>  >  > ブラーが来日公演で見せたドラマ

青木優が「洋楽バンドの再結成事情」を読み解く

ブラーが来日公演で見せた新境地 再結成バンドの"終わらない物語”を追う

関連タグ
ライブ
洋楽
青木優
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
20130121_KAZ6813-thumb.jpg

約10年ぶりに来日を果たしたブラー。(写真=KAZUMICHI KOKEI)

 日本武道館の通路で、何組かの親子連れとすれ違った。なるほど。たとえば高校時代にブラーにハマってて、それが約20年前なら、そりゃライヴに連れて来れるぐらいの子どももいるだろう。ブリット・ポップが騒がれた頃から、それだけの時間はとうに経っている。

 超待望の来日公演だった。ブラーが日本の地を踏むのは2003年のサマーソニック以来だが、その時はギタリストのグレアム・コクソンがいなかった。その後、彼らはバンドとしての活動を完全に休止してしまう。ところが2009年夏、まさかの再結成が実現し、それからのブラーは、ややインターバルをとりながらも活動を続けてきた。そして昨年、一度はフェスでの来日が決まったのに、そのフェス自体が開催中止の憂き目に遭い、日本のファンは悲しいお預けを食ってしまっていたのである。

 それだけに、目の前に4人が姿を見せた瞬間、武道館中を覆い尽くした大歓声は感動的だった。そしてベスト盤のような選曲や舞台のバックドロップは、DVD/CD作品の『パークライブ』になった一昨年のロンドン・ハイドパーク公演の流れを汲むものだった。コーラスやホーンなど総勢11人編成でブラーの名曲群を網羅していく。「パークライフ」1曲の出演のために、俳優のフィル・ダニエルズが日本まで来てくれていたのもうれしかった。

 それだけ文句なしに楽しめるライヴだったが、そのオールタイムなメニューは、活動休止を乗り越え、こうして再び集まったブラーだからできるパフォーマンスなんだろうなと感じた。今の彼らの演奏は、かなりタイトでタフ。ブリット・ポップ旋風時代、アメリカ志向に振れた時期、グレアムが不在の頃――そうしたどのタイミングでも、この音は表現できなかっただろう。4人には、全員がこのバンドと距離を取った長い時間があったからこそ「じゃあ、今の俺たちならどう演奏する?」という感覚があったのではないだろうか。

 また、グレアムが、制作当時は自身が関与しなかった「アウト・オブ・タイム」(『シンク・タンク』収録)に豊かな音色を重ねるシーンにはグッと来た。アンコールで彼がデーモンと手をつないだり、ハグしたりする光景に感極まったファンも多かったはずだ。こうして再び集まるまでのブラーは、それぐらい個々の人生を歩んでいたからだ。デーモンがゴリラズをはじめとした多彩な音楽活動に精力的だったことはみんな知っているし、グレアムはソロ・アーティストとしての実績を積み重ねてきた。ベースのアレックス・ジェイムスは田舎の農場に生活の場を移し、良質なチーズ作りに取り組んだり、自伝本『ブラー/ブリット・ポップと100万ドルのシャンパンの日々』(P-Vine Books)などの執筆業にも精を出した。ドラムのデイヴ・ロウントゥリーに至っては、労働党の候補として地方選に出馬するほど熱心に政治活動を行ったり、弁護士としての仕事をしたり……といった具合だ。

表示切替:スマートフォン版 | パソコン版