>  > 80年代アイドルはなぜ成功したのか

北川昌弘が「アイドル40年史」を語る(中編)

松田聖子、小泉今日子、中森明菜...『あまちゃん』でも注目、80年代アイドルはなぜ輝いていた?

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 『山口百恵→AKB48 ア・イ・ド・ル論』(宝島社)を上梓したアイドルウォッチャー北川昌弘氏が、40年のアイドル史を振り返った上で、これからのアイドルの在り方を考察する集中連載第ニ回。

第一回「『AKB48は、もはやアイドルじゃない!』古き良き"歌謡曲アイドル"はこうして絶滅した」では、北川氏にとってのアイドルがどういった存在なのかを定義してもらった。第二回では、アイドル全盛期と言われた85~87年と、アイドル冬の時代と言われた88年~93年の間に何が起こったのかを語った。

――NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』をきっかけに、80年代アイドルに改めて注目が集まっています。この時期のアイドルの特徴とは?

北川昌弘(以下、北川):まず、70年代後半から80年代初頭にかけて、アイドル界に大きな変化がありました。77年、キャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と引退宣言をした後、80年には映画もドラマもしっかりできるアイドルとして活躍していた山口百恵、奇抜なダンスと楽曲で一大センセーションを起こしたピンクレディーが相次いで引退します。そこに、松田聖子という人が見事にとって代わって現れた。今になって考えると、アイドル界がダイナミックに変化した時期でしたね。で、その松田聖子の影響下に、松本伊代、堀ちえみ、小泉今日子、中森明菜などの82年組が出てくる。誰もが"聖子ちゃんカット"を真似してデビューするのですが、面白いことに、松本や堀のような徹底した模倣者は本家を越えることができず、早い段階で方向転換した小泉や中森が後になって大成したんですよね。

 その潮流には、歌謡曲というものがベースにあり、レコードを売ることがアイドルの本業であるというスタンスがきっちりとありました。テレビに出るのもそのプロモーションの一環でした。そして、85年から87年にかけて、とんでもないアイドルブームが起こります。僕の考えでは、ホームドラマに性教育的な要素を取り入れたドラマ『毎度おさわがせします』に出演していた中山美穂の存在と、ドラマ『スケ番刑事』の大ヒット、おニャン子クラブのブレイクが一気に起こり、一大ブームになったのだと推測しています。この頃から、アイドルたちはレコードを売るのではなく、総合的なキャラクターを売るようになっていきました。

――音楽を聴く媒体も、レコードからCDへ移行している時期でした。

北川:僕の印象では、88年頃にテレビで音楽を聴くというスタイルが終わったんです。最初は、テレビよりFMの方が良い、なんて言っていた。そのうちウォークマンなんかも出てきて、好きな音楽を自分で持って、いつでもどこでも聞けるというような流れが出てきて、だんだんと「テレビで歌うのはダサい」という風潮が生まれました。

 あと、レコードからCDへの移行期の直前に僕がとても気になったのは、レコードジャケットの表面にバーコードが印刷され始めたこと。80年代くらいからバーコードが普及してきたんですが、あれを見た瞬間は「えっ!」て思いましたね。本とかはバーコードを裏にするのに、レコードは目立つところにバーコードが入っていて、ジャケットの魅力を明らかに損なっていた。ジャケットは、アイドルファンにとって大切なアイテムのひとつなのに、それに対してとても失礼なことをしていた。そういう時代の流れもあって、アイドル歌謡曲というものは崩壊していったんです。そしてアイドル歌謡曲という文化が消えていった時に、アイドルにはほとんど何もなくなっていたんですよね。

――そして冬の時代に突入したと?

北川:僕は88年から93年を「アイドル冬の時代」と定義しているんですが、その要因は歌謡曲の崩壊以外にもあります。まず、バブル景気がやってきたこと。これはよく言われていることなんですが、景気が良くなるとアイドルや癒し系の女性よりもセクシー系の女性が世に求められる傾向が強くなるのではないかと思います。つまり、可憐なアイドルは時代にそぐわなくなっていったのではないか。また、一番大きな要因は、当時の中高生に「アイドルファン、オタクだと思われたくない」という意識があったことではないでしょうか。

――というと?

北川:オタクという言葉が世間に浸透したのは80年代の後半なんですが、88年には宮崎勤が東京・埼玉連続幼女誘拐殺害事件を起こします。宮崎はオタクだという報道がなされ、オタク=危険人物というイメージが世間に広く浸透します。そういう報道を観ていた当時の中高生は、アイドルにハマることに対する心理的な抵抗が強かったのではないか。また、その時はテレビゲームとかもありましたから、アイドルにハマらなくても他に夢中になることがあったのでしょう。さまざまな要因が重なって、アイドル冬の時代が来たのだと思います。

     
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