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レジーが語る、パスピエ論

「バンドシーンの人気者」から「ポップの主役」へ パスピエが『幕の内ISM』以降に示す可能性とは?

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荒井由実
UNISON SQUARE GARDEN
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『幕の内ISM』モードのパスピエ

 6月22日にEX THEATER ROPPONGIにて行われたUNISON SQUARE GARDEN主催のイベント『fun time ACCIDENT』においてパスピエが見せたパフォーマンスは、現在の彼らの充実ぶりを体現する素晴らしいものだった。

 ニューアルバム『幕の内ISM』リリース後のライブとしてはこの日が2本目。成田ハネダがライブ前日に「ライブも『幕の内ISM』モードに変わる」旨をツイートしていたが、目に見える部分として変化が感じられたのは「意識的に客席を盛り上げようとする動きが減った」ことである。

 昨年リリースしたアルバム『演出家出演』が「ライブ」を意識した作品であることはすでに各所で語られているが、2013年のパスピエはその作品に引っ張られるかのようにライブでも「手拍子をすること」「拳を突き上げること」を促している感じがあった。それらは今のシーンで支持を得るために有効な手段であった一方で、「前方エリアのモッシュの是非」などバンドの音楽性からかけ離れた議論を一部で引き起こした。

 先日のライブを見る限り、『幕の内ISM』モードのパスピエが志向するのは「音楽を通じた自発的な盛り上がりの重視」である(これについては、「自由に音楽を楽しもう」というメッセージを常日頃から発しているユニゾンの影響も大きいかもしれない)。煽らなくてもしっかりした歌と演奏があれば、自分たちがやりたいようにやればいくらでもフロアをあげることができる。そんな自信が感じられるステージだった。そして、それを支えるのは昨年の全国ツアーを経てより強固に構築されたバンドアンサンブルである。以前、大胡田なつきと成田の2人で演奏するライブを見た際「パスピエの核はこの2人だけど、5人が揃わないとパスピエの音にはならない」という印象を持ったが、この日のステージの冒頭に行われた大胡田以外の4人による自由なセッションを見てその思いを強くした。

他のバンドとは一線を画す「緩急」

 「新世代ギターロック」などという括りで語られる多数のバンドが各地のライブハウスやロックフェスを盛り上げているが、個人的にはそういった領域においてこのパスピエというバンドは頭一つ抜けた存在だと感じている。その理由を自分なりに一言でまとめると、「緩急」ということになる。

 「どれだけの剛速球を投げ込めるか?」が重視されがちな昨今のバンドシーンにおいて、パスピエは「変化球を効果的に使うことで、速球がより速く見える」ことを本能的に理解している節がある。これは、似たようなテーマの繰り返しの中でメリハリを作らなければならないクラシック音楽を骨の髄まで知り尽くしている成田ハネダならではの感覚かもしれない。3年前の作品である『わたし開花したわ』の頃から、彼らのアルバムの中盤にはギヤを落として目先を変えるような曲が必ずラインナップされている。しかも、それらの曲は「単にBPMを落としました」ということではなく、スカ風だったりアジアンテイストだったり、いわゆる「普通のロックバンド」からは出てこないであろうアウトプットになっている。だからこそ、ストレートなロックナンバーの爽快感がより際立つのである。

 さらには、その「ストレートなロックナンバー」ですらも、単なる剛速球ではなくて手元でナチュラルにシュートするかのような独特の手触りがある。ライブの定番曲“電波ジャック”や最新シングル“MATATABISTEP”など、突出した鍵盤の音がギター・ベース・ドラムと絡み合うことで形成されるドライブ感は4人組ギターバンド(BUMP OF CHICKENやASIAN KUNG-FU GENERATIONなど)の影響が色濃い現状のシーンにおいて異彩を放っている。

      

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