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成馬零一「テレビドラマが奏でる音楽」第4回

ドラマ『She』が描く“断片化した現実”とは? [Alexandros]の劇伴から考察

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 木村拓哉主演の『アイムホーム』や堺雅人主演の『Dr.倫太郎』など、今季の連続ドラマが出揃ったが、一番の意欲作は『She』(フジテレビ系)である。

 本作は、失踪した親友・荻原あずさ(中条あやみ)の行方をジャーナリスト志望の女子高生・西澤涼子(松岡茉優)が探偵役となって生徒たちに聞き込みをしていくというミステリータッチの学園ドラマ。

 松岡茉優を筆頭に中条あやみ、森川葵、竹富聖花、清水くるみといった注目の若手女優が出演していることはもちろんのこと、謎が錯綜する脚本など、見どころ盛りだくさんだ。

 本作が放送されているフジテレビの土曜深夜ドラマ枠は、『LIAR GAME』、『SP 警視庁警備部警備課第四係』、『ファースト・クラス』などを生みだしてきたドラマ枠。

 昨年の『水球ヤンキース』を最後に一度終了したが、「Fresh&Edgy」をキャッチフレーズに再び始動することとなった。

 放送時間も25分1話×5話とコンパクトとなり、今のドラマシーンの中では劣勢の若者向けドラマに焦点を当てた作りとなっている。

 脚本の安達奈緒子は、IT業界の内幕を恋愛ドラマとして描いた『リッチマン、プアウーマン』が出世作として有名で、『その男、意識高い系』(NHK)など、インターネットが普及して以降、メールやSNSによるコミュニケーションがもたらした日本人の恋愛観、仕事観の変化に敏感な脚本家だ。

 情報化が進み、あらゆる現実が断片化されていく現実を描く一方で、人の心の中にある小さな機微を引きずり出して、激しい愛憎劇を描く安達のセンスには目を見張るものがある。

 それは演出面でも同様だ。携帯電話やビデオカメラなど、安価なデジタルデバイスが一般に普及した結果、誰もが情報の送り手になれる時代状況を、多用な映像やSNSを通して表現している。

 残念ながら、これらの演出は、映像表現として全てがうまくいっているわけではない。例えば、主人公は常にビデオカメラで状況を撮影しており、POV(Point of View)ショットといわれるビデオカメラを持った主人公の主観映像だけで物語を構成するモキュメンタリー(フェイクドキュメンタリー)風の映像が意識されている。

 しかし、そのPOVが全シーンで徹底されているわけではないため、作りこんでいるからこその脇の甘さも見えてしまう。

 それでも無難にまとめるよりは、失敗しても構わないから、ガジェットを盛り込もうという姿勢は若者向けドラマとして応援したい。

     
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