)として11月25日にリリースされた。TM NETWORK 30年の集大成としてヒット曲を交えた総集編のような展開であり、テロップによる物語の解説、稼働型巨大LEDモニターでの演出など、コンサート・シリーズの初見であっても十分に楽しめる、見応えあるエンタテインメント作品に仕上がっている。

 繰り広げられる物語は、かつて1987年にリリースされたTM NETWORKアルバム作品『humansystem』や、2000年に行われたコンサート『TM NETWORK Log-on to 21st Century』でも描かれた、行き過ぎた社会の成熟、テクノロジーの進歩への警告、破滅へと向かう人類。しかし、それを調査する為に潜伏していたTM NETWORKの3人というストーリーテリング。そして、我らオーディエンスもまた潜伏者だったというメタ構造が取り入れられているおもしろさに注目したい。

 コンサートは2時間半を超え、途中演劇のように「INTERMISSION」として休憩も入る濃厚な物語展開。休憩時に流れた総集編的な映像も含めて完全収録された本作。映像で繰り広げられていくTM NETWORK伝説におけるキーパーソンの女性=CAROLの秘密が明かされていく謎めいたストーリーから目が離せない。

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TMは、エンターテインメントの“ラボ”

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 そんな想いの強さが、4曲目直前に宇都宮隆がアドリブで「ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)」をアコギでつま弾いたサプライズのワンフレーズ「♪Crete Island~」にあらわれていた。注目して欲しい。

「あれは、スタッフが知らなかったんで、ギターが鳴らなかったんですよ。メンバーにはもしかしたらって話はしていたんですけど。ギターの音が間に合わなかったからキーが取れなくなっちゃったの。“アレ?”って(苦笑)。ホントはもう少し歌おうかと思ってたんだけどね。今回、『ELECTRIC PROPHET (電気じかけの予言者)』は、エンディングにSEで流れたんだよね。そんなこともあって、声に出してみようかなって瞬間的に思ったんですよ。」(宇都宮隆)

 FINAL公演では、木根尚登作曲による「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」が、感動的な夕焼けのシーンとともに23曲目のラストナンバーとなった。

「てっちゃん(小室)は“木根さんの曲が最後なんだよ!”って恩着せがましく言ってたね(笑)。自分が書いた曲が最後になるっていうのは嬉しいっていうか、感慨深く演奏させてもらいました。僕は、てっちゃんみたいにたくさんヒット曲を出してきたワケじゃないからね。TMだったら、アルバムで2,3曲で勝負してきたから。駄作を作れない辛さっていうかさ(苦笑)。10曲作れれば、そのうちの1曲でもいい曲があればいいんだろうけど、それが出来ないプレッシャー。僕の書く枠が決まっていて、それが絶対にいい曲でないといけないっていうね。」(木根尚登)

 FINAL公演ラストの「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」の夕焼けの映像シーンで、空を横切る飛行機雲が印象的だった。あれはオープニング映像で小室哲哉が乗っていたセスナだったりするのだろうか?

「そういう風にくっつけたの(笑)。あれはロンドンのヒースロー空港から飛び立ったイメージだよね。あの飛行機雲は一時間くらい待っていたかな。みんな海外で撮ったと思ってるんじゃないのかな? あと『I am』直前で天を指差して、母船(宇宙船)とコンタクトをしているんだけど、あれは12年の武道館の最初に戻る流れだよね。そこから始まったからね。TMは、エンターテインメントの“ラボ”なんですよ。場所っていう意味だけじゃなくて、動きから何から全てが“ラボ”。実験室みたいなことと思ってもらえればいいのかなぁ。なので、一回も振り返りっていうか思い出っていうので作った作品はないですからね。」(小室哲哉)

以上、メンバー発言は公式パンフレット『TM NETWORK 30th FINAL 〜ANOTHER MEETING〜』より抜粋
http://www.rittor-music.co.jp/e/tmn/

究極のフィクション・プロジェクト、TM NETWORK

 ……TM NETWORKの歴史における重要ナンバー「Fool On The Planet (青く揺れる惑星に立って)」を終えたラストシーン。ステージ上は光と煙に包まれ、TM NETWORKのメンバーは手を振りながら無言のまま異空間へ消えていった。

 その後に流れる、エンドロールのラストに注目して欲しい。最期まで目を離してはならない。TM NETWORKの歴史において重要アイテムだった“バトン”。モニター上にあらわれた秘密のコード。映画『2001年宇宙の旅』におけるモノリスのような存在であった“バトン”は、僕らの手に委ねられた。そして究極のフィクション・プロジェクト、TM NETWORKは30年の歴史を経て、ひとまずその活動を終えたのだった。

(文=ふくりゅう(音楽コンシェルジュ/Twitter))

■リリース情報
『TM NETWORK 30th FINAL』
発売:11月25日(水)
価格:[2Blu-ray]¥12,960(税込)
   [Blu-ray]¥8,100(税込)
   [DVD]¥7,020(税込)
[初回仕様:三方背ジャケット仕様]

<2Blu-ray DISC 1>
01 Just Like Paradise 2015
02 RHYTHM RED BEAT BLACK
03 Children of the New Century 2015
04 Here, There & Everywhere
05 SCREEN OF LIFE
06 Birth
07 CAROL 2015 Ⅰ
08 A Day In The Girl’s Life
09 CAROL (Carol’s theme Ⅰ)
10 Gia Corm Fillippo Dia
11 CAROL 2015 Ⅱ
12 In The Forest
13 CAROL (Carol’s theme Ⅱ)
14 Just One Victory
15 [INTERMISSION]
16 月はピアノに誘われて
17 あの夏を忘れない
18 TK SOLO (30th FINAL)
19 Get Wild 2015
20 We Love The Earth
21 Be Together
22 I am
23 Fool On The Planet
24 Ending (Electric Prophet)

<2Blu-ray DISC 2>
01 TM NETWORKのオールナイトニッポン (30th FINAL EDITION)

<Blu-ray>
01 Just Like Paradise 2015
02 RHYTHM RED BEAT BLACK
03 Children of the New Century 2015
04 Here, There & Everywhere
05 SCREEN OF LIFE
06 Birth
07 CAROL 2015 Ⅰ
08 A Day In The Girl’s Life
09 CAROL (Carol’s theme Ⅰ)
10 Gia Corm Fillippo Dia
11 CAROL 2015 Ⅱ
12 In The Forest
13 CAROL (Carol’s theme Ⅱ)
14 Just One Victory
15 [INTERMISSION]
16 月はピアノに誘われて
17 あの夏を忘れない
18 TK SOLO (30th FINAL)
19 Get Wild 2015
20 We Love The Earth
21 Be Together
22 I am
23 Fool On The Planet
24 Ending (Electric Prophet)

<DVD>
01 Just Like Paradise 2015
02 RHYTHM RED BEAT BLACK
03 Children of the New Century 2015
04 Here, There & Everywhere
05 SCREEN OF LIFE
06 Birth
07 CAROL 2015 Ⅰ
08 A Day In The Girl’s Life
09 CAROL (Carol’s theme Ⅰ)
10 Gia Corm Fillippo Dia
11 CAROL 2015 Ⅱ
12 In The Forest
13 CAROL (Carol’s theme Ⅱ)
14 Just One Victory
15 [INTERMISSION]
16 月はピアノに誘われて
17 あの夏を忘れない
18 TK SOLO (30th FINAL)
19 Get Wild 2015
20 We Love The Earth
21 Be Together
22 I am
23 Fool On The Planet
24 Ending (Electric Prophet)

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