浅野忠信はなぜバンド活動を続けるのか「音楽を通じて自分の気持ちを変えたい」

「先輩に『お前は俳優だけど、パンクだよな』といわれて嬉しかった」

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SODA!

ーー浅野君はもちろん俳優業がメインだと思うんだけど、バンド活動はライフスタイルの中でどういう風に位置づけている?

浅野:僕は中学2年生の時に、金八先生と言うドラマのオーディションに受かって、あの時にちょうどバンドブームがきていて、母親がセックス・ピストルズの写真集を自分の机の上に置いていたんですね。その写真集のシド・ヴィシャスがジャンプしながらベースを弾いている写真を見て「とってもカッコイイ男がいるんだなぁ」と思って、 母親に「なんだこれは?」って聞いたんです。そしたら「お前もそろそろセックス・ピストルズだろ」って言われて(笑)。そこから「俺もバンドやりたいって」思って始めたので、スタートは俳優業と同時ですね。それで高校に入ってすぐにPEACE PILLのメンバーと出会ってバンドを始めて。ギタリストのやつが、イチローさん(PILE DRIVER)の中学校の後輩だったんです。(参考:横浜ハードコア・PILE DRIVERが語るパンク観、そして所属レーベルmicroActionが目指す理想とは?

ーーそこからハードコアシーンの連中と仲が良くなっていったと。

浅野:はい、でもすぐに仲良くなったわけではなくて。僕はいつもギターのやつの家に溜まっていたんですが、当時の中学生や高校生は、駅に行くのにどうしても通らなければいけない道があって、そこにイチローさんやセン君(PILE DRIVER)たちが溜まり場にしてる場所があったんですよ。そこを下手にバイクなんかで通った日には赤いコーンが飛んで来たり、「お前なんだ!」って追いかけられたりするんですよ。それで「怖い!」って逃げたりしていて。

ーー知ってるよ、その溜まり場のことは(笑)。

浅野:それでギターのやつに「イチローさんたちってどんな感じだったの?」って聞いたら、「いやーすごいよ。モヒカンで生徒会長で」とか色んな話を聞いて、「すげぇな、友達になりてぇな」って毎日言ってたんです。そのときにイチローさん達がやってるOUTSIDERSってバイクのチームがあって、そこに唯一僕と同じ歳の友達がいたんです。そいつの家に行くようになったら、まぁOUTSIDERSの連中が来るわけですよ。それからバイクの後ろに乗せてもらって溜まり場とかに連れて行ってもらって「おお、少し近づいた!」みたいな。

ーーわはは、ただの不良だね。

浅野:それで僕らも行き場がないので、それから図々しくそこに通うことにしたんです。最初は結構、冷たかったんですけど、俺たちは食いついていって少しずつ認めてもらって。そしたらそのギターのヤツがOUTSIDERSの知り合いだった人にすごく気に入られて、「あいつらもOUTSIDERSに入れようぜ」って言ってくれたんですよ。そしたらイチローさんも認めてくれてOUTSIDERSのワッペンをくれたんです。「よっしゃー! これで俺たちもみんなと仲良くなれた!」って言って、イチローさんたちと遊ぶようになって、それからは本当に面白かったですね。

ーー今でもOUTOSIDERSの服を着てるもんね。今なかなか着てるヤツはいないよ(笑)。

浅野:同時進行で俳優も始めたところだったんですが、イチローさんたちは「お前は俳優だけど、パンクだよな」って認めてくれたので、それがすごく嬉しかったですね。彼らが音楽ではないところで存在を認めてくれたからこそ、俳優という仕事に本腰を入れようと思えた部分はあると思います。

ーーその頃の経験が、いまの音楽観にも繋がっていると。

浅野:そうですね。そこは大きいですね。音楽のルーツに関しては、母親と兄貴がいろんなことを教えてくれたんですが、その感覚をわかちあえる人たちがイチローさんたちだったんです。彼らのおかげでいろんな面白い人たちと出会えて「これはたしかに、母親が教えてくれたなにかと同じなんじゃないか」と感じていました。10代の頃からハードコアパンクシーンに関わったことで得たものは多かったです。皆さんが遠慮なく接してくれて、「お前にとってこれは何なんだよ?」「お前にとってこれは本当なのか?」と問いかけてくれたので、そこで僕は考える時間を持てたんですよ。

ーーなるほど。いまも音楽活動は俳優業に影響を与えている?

浅野:20~30代まで、俳優業のインタビューでもいろいろ聞かれていましたし、自分でも両者の相違点あるいは共通点はなにかをずっと考えていました。表現がどこから発信されているかというと、僕の中に小さい頃からある、このなんだかわからないエネルギーなんです。僕はとても満たされた毎日を送っていて、満たされてないから表現をしているわけではありません。ただ、なんだかわからないエネルギーだけがずっと心にあるんですね。満たされた環境があって、それでもなお湧いてくる表現欲求が僕の核にあって、そのエネルギーをみんなに頼って、さらに力強くしたいと思っているんです。それは音楽においても俳優においても一緒です。

ーー俳優としてはいろいろと葛藤があるといっていたけれど、音楽でもそれはある?

