STARTO退所の大野智は、過去に戻っても〈おなじ路(みち)〉を選ぶのか――Netflix『ARASHI's Diary -Voyage-』から見る分岐点
3月4日、嵐がおよそ5年半ぶりとなる新曲「Five」をデジタルリリースした(CDはファミクラストア オンライン限定で完全受注生産)。3月13日には、北海道・大和ハウス プレミストドームにて、全国5都市をめぐるラストツアー『ARASHI LIVE TOUR 2026 「We are ARASH」』が開幕するだけに、5人が再び揃う喜びと、5月31日の“最後の日”に向かっていく寂しさ――その両方を抱え、複雑な心境のファンも多いことだろう。
1999年9月に大野智、櫻井翔、相葉雅紀、二宮和也、松本潤の5人で結成され、その後、国民的アーティストとして不動の地位を築いた嵐。しかし2019年1月、「一回立ち止まって自分を見つめ直したい」という大野の意思を尊重するかたちで、2020年末をもって活動を休止すると発表した。
Netflixのドキュメンタリーシリーズ『ARASHI's Diary -Voyage-』では、彼らが大きな決断に至った背景や、気持ちが揺れ動くリアルな姿を全24回にわたって映し出している。
この記事では、数あるエピソードの中から、メンバー1人ずつをフィーチャーした回に注目。それぞれのグループに対する想いや当時の心境を振り返りながら、活動を再開した彼らに思いを馳せていく。
相葉雅紀「実家を継ごう」、大野智は嵐入りで「就職だ」 5人の“ありえたかもしれない道”
2019年12月から配信を開始した『ARASHI's Diary -Voyage-』は、2020年の大みそかを跨いだ翌年2月まで毎月のように最新エピソードが公開されていた。そして全24回のうち5回は、メンバー個人にスポットをあて、それぞれのインタビューや、学生時代の友人や恩師らと再会し、思い出話に花を咲かせながら過去に立ち返る“ソロ回”となっている。
各回に共通しているのは、彼らが事務所に入る前の様子やそのきっかけを語る点だ。二宮は「おじいちゃんの工場を継ぐはずだった」、相葉は「18歳までにCDデビューができなかったらジャニーズJr.(現在はジュニア)をやめて、親父の道(実家のレストラン)を継ごうと思っていた」と語るなど、事務所入りという彼らの人生の分岐点に戻ることで“ありえたかもしれない道”を想像させる作りになっている。
そして、やはり今のこのタイミングで見ると、それをよりリアルに感じさせるのが、大野の語りだ。
CDデビューの野望を持っていたタイプではなく「踊りがうまくなりたい、しか思ってなかった」という大野。「高校は3日行って辞めちゃった」と語り、事務所側に高校退学を伝えたところ、京都行きを提案され、現地で上演された舞台『KYO TO KYO』に2年間出演。そこで完全燃焼し、「(事務所を)辞める」と申し出たものの、いろいろと濁され、「レコーディングを手伝ってくれ」との言葉に応じた結果、それが嵐のデビュー曲だった――。
そのとき、大野は初めて「あっ、就職だ」と思ったという。事務所に入ったときではなく、嵐に入ったことを“就職”と感じる。ほかの同事務所所属タレントたちのデビュー決定時のエピソードと比べても、少し落ち着いたトーンの、大野なりの表現である。
そんな大野は、グループ活動を終えるタイミングでSTARTO社を退所することが発表された。“就職”してからの20年超をやりきった果てに、人生の分岐の前に想像していた道の先を進むのかもしれない。
道が分かれる前の話を聞けば聞くほど、本人は現在に続く道を進んだことをどう思っているのだろう――と考えずにはいられない。だが一方で、この歌詞のように思っていてほしいなとも思う。
〈もう一度 あの日に戻るとしても おなじ路(みち) 選ぶだろう〉(「Oh Yeah!」より)
二宮和也、櫻井翔は「天才」 m-flo・VERBALも認めたラッパーとしての才能
さて、このドキュメンタリーシリーズでは、彼らのクリエイティブな側面に触れることができるのも特徴だ。二宮の回は、その大部分が“作曲秘話”に割かれる。二宮が自ら曲を作ることになった経緯や、往年のファンからの人気が高い「ファイトソング」や「エナジーソング~絶好調超!!!!~」の原型、完成までの流れ――。喜々として語る二宮はとにかく楽しそうで、「天才」とも呼びたくなる。
だが、二宮は、自分が作った楽曲に2日でラップ詞をつけてきた櫻井のことを「天才」と称す。
嵐のラップ担当である櫻井は、そのはじまりを「デビューのときに、たまたまラップパートを任されて」と偶然のように語る。だが、デビューの2年後にm-floのVERBALに出会い、「せっかくラップやってるのに、なんで自分で書かないの?」と言われ、衝撃が走ったそう。「僕らの仕事は、もともと人に書いていただいたものを歌うっていうのが仕事だと思っていたから……自分で作るとか自分で書くなんてことは思考回路になかった」のだ。
だが、「そのまま自分で書かなかったら、きっとこの先歌ってくラップっていうのは、“ラップっぽい何か”で、少なくともヒップホップではないし、“ラップのように聞こえるもの”を歌うだけになっちゃうなあ」と感じ、ラップ詞を自作し始める。
VERBALの言葉や、当時、TERIYAKI BOYZ(VERBALがRIP SLYME のILMARIやRYO-Zと結成したヒップホップグループ)に櫻井を誘ったという過去の出来事からは、櫻井のラッパーとしての力量の底知れなさもうかがえた。
また、相葉の回には、2005年上演の『燕のいる駅』を皮切りに、多くの相葉主演舞台を演出してきた宮田慶子氏が登場。30個ほど指摘した点を、メモも取っていないので心配していると、次の日には完璧に直してきたこと、役に入り込みすぎた結果「過呼吸になるほど泣く」といった裏話が披露された。
「アイドルやっていくっていうことは、この集中力がないと、そもそもここまで来てないんだなっていう感じがやっぱりした」と宮田氏は振り返る。相葉の真面目で努力家な性格がよく伝わるエピソードだった。
「自分たちよがりにならないかな」嵐の演出担当・松本潤の苦悩
松本のクリエイティブに関しては、後輩グループのSnow Manや、事務所の合同コンサートでも総合演出を手がけるなど、STARTO所属タレントのファンには周知されていることだろう。
ライブの準備シーンなど、このドキュメンタリーでも全編を通して滲み出ていたが、ソロ回では海外進出に動いていた姿に密着。2019年の夏にニューヨークに渡り、YouTubeの音楽部門の責任者と面会するなどして、「今までやったことないチャレンジに向かう」と話した。
だがその後、新型コロナウイルスの世界的流行で思わぬ方向に。2020年3月、松本は「このコロナの影響を受けると、新しいチャレンジをするというところに向いているのが……独りよがり、自分たちよがりな思いにならないかな」とその苦悩を語る。結局コロナ禍により、予定されていた海外でのライブができないまま活動休止を迎えた。
なお、松本は2019年の時点でこう語っていた。
「仮にこれがうまくいかなくても、“うわ失敗したわ”って笑えるんじゃないかなとすら思うというか。(中略)思い出になるんじゃないかなと思う」
5人での活動を本格化し、最後の思い出を作って走り抜けようとしている今、あらためて『ARASHI's Diary -Voyage-』を見ると、彼らの覚悟と思いの深さを再発見できるだろう。


























