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瀧見憲司(クルーエル・オーナー/DJ)インタビュー(後編)

「音にフォーカスすると国境を越える可能性はある」瀧見憲司がJPOPと距離を置く理由

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オーストラリア・ツアー時、メルボルンにてプレイするKENJI TAKIMI。(写真=moon-rocks

 日本を代表するDJであり、自ら音源制作を手がけるアーティストであり、レーベル「クルーエル」のオーナーでもある瀧見憲司が、国内外の音楽シーンについて語るインタビュー後編。前編【「DJに求められるものが違う」瀧見憲司が語る、海外のクラブ現場事情】に続く後編では、クルーエルで音源制作・リリースを行ってきた経験をもとに、JPOPと距離を置きながら音楽活動を展開する理由や背景、さらにはクラブシーンや音楽メディアの課題についても語った。聞き手は音楽評論家の小野島大氏。(編集部)

――現実にクルーエルのレコードは、海外でも引き合いがあるんですよね。

瀧見憲司(以下、瀧見):何百枚って単位ですけどね。ただ売れてる枚数からすると影響力というか、影響力のある人に対する訴求力は大きい方だと思いますね。具体的に数値化はされてないけど、明らかにそうですね。

――そんな状況でアーティストとして曲を作る場合、誰に向けて作っている意識なんでしょうか。

瀧見:曲によるけど、このレベルなら(DJが)絶対かけたくなるはずだ、という気持ちで作ってますね。自分の認める音楽のレベルと同等かそれ以上のものかという。

――「レベル」というのは?

瀧見:出音も含めて、音の構成、成り立ちというか。僕らが作ってるような音楽と、いわゆるJPOP的 な音楽の何が違うかというと、聞き手の側が、音を聴いてるのか曲を聴いてるのかという違いだと思うんですよ。「Jの音楽」って基本的には曲とか歌を聴かせるわけで。どんなに最新のトラックを作ったとしても、結局歌のオケに過ぎないんですよ、突き詰めれば。ロックにしても演奏と歌が一体になったものがロックだと思うんですけど、日本の場合、「オケと歌」になってしまっている。市場で大勢を占める聞き手の関心の方向が「音」に行かないってことでしょうね。

――そういう聞き手にとっては、歌詞の内容に共感できるかどうかが一番大事だったりするのかもしれませんね。

瀧見:だからJの ほとんどはドメスティックなマーケットで消費されてるだけでしょ。すごくローカライズされてる。音にフォーカスすると国境を越える可能性はあると思いますけれどね。

――なるほど。さきほど「一曲単位のインパクトではギター一本の弾き語りにはかなわない」という話がでましたけど、「長編小説」であるDJ/クラブ・ミュージックでは、曲や歌というより、音全体を聴かせることが大事であると。

瀧見:その「音を聴く」人の市場は小さいかもしれないけど、自分としてはそういう人たちにフォーカスしたい。そういうところを広げたいな、というところはあります。

――でもクルーエル・レコードも90年代はラヴ・タンバリンズやカヒミ・カリィなど、「渋谷系」の中核として、今で言うJPOP的な流れに接近した時期もあったと思うんですが、どこかで考え方が変わってきた部分があったんでしょうか。

瀧見:うーん、結局あの渋谷系のブームって、バブル崩壊後から、95年 のオウムと阪神淡路大震災までの時期における、日本の社会が変わっていく変節期の、日本の音楽マーケットの最後の徒花的なものだったと思うんです。クルーエルの場合、そういうブームに乗っかったという自覚も当時はなくて、わけわかんない間にめちゃくちゃ売れてたという感じですね。

――じゃあ渋谷系のブームを利用して日本のポップス・シーンに切り込んでいたとか、そういうつもりもなかっ た。

瀧見:ないですねえ。結果からみれば、YMOとか拓郎,陽水、松任谷由実とか、ああいう前の世代のミュージシャンの力ってほんとでかいなと思いますけどね。結局あとの世代は彼らを超えてないわけだから、セールス的にも影響力という意味でも。あとクルーエルに関して言えば、自社内フォロワーみたいなものを作らなかったんで。それをやっていたら、違う展開もあったかもしれない。同じような音楽性でも、それ以上のアーティストでなければやる意味がないと思ってたから。明らかに、その当時売れてたうちのアーティストを見本にしたようなアーティストやタレントの売り込みが、ほんと一杯あったんですよ。その後別の会社で大ヒットした人もいましたね。

――ラヴ・タンバリンズは明らかにその後のディーヴァ・ブームの先駆でしたよね。そこで二の矢三の矢を放っていれば……。

瀧見:そこまでできなかったんですよねえ。

――拒否してた?

瀧見:拒否とも違うんだよな……ま、ビジネスセンスがなかったんですよ、という事にしといて下さい(笑)。

――でもそこでイケイケにならなかったから、ブームに流されず、25年近くもやれたというのがあるんじゃないですか。25年前から続いているインディーズ・レーベルがいくつあるか考えたら……。

瀧見:そう考えるしかないんですかね(笑)。

     
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