浅野:俳優としての活動は、監督の描いた筋書きに沿う作業なので、ある種ストレスの溜まる行為ではあるわけです。もちろん、そのストレスは決して悪いものではなく、そのなかで戦いながら演じることに本当の面白みがあるのですが、音楽では監督的なイニシアチブを自ら持って曲を作れますし、ライブも自分たちで組み立てたりすることができるので、ゼロから作っていける。そこは楽しいですね。音楽というのは映画と違って、目を閉じていても感じられるものじゃないですか。僕は音楽を通じて人の気持ちを変えようとは思わないんですけど、自分の気持ちを変えようとは思うんです。音楽は今すぐ口ずさむことができるし、頭の中で鳴らすこともできる。俳優業は決して自由な表現ではないからこその魅力がありますが、音楽には自由に表現する魅力を感じていますね。

「シンプルな音楽のエネルギーをシェアしていきたい」

ーーSODA!はジャンルを問わずにいろんなバンドと共演しているけれど、対バンをして印象的だったのは?

浅野:以前、でんぱ組.incというアイドルの子たちとライブをさせていただいたんですが、こういう異ジャンルの対バンこそやらなきゃいけないと思いました。普段は聴かない音楽だったり、出会わない人たちのところに行って、自分たちがどんな状態になれるのか、その人たちのお客さんとどういったコミュニケーションをとることができるのかーーそれが1番重要なことかと思っています。彼女たちのライブはものすごく盛り上がっていたし、ファンのひとたちは僕らの演奏もすごく楽しんでくれて、とても刺激になりましたね。対バンして、お互いのコミュニケーションからなにかを受け止められれば、こんな最高なことはないと思いました。

ーーほかにいま、興味があるシーンはある?

浅野:以前、サマーソニックでアンダーワールドのライブを観たんですけど、ボーカルのカール・ハイドさんがすごくよかったですね。大人の男が汗だくで真剣になって、自分に向かって歌ってる姿を見たときに「もうこれをやられたら若者は敵わないな」と思いました。歳を重ねて自分のために音楽をやっている人、自分のためにプレイしている人とは、一緒にやってみたいなと思いましたね。それと、フェラ・クティの息子のフェミ・クティをフジロックで観たときも、やっぱり良かったですね。それもループで聴かせる音楽で、そこにやっぱり弱いんですけど(笑)。あとは海外アクトのライブを観て感じるのは、コミュニケーションの取り方というか、自分たちがお客さんの力を引っ張り出して、そのお客さんの力をまた生かして盛り上げて、というやり取りを常にやっていて、そのスキルがやっぱり上手いと思います。

ーーなるほど。では最後に、今後の展望を。

浅野:音楽に関しては、僕がニューオーリンズで感じたものだったり、母親から感じたものだったり、ハードコアシーンの皆さんから感じた“シンプルな音楽のエネルギー”を、自分ももっと強く感じて、少しでもその気持ちを誰かとシェアしていきたいですね。もちろん、そうした情熱は俳優業でも一緒です。モンゴルに行ったときに、砂漠の中にあるインターネットカフェで、子どもたちがかぶりつきで映画を観ていたんですよ。そこで夢を持って「こいつみたいに生きようぜ!」って彼らが言ってくれるなら、こんなに素敵なことはないわけです。だからこそ、自分が必死に生きないといけないと思っています。

(取材・文=ISHIYA)

■リリース情報
SODA!『SKYBLUES!』
発売:6月24日
価格:¥ 2,160

〈収録曲〉
01. ちっぽけな夢で踊ろう!
02. 真夜中のドライブ!
03. スカイブルース!
04. あの子の!
05. エネルギー!
06. ノンストップ!
07. 1つのリンゴ!
08. 全然問題ない!
09. 走れメロス!
10. 旅へ出よう!
11. ドリーム!
12. 俺は捕まらない!
13. 自由のうた!
14. ポケット!
-ダウンロード音源-
15. ジグザグ!
16. 着火!
17. あっあっあああ!
18. ととと止まらない!
19. 助けてやれ!
20. ウェイクアップ!
21. 俺はブルースなんか!
22. モトクロス!

■関連情報
SODA!「SKYBLUES!」よりM②「真夜中のドライブ」試聴リンク
https://soundcloud.com/anore/soda
SODA! オフィシャルWEBショップ アルバム「SKYBLUES!」もこちらから
http://believemusicstore.com/?mode=cate&cbid=1672115&csid=0
SODA! 「SKYBLUES!」レコ発・ワンマンライブ@渋谷O-nest 7月23日(木)決定
https://shibuya-o.com/venues/tsutaya-o-nest/
[SODA! / SKYBLUES!]
http://believemusicstore.com/?pid=90857010
[microAction]
http://microaction.jp/onlineshop/000370/

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