岡島紳士が語る「ポスト戦国時代のアイドル」(後編)
恋をしても許されたアイドル AKB48指原莉乃はなぜ支持を失わないのか
『グループアイドル進化論』(マイコミ新書)の共同著者であり、アイドル専門ライターの岡島紳士氏が、激変するアイドル業界の"今"について語る集中連載。前編では次世代アイドルが多様化した背景について、中編ではモーニング娘。が再評価された経緯について語ってもらった。後編ではいよいよ、アイドル業界を語る上で欠かせない存在であるAKB48が登場する。
前編:「アイドル戦国時代はすでに終了 BABYMETALら次世代の新たな戦略とは?」
中編:「モーニング娘。の逆襲が始まった ハロプロ勢が再評価される理由」
――話題に事欠かないAKB48ですが、今年一番のトピックはなんでしょうか?
岡島紳士(以下、岡島) 指原莉乃さんが総選挙で1位を獲得し、新曲「恋するフォーチュンクッキー」でセンターに抜擢されたことでしょう。
――多くの方がご存じのように、彼女は過去に元ファンの男性と友人関係にあったと報じられ、HKT48に移籍した経緯があります。また、最近ではTBS系バラエティ番組「HKT48のおでかけ!」にて、「彼氏にカレーを作ったことがある」と発言し、物議を醸しましたね。
岡島 ただ、彼女が移籍してからHKT48の人気が上昇してきているのは事実だし、センターに抜擢されたことからも、彼女がファンや大衆からの支持を失っていない、ということがわかります。もちろんアンチだっているでしょうが、実力があるから認めざるを得ないし、今回の総選挙の結果は賛否両論あれど、指原さんがセンターにならなければ、ここまで話題にならなかったんじゃないかな、と思います。
――彼女はなぜ支持を失わないのでしょう?
岡島 セルフプロデュース力が高いゆえ、でしょう。彼女はもともと、歌やダンスにおいて他のメンバーより特別優れているわけではないし、飛び抜けてスタイルが良いわけでもありません。しかし彼女は「さしこのくせに」というキャッチフレーズをつけられ、自身のブログ「指原クオリティー」の運営などによって、ほかのメンバーにはない個性を自ら創出してきました。いわば、アイドルとして際立った武器がないところから、創意工夫で自分のキャラクターを打ち出してきたのです。そのプロデュース力の高さから、「秋元康の後継者」と呼ばれることさえあります。
また、バラエティ番組向きのキャラクターであることも見逃せません。アイドルにとって地上波のバラエティ番組に出演して、露出を増やすことは大切です。しかし、バラエティ向きのキャラクターというのは、そう簡単に身に付けられるものではありません。指原さんの場合は、前出の騒動さえネタにして、うまく立ち回る要領の良さがあります。