坂本龍一が「録音・再生技術の発展」を解説 「録音によって人類は自然界に存在しない音を聴いた」

 世界的音楽家・坂本龍一を講師に迎え、音楽の真実を時に学究的に、時に体感的に伝えようという「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」(NHK Eテレ)のシーズン4・第2回が、2014年1月16日に放送された。

 1月期のテーマは「電子音楽」で、ゲスト講師には前回同様、川崎弘二、小沼純一、三輪眞弘の3名が迎えられた。今回の講義内容は「録音・再生技術の発展」について。第二次大戦前後に発展したこの技術は、音楽の概念自体を大きく変えた。坂本は「人類の歴史のほとんどにおいて、音楽というものはライブだった」と語り、小沼は「メディアに録音し、“今ここで”から“いつでもどこでも”に変わったことは大きいですよね」と、その革新性を指摘している。

 録音再生装置が発明されたのは19世紀末、エジソンを始めとする発明家たちが開発競争にしのぎを削った。そして完成したレコードプレイヤーの仕組みは、音声の振動を針に伝え、ロウやビニールに溝をつけて記録するという物理的なものだった。1928年にはまったく新しい技術を使って記録するメディアである、テープ・レコーダーがドイツで開発される。音を電気信号に変化し、酸化鉄などの金属を塗ったテープに、磁気として記録するという画期的なものだった。その後、第二次大戦を通じて、テープレコーダーの音質は飛躍的に向上する。ナチス・ドイツはこの技術を応用し、プロパガンダを行った。1945年に終戦を迎えると、この技術は音楽の世界に大きな刺激を与えることになる。

 フランスでは、国営放送技術者のピエール・シェフェールが、ミュージック・コンクレート(具体音楽)という新しい音楽を生み出した。ピエール・シェフェールはレコード盤に入った効果音などをラジオドラマに使用していたところ、“針飛び”から面白い音楽的効果が得られることを発見。録音された音の断片を組み合わせて音楽を作る試みを始めた。テープ・レコーダーでより気軽に音を録ることが可能になると、身の回りにある音、つまり具体的な音を組み合わせることにより音楽を作り、それをミュージック・コンクレートと名付けた。その後、彼のスタジオには多くの音楽家が訪れ、扉の音や足音などを使った、実験的な音楽を数多く生み出した。坂本は彼の音楽に対し、「騒音がただ編集されているだけとも言えるし、音楽の概念をそこまで拡大したとも言える」と、その発想の新奇性について解説した。

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