祝日本公演! 小野島大が選ぶ、ローリング・ストーンズのジャンル別ベスト55曲

ブルースの5曲

Midnight Rambler (1969)

 現在に至るまで長い間最重要ステージ・ナンバーとして演奏され続けた彼ら中期の代表曲です。ライヴごとに自在にテンポもサイズも変わります。これはライヴ・アルバム『ゲット・ヤー・ヤ・ヤズ・アウト!』のヴァージョン。数あるライヴ・ヴァージョンの中でも緊張感のあるテイクです。途中で「かっこいい!」という日本語の掛け声がかかります。

Stop Breaking Down (1972)

 ロバート・ジョンスン「Stop Breaking Down Blues」のカヴァー。生ギター弾き語りのカントリー・ブルースを荒々しく泥臭いエレクトリック・ブルースに改変しています。ミック・ジャガーが「ワン・モア・タイム」と声をかけて促すほどの白熱した演奏。

Love In Vain (1969)

 邦題は「むなしき愛」。これもロバート・ジョンスンのカヴァー。ストーンズ流ブルース表現の極地であり、数あるストーンズのカヴァー演奏の中でも白眉でしょう。この映像は映画『ギミー・シェルター』のいち場面で、スロウモーションで捉えられたミック・ジャガーの舞うような動きは、ため息が出るほど美しいですね。

Silver Train (1973)

 もともとジョニー・ウィンターのために書き下ろされた曲。歌詞も曲調も演奏もストーンズ流のごきげんなジャンプ・ブルースに仕上がっています。ミック・テイラーのスライド・ギター・ソロが聞きもの。後半部の盛り上がりは圧倒的で、ミック・ジャガーのシャウトの連続攻撃は鳥肌モノです。

Prodigal Son (1968)

 邦題は「放蕩むすこ」。戦前のブルースマン、ロバート・ウィルキンスのカヴァーですが、南部ムードたっぷりのバンド・アレンジに改変。淡々とした演奏ですが、デモーニッシュな現代性の感じられる禍々しいムードが最高です。

リズム&ブルースの5曲

Mercy Mercy (1965)

 ドン・コヴェイ64年のヒットのカヴァー。ストーンズ・ヴァージョンは65年なので、当時の最新ヒットを取りあげた感じでしょうか。比較的ストレートなアレンジですが、より荒々しくパンキッシュなガレイジ・サウンドに仕上がっています。なおオリジナルのギターは、なんと無名時代のジミ・ヘンドリックス。

If You Really Want To Be My Friend (1975)

 当時のストーンズにしては非常に都会的で洗練されたタッチのノーザン・ソウル・バラードです。ちょうど全盛期だったフィリー・ソウルの影響大な曲で、コーラスはフィラデルフィア出身のブルー・マジックがつとめています。あまり振り返られることがないですが、隠れた名曲のひとつ。やはりフィリー・ソウルに接近したディヴィッド・ボウイ「ヤング・アメリカンズ」と聴き比べるのも一興でしょう。

Poison Ivy (1963)

 コースターズ59年のヒットのカヴァー。ほとんどコピーに近い演奏ですが、オリジナルのノヴェルティ感覚よりも荒々しいガレージ感覚が強調されるのがさすが60年代ストーンズ。2テイクありますが、こちらのほうがよりロック的ですね。

Fool To Cry (1976)

 邦題は「愚か者の涙」。カーティス・メイフィールド的なニュー・ソウル風バラード。裏声のコーラスが最高です。ヴァーカルのみレコードとは別テイク。

Loving Cup (1972)

 映画『シャイン・ア・ライト』で、ホワイト・ストライプスのジャック・ホワイトとデュエットしていたのがこの曲。ストーンズ史上最強のゴスペル・ナンバーです。

カントリーの5曲

Let It Bleed (1969)

 ストーンズ流カントリー/ブルースですが、後半部の白熱の盛り上がりは素晴らしい。こんな起伏の少ない、音数も少ないミディアム・テンポの地味な曲なのに、どんなハード・ロックよりもハードなロック・スピリットを感じます。

Wild Horses (1971)

 元バーズのグラム・パーソンズとの交流で生まれたカントリー・バラードの名曲。

Sweet Virginia (1972)

 アメリカ人でもないのに、なぜこんなに巧みに南部のひなびたムードが出せるのか本当に不思議。レイドバックしたカントリー/ブルースですが、そこはストーンズ。ハードなロックの感覚は一貫していて、ピリリと山椒が効いています。

You Can't Always What You Want (1969)

 邦題は「無情の世界」。もとはシンプルなカントリー/ブルースを、50名以上のコーラス隊をバックに、やたら荘厳で壮大でドラマティックな一大ゴスペル・ナンバーに仕立ててしまった技量には脱帽です。

Factory Girl (1978)

 フィドルをフィーチュアしたひなびたヒルビリー風ナンバーですが、タブラを入れることで、実に怪しげな無国籍ムードになっています。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「洋楽キュレーション」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる