『デススト2』『ドンキーコング バナンザ』も 「Game of the Year」戴冠を争った、2025年ゲームカルチャーを彩った6作品

師走へと突入し、1年の終わりを意識し始める今日この頃。ゲームフリークにとってこの時季の風物詩といえばゲーム分野における賞レースであり、気になるのはその行方だろう。
12月12日(日本時間)、世界最大級の年次表彰式典「The Game Awards 2025」が開催された。最優秀作品賞にあたる「Game of the Year」には、前評判どおり、フランス発のRPG『Clair Obscur: Expedition 33』が輝いた。本稿では、ノミネート作品から今年のゲーム業界を振り返る。
ゲーム分野における世界最大規模の年次表彰式典「The Game Awards」
「The Game Awards」は、カナダ出身のゲームジャーナリストであるジェフ・キーリー氏が創設した、ゲーム分野における世界最大規模の年次表彰式典だ。例年、その1年(※)のゲームカルチャーを彩った数々の人気作品たちがノミネートされ、最も権威のある賞とされる「Game of the Year」の受賞を争う。そのような性質から、式典そのものの名称よりもこの最優秀賞の存在がフリークたちには広く認知されている。その年、最も業界を賑わせ、価値のある体験を届けたタイトルを決めるのが、「The Game Awards」というイベントだ。
過去5年(2020~2024年)の「Game of the Year」受賞タイトルは以下。
・2020年『The Last of Us Part II』
・2021年『It Takes Two』
・2022年『ELDEN RING』
・2023年『Baldur's Gate 3』
・2024年『アストロボット』
一見してわかるとおり、その年に話題を集めた、押しも押されもせぬ人気作たちがラインアップされている。日本国内のゲームフリークにとっては、「国産タイトルと海外タイトルのどちらが最優秀賞に輝くのか」という見方も面白いかもしれない。参考までに、過去5年では、国産タイトルの受賞が2回(『ELDEN RING』『アストロボット』)、海外タイトルが受賞が3回(『The Last of Us Part II』『It Takes Two』『Baldur's Gate 3』)と、拮抗した結果となっている。
2025年の開催では、『Clair Obscur: Expedition 33』『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』『ドンキーコング バナンザ』『HADES II』『Hollow Knight: Silksong』『Kingdom Come: Deliverance II』の6作品が「Game of the Year」にノミネートされた。
※審査員によるノミネートには期限が設定されており、前年の期限日以降、その年の期限日までに発売されたタイトルが選考の対象となる。
大本命『Clair Obscur: Expedition 33』が「Game of the Year」に
事前の予想において「Game of the Year」の大本命と考えられていたのが、フランスに拠点を置くゲームスタジオ・Sandfall Interactiveが開発を手掛けたターン制RPG『Clair Obscur: Expedition 33(クレールオブスキュール:エクスペディション 33)』だ。
2025年4月、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PCでリリースされた同作は、洗練されたグラフィック、独創性のある世界観/シナリオ、伝統と革新を両立したシステムなどが評価され、たちまち話題のタイトルとなった。リリースから3日間で販売数は100万本に到達。その後も順調に数を伸ばし、2025年10月には500万本を突破した。
まだ対象期間の半分ほどしか経過していない時点ながら、当初から「Game of the Year」の最有力候補に推す声は大きく、実際に11月に開催された「Golden Joystick Awards」では、最優秀作品賞にあたる「Ultimate Game of the Year」に輝いている。
『Clair Obscur: Expedition 33』は、「The Game Awards 2025」において全作品のなかで最多となる10部門にノミネートされ、結果「Game of the Year」をはじめ、計9部門を受賞した。
発売3日で100万本突破、“年間ベスト”に推す声も 『Clair Obscur: Expedition 33』はなぜ支持を集めるのか
4月24日にリリースされた新作ゲーム『Clair Obscur: Expedition 33』がにわかに話題を集めている。なぜ決…日本からは『デススト2』『ドンキーコング バナンザ』がノミネート
一方、国産タイトルからは2つの話題作がラインアップされていた。そのひとつがコジマプロダクション開発、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)発売のアクションアドベンチャー『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』だ。
2019年にPlayStation 4でリリースされ、大好評を博した前作『DEATH STRANDING』から約6年ぶりの続編となった同作は、その発売時期が決定したときから、2025年屈指の注目作に数えられていた。リリース後もそうしたフリークたちの期待を裏切ることなく、全方位から高評価を獲得。今回の成功によって、シリーズは国産アクションアドベンチャーとして不動の地位を確立したと言えるだろう。
惜しむらくは、ライバル作品たちが強すぎることだ。「Golden Joystick Awards」でも「Ultimate Game of the Year」にノミネートされたが、受賞した『Clair Obscur: Expedition 33』のほか、後述する 『Kingdom Come: Deliverance II』 『Hollow Knight: Silksong』にも後塵を拝し、第5位の結果となった。
『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』が受賞となれば、SIEは2024年の『アストロボット』に続き2年連続での戴冠だったが、来年以降に期待したい。
『デス・ストランディング2』死は別れじゃない 繋がるべきものと分かたれるべきものの境界
良質なシナリオを持つゲームを楽しみ、プレイングのあいだに隠された真相を読み解く連載企画「ゲームシナリオの深層」。第2回は『デス・…もうひとつの国産タイトルは、任天堂が開発/発売を手掛けた『ドンキーコング バナンザ』。Nintendo Switch 2がローンチを迎えた2025年だからこそ、同作のラインアップはある意味で象徴的でもある。
『ドンキーコング バナンザ』の面白さは、画面に映るあらゆるオブジェクトを、主人公であるドンキーコングのあふれるパワーをもって破壊し続けられる点にある。シリーズが新たに手に入れた“現代性”は、プレイヤーの体験の良化に大きな影響を与えた。
こうしたゲーム性をベースに、発表時の話題性に違わないインパクト/評価を残した『ドンキーコング バナンザ』。惜しくも「Game of the Year」は逃したものの、「Best Fighting Game」に輝いたのは一つの功績だ。『マリオカート ワールド』もノミネートされていた同部門を制したことで、「ドンキーコング」ブランドの強さをあらためて証明したと言えるだろう(『マリオカート ワールド』は「Best Sports/Racing Game」を受賞)。
もし同作が「Game of the Year」を戴冠していれば、任天堂は、2017年にNintendo Switchのローンチタイトルとして登場した『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』以来、8年ぶりの受賞だった。
『ドンキーコング バナンザ』に盛り込まれるゲーム性の拡張 “進化”に感じた既視感の正体
Nintendo Switch 2専用タイトルとして発売される「ドンキーコング」シリーズ最新作は、どのような体験を私たちに届けて…ローグライクの地力を感じさせる『HADES II』のノミネート
残りの3作品はすべて、海外タイトルである。最初に紹介するのは、アメリカに拠点を構えるゲームスタジオ・Supergiant Gamesが開発/発売を手掛けたローグライク・ダンジョンアドベンチャー『Hades II』だ。
同作もまた、2020年9月にリリースとなった前作『Hades』に集まる好評を追い風に、存在が明らかとなったときから、フリークたちの注目を独占した。発売後もそうした期待を裏切ることのない高評価を獲得。Steamにおける直近30日間のユーザーレビューでは、「全体の98%がおすすめ」という圧巻の数字を残している。
シリーズが熱狂的に支持される背景には、シンプルながら奥深いシステムや、独創的なシナリオ/世界観、インディーらしからぬビジュアルデザインとUIの良さ、そしてそれらに裏付けられた高い中毒性の存在があると考える。「手に取りやすさ」と「価格以上の体験」は、成功するインディータイトルの必要条件であると言えるだろう。
また、『Hades II』のノミネートには、「ローグライク」のトレンドがいまなお続いていることも映し出されている。2020年の『Hades』、2021年の『DEATHLOOP』、2024年の『Balatro』と、ローグライクのエッセンスを取り込んだタイトルは、「Game of the Year」ノミネート作品の常連となりつつある。例年、惜しくも受賞を逃してはいるが、ゲーム市場、ゲームカルチャーに対する影響力は本物だろう。来年以降の動向を探るうえでも、重要な意味を持っているのが、『Hades II』のノミネートである。
“発売日かぶり回避”続出という珍しいムーブメントを生んだ『Hollow Knight: Silksong』
次は、オーストラリアのゲームスタジオ・Team Cherryが開発/発売を手掛けたメトロイドヴァニア『Hollow Knight: Silksong』だ。2017年2月に発売され、好評を博した『Hollow Knight』の続編で、同作もまた、発表時からフリークたちの注目を集めた。『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』『Hades II』とのあいだには、「好評を博した前作の続編」という共通項もある。この点もまた、2025年の「Game of the Year」ノミネート作品の傾向と考えられるかもしれない。
『Hollow Knight: Silksong』のリリースをめぐっては、「競合他社が同作の市場に対する影響力を考慮し、取扱作品の近い時期での発売を避ける」という、珍しいムーブメントも巻き起こった。その意味においても、『Hollow Knight: Silksong』は、2025年のゲーム業界を振り返るうえで欠かせない作品であるだろう。
また、ここまでに紹介した『Clair Obscur: Expedition 33』『DEATH STRANDING 2: ON THE BEACH』『ドンキーコング バナンザ』と、後述する『Kingdom Come: Deliverance II』がフルプライスタイトルであることを踏まえると、『Hades II』と『Hollow Knight: Silksong』のノミネートは、「両作が2025年を代表するインディーゲームであること」を裏付けているとも言える。インディーの躍進が顕著なゲーム業界。『Hades II』『Hollow Knight: Silksong』は、その1年を振り返るうえで欠かせない、重要なパーツとなっている。
不自由さのなかにある面白さを体現、RPG『Kingdom Come: Deliverance II』
最後は、チェコに拠点を置くゲームスタジオ・Warhorse Studiosが開発を手掛けたアクションRPG『Kingdom Come: Deliverance II』だ。タイトル名を見てわかるとおり、同作もまた、好評を博した前作の続編という性質を持っている。
舞台となっているのは、15世紀の中世ヨーロッパで起こったボヘミアの内乱。プレイヤーは、スカリッツ出身の平凡な若者・ヘンリーとなり、美しくも残酷な世界で描かれる愛と復讐の物語を見つめていく。
『Kingdom Come: Deliverance II』も『Hades II』同様、Steamにおける直近30日間のレビューでは、「全体の97%がおすすめ」という圧巻の数字を残している。シリーズ2作目という性質を持つ全作品に言えることだが、重圧のなかで制作した続編において、大きすぎる界隈の期待に応えるのは、並大抵のことではないだろう。
同作の魅力は、圧倒的なリアリズムで描かれる中世ボヘミアの景色と、そこで紡がれる重厚なストーリーだろう。こうした要素が主人公へのロールプレイを通じて得られる没入感や、独自の成長システム、バトルシステムと相まって、無二の体験を届けている。特徴的なのは、現実的であることを追求するために、ゲームでは取り払われてしまいがちな面倒くささを残している点。こうした性質には、『Kingdom Come: Deliverance II』が「エルダースクロールズ」シリーズ、「ドラゴンズドグマ」シリーズなどの文脈に連なる作品であることを感じ取れる。今後、同作は、典型的な海外RPGの成功例として語られていくのかもしれない。


























