Juice=Juiceの過去・現在・未来が凝縮! 初アルバム『First Squeeze!』をピロスエが徹底レビュー

<Disc 3:The Cover Juice>

01. Magic of Love (J=J 2015 Ver.)[作詞・作曲:つんく 編曲:村山晋一郎]
02. 香水 (J=J 2015 Ver.)[作詞・作曲:つんく 編曲:平田祥一郎]
03. 鳴り始めた恋のBELL[作詞・作曲:つんく 編曲:松井寛]
04. スクランブル[作詞・作曲:つんく 編曲:鈴木Daichi秀行]
05. BABY! 恋にKNOCK OUT!/宮崎由加&金澤朋子&植村あかり[作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄]
06. ラストキッス/高木紗友希&宮本佳林[作詞・作曲:つんく 編曲:小西貴雄]

 ハロプロの先輩グループの楽曲をカバーした6曲が収録されているのがこのディスクで、ボーナストラック的なものに見えるかもしれないが、これがなかなかあなどれない。以下は元曲の歌手情報を加えてオリジナルリリース順に並べ替えたもの。

・1998.11.18「ラストキッス」タンポポ(1stシングル)
・1999.09.29「Magic of Love」太陽とシスコムーン(5thシングル)
・2001.02.28「BABY! 恋にKNOCK OUT!」プッチモニ(3rdシングル)
・2002.10.23「香水」メロン記念日(7thシングル)
・2003.06.18「スクランブル」後藤真希(7thシングル)
・2007.09.12「鳴り始めた恋のBELL」音楽ガッタス(1stシングル)

 「スクランブル」以外の5曲は、ツアー「News=News」でも歌われてきた。ただし「Magic of Love」「香水」の2曲はJ=J 2015 Ver.として元曲の方向性は保ちつつリアレンジされて、そのバージョンでの初披露は「Special Juice」5月2日の中野サンプラザだった。

 特筆したいのは「Magic of Love」。やはり楽曲とグループの相性というのはあるもので、この曲が持つファンキー・ソウルな面とJ=Jの個性が上手く合致し、名カバーが誕生した。特に間奏での高木のフェイクで盛り上げながら落ちサビへ突入していく高揚感は、凄まじい魅力にあふれている。ツアーでの評判はもちろん、他アイドルグループとの競演ライブイベントでもこの曲が歌われることが多く、J=J随一のキラーチューンとして知られている。

 「スクランブル」は現在のツアー「LIVE MISSION 220 〜Code1→Begin to Run〜」で初セットリスト入りしたもので、間奏やアウトロでの植村あかりのフェイクの輝きが早くも評判を呼んでいる。

 過去の楽曲をライブなどで歌い継いでいくのはハロプロの特徴のひとつだが、こうしてレコーディングされて音源リリースされるのはなかなか珍しい。モーニング娘。『The Best! 〜Updated モーニング娘。〜』や℃-ute『②℃-ute神聖なるベストアルバム』もあったが、それらは自グループ楽曲のみ対象のリアレンジベストだし、「ハロカバ」シリーズは配信限定で選抜メンバーが同一曲を歌い比べるという企画色の強いものだった。そういう意味ではBerryz工房『③夏夏ミニベリーズ』のケースが近い。

 また、「BABY! 恋にKNOCK OUT!」「ラストキッス」で3人・2人に別れてユニット歌唱しているのも見逃せない。こうした少人数のユニット曲やソロ曲をオリジナルでも聴きたいところだが、それは次作以降のお楽しみだろう。

<本盤に濃縮された過去・現在・未来>

 ディスク1「The Best Juice」とディスク2「The Brand-New Juice」は、「2012〜2014年までのつんく♂曲」と「2015年以降の複数作家混成」という対比の図式になっており、それはJuice=Juiceの現状であると同時にハロプロの現在を象徴したものにもなっている。つんく♂の作家性が色濃くそれゆえに一本筋が通っていたこれまでと、複数の制作陣による多様性の開花、どちらが上下という話ではないが、現在そして未来のハロプロを検討する上でのマテリアルとして本アルバムを位置付けることも可能だろう。

 ディスク3「The Cover Juice」では、単に過去のハロプロ楽曲回顧にとどまらず、昇華されて現在および未来へと繋がっている。特に「Magic of Love」に顕著であり、極論すればこれもJ=Jのオリジナル曲といっていい。ハロプロ外へ目を向ければ、アイドルネッサンスやハコイリ♡ムスメといったカバー主体でオリジナル偏重から自由なグループが近年の一潮流であり、それらとの同時代性も認められるのではないだろうか。

 こうした解釈が可能なのも、作品の強度があってこそのもの。端的にいって、アルバム『First Squeeze!』は良曲の集合体である。ここにはJuice=Juiceの過去・現在・未来すべてがある。

■ピロスエ
編集およびライター業。企画・編集・選盤した書籍「アイドル楽曲ディスクガイド」(アスペクト)発売中。ファンイベント「ハロプロ楽曲大賞」「アイドル楽曲大賞」も主催。Twitter

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