ユビキタスが選択した、バンドが歩んでいく道「やっとここから新しい挑戦ができる」

ユビキタスの歩んでいく道

 ユビキタスにとって初のフルアルバムが完成した。大阪を拠点にしながらライブを中心に活動を続けている3ピースロックバンドである彼らは、歌ものとして楽曲の強い魅力と、ストレートなようで実は多くのアイディアが込められたサウンドによって、着実に支持を伸ばしている存在だ。それもこの『記憶の中と三秒の選択』では、「空の距離、消えた声」「リフレイン」に代表されるアッパーなロック・ナンバーや「君の季節」のような壮大なバラードなど、音楽性の振り幅を広げているのだ。一方では、「透明人間」のようなメロディアスな歌の魅力も健在。しかし歌の中では、ここから先はどんな決断や選択をしていくのか?という不安や葛藤の心理が強くうかがえ、その揺らめく思いこそが心をつかむ作品となっている。この1年、このアルバムに集中してきたメンバー3人に話を聞いた。(青木優)

「結成した頃は「3ピースやのに4ピースでやってるような楽曲を作る」という意識があった」(ヒロキ)

ーーユビキタスのこれまでの魅力と新しい要素とのどちらもがあるアルバムだと感じました。バンドとしては、どんな作品にしようと思いました?

ヤスキ:そうですね、結成3年ということが自分らの中では大きかったですね。年内にフルアルバムが出せることになった時から、今までやってきたユビキタスのサウンド、プラス、挑戦的な表現をするというコンセプトでやっていこうという話は、メンバー内でしていて。で、この先が見えてくるような楽曲ができたのが、5月に出したシングルの「空の距離、消えた声」なんですよ。この曲は大きかったですね。

ーーはい。どういう点でですか?

ヤスキ:今まではこういう疾走感のあるギター・ロックってなかったんですよね。今の僕たちはライブがすべてで、2014年からはサーキットをやらせてもらったりして、お客さんとの距離をもっと縮めたいと思った時に、もっと突き抜けるような楽曲が欲しくなって。で、正直なところ、自分がこういう曲をやると思ってなかったですけど、この3人で出す音としてしっくり来たというか、「これで勝負できるんじゃないか」っていうところに持っていけたんですよね。で、この曲ができた時に<記憶の中>と<三秒>という言葉がバンと頭の中に出てくるようになったし。今回のリード曲の「ヒーローのつくり方」は、「空の距離~」の疾走感を維持しながら新しい楽曲を制作しよう、というところでできた曲です。

ヒロキ: 「空の距離~」からは、ザ・3ピース!っていう感じの楽曲に変わりましたね。結成した頃は「3ピースやのに4ピースでやってるような楽曲を作る」という意識があったけど、それがこの曲からはこの感じでいきたいな、という形になりました。

ニケ:7月に出した「透明人間」は、これまでのバンドの感じを出したシングルなんですけど、その前の「空の距離~」は、2ndアルバムのツアーやりながら「こういう曲欲しいね」ってできた曲で、「ユビキタスはどんなバンドか?」というのが表現できた曲やと思うんです。これはたぶん前のミニアルバムのツアー・ファイナルで初めて演奏させてもらったんですよね。

ヤスキ:そうかそうか。じゃあ去年の12月か……。

ーーということは、このアルバムの曲はこの1年ほどで書いたんですか?

ヤスキ:いや、もうギリギリです。5月に「空の距離~」をリリースしたタイミングでは、まだ何もできてなかったですね。

ーーそうなんですか? じゃあ、ほとんどはこの半年弱で?

ヤスキ:そうですね。もともとイメージがあって、それがパーツとしてあった曲はあったんですけど、形になってるものはなかったです。でもツアーとかをこなしながら初のフルアルバムを出したい気持ちもあったので……いいプレッシャーやったんですけど、「自分がどこまで戦えるか」というところはありましたね。メンバーにもいろいろ相談したりして、曲の方向性を考えていきました。

ーーどのあたりに苦心しましたか?

ヤスキ:昔に比べて、ふたりがめちゃくちゃ意見するところですかね(笑)。やっぱり、いいものを作りたいんで。昔は僕が100%作って持っていってたんですけど、今ではその前の80%とかの段階でメンバーに相談するようになって。歌詞はニケに見てもらったり、サウンドはヒロキに確認してもらったりしていたらそういうやり方になったので、出来上がるのにもちょっと時間がかかるというか。

ヒロキ:「こんなんが欲しいから作ってきて」とか、ざっくりですけどね。「メランコロニー」とかは、いろんな楽曲を聴かせて「こんな感じの曲があってもいいよね」みたいな話をして出来上がった曲ですし。

ヤスキ:「リフレイン」なんかはヒロキが「サビでウォウウォウ言う曲が欲しいです」って言ったから作った曲ですね(笑)。

ヒロキ:そんな感じです(笑)。「俺らも唄える曲がほしい」みたいな。

ーー(笑)そうですか。ニケさんは?

ニケ:(ヤスキは)曲を弾き語りで持ってきて、次にドラムとボーカルを作るんですよ。一番最後にベースが乗っかるんですけど、その前に歌詞を見るようにしてますね。で、「これ、どういう意味なんかな」「どういう感じでいきたいんかな」とかをヤスキに訊きながら、確認するようにしてます。いつも。歌詞を見るようにしてますね。

ヤスキ:そうやな。僕が書いた歌詞の中の「この言葉でいいんかな?」という箇所を突っ込んでくるんですよ。だから腹立つんですよね(笑)。やっぱ言われた!みたいな。たとえば「透明人間」の<音が鳴る様な物探そう>のところは、最初は違う歌詞やったんですけど、これでいいのかな?と思ってる時に「その言葉以外に表現はないの?」って言われて、一度持って帰らされたっていう。でもそういうことがないと、まとまってこないというか。それは自分もモヤッとしてる部分だったりするので。

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ヤスキ(Vo&Gt)

ーーなるほど。そうやって3人の意思疎通をとりながら作っているんですね。

ヤスキ:そうですね。結果的にそれで歌詞もサウンドも、いいバランスができるんです。1枚目のミニアルバムの『リアクタンスの法則』の時は僕が持ってったものに味を付けたような流れだったんですけど、去年の『奇跡に触れる2つの約束』は方向性で揉めて、一番衝突が多かったんですよ。いろいろなベクトルがちょっと違ったせいで揉めたんですけど、今回はそれもクリアして、いい形で話し合って作れるようになったというか。

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