発売3日で100万本突破、“年間ベスト”に推す声も 『Clair Obscur: Expedition 33』はなぜ支持を集めるのか

4月24日にリリースされた新作ゲーム『Clair Obscur: Expedition 33』(クレールオブスキュール:エクスペディション 33)がにわかに話題を集めている。
なぜ決して広くは認知されていなかったタイトルが、これほどまでのトレンドを生み出しているのか。本稿では、『Clair Obscur: Expedition 33』のゲーム性から、支持の理由を考えていく。
ベル・エポック時代のフランスを舞台にしたコマンドRPG『Clair Obscur: Expedition 33』
『Clair Obscur: Expedition 33』は、フランスに拠点を置く新興のディベロッパー・Sandfall Interactiveが開発を手掛けたリアルタイム型のターン制RPGだ。舞台は、ベル・エポック時代のフランスをモチーフにした幻想的な世界。プレイヤーは人類に死の呪いをかける魔女「ペイントレス」を打倒すべく、第33遠征隊の一員として決死の旅へと出かけていく。
特徴となっているのは、JRPGらしいターン制と、回避やパリィ、カウンターといったリアルタイムアクションを組み合わせたバトルシステム。戦闘にはキャラクター同士の連携やコンボなど、システムにさらに深みを持たせる要素も数多く採用されている。装備やスキル、キャラクターなどを自由に組み合わせ、プレイスタイルに合う自分だけの遠征隊を編成することが、同タイトル最大のゲーム性だ。
開発元のSandfall Interactiveは、ユービーアイソフトで活躍したメンバーなどによって2020年に設立されたインディーゲームスタジオで、彼らにとって『Clair Obscur: Expedition 33』は初めて世に送り出す作品となる。対応プラットフォームは、PlayStation 5、Xbox Series X|S、PC(Windows/Steam/Epic Games Store)で、価格は7,480円(税込)。なお、PlayStation 5ではパッケージ版が展開されているほか、Xbox/PCではGame Passにも対応している。
『Clair Obscur: Expedition 33』が支持を集める2つの理由

存在が明らかとなって以来、感度の高いフリークたちから一定の注目を集めてきた『Clair Obscur: Expedition 33』だが、リリース後はそうした戦前の期待を大きく上回ると言っても過言ではない結果を残しつつある。
Steamでは全体の92%が「おすすめ」と評価し、上から2番目のレビューランクである「非常に好評」へと分類されている。発売以降、最初の週末となる4月27日には、同プラットフォームにおける同時接続プレイヤー数が12万に到達。さらに、国内でPlayStation 5・パッケージ版のパブリッシングを担当しているセガによると、発売から3日間での販売本数は100万本を突破したという。界隈ではさっそく、年間でもっとも優れたゲーム作品に贈られる賞「Game of the Year」の最有力候補であるとの声が出始めている。リリース前の認知度から考えると、これ以上ない成功を手にしている現状だ。

なぜ一介のインディースタジオが開発した、(少なくともリリース前の時点では)決して広く認知されていたとは言えないゲーム作品が、これほどまでの支持を集めているのか。そこには2つの理由があると考える。
ひとつは、システムの“ちょうどよさ”だ。先にも述べたとおり、『Clair Obscur: Expedition 33』は、古き良きコマンドRPGと、現代的なリアルタイムアクションを融合したバトルシステムを特徴としている。敵からのダメージを最小限にするためには、目押しによる回避/パリィ操作が求められ、また、より効率的にダメージを与えるためには、フリーエイムによる射撃を行う必要もある。
これら2つの要素は、アクションRPGやシューターといった、昨今トレンドとなっているジャンルからの借り物であると言えるだろう。その一方で、軸足をコマンドRPGに置いていることが、アクション好きには退屈さを感じさせず、RPG好きには新鮮さを与える、独特のインプレッションを生み出している。
もちろんゲームカルチャーを振り返れば、これまでにも同様のアプローチでシステムを設計した作品はあっただろう。しかしながら、それらを絶妙なバランスで形にしたものは、それほど多くなかったのではないか。異なる2つのエッセンスを高次元で融合し、独自のシステムを体現したことが、『Clair Obscur: Expedition 33』の魅力のひとつであると言える。

一方、もうひとつの支持の理由は、独創的な世界観である。ベル・エポック時代のフランスをモチーフにしたその世界は、恐ろしさと美しさが共存しており、こちらもまた、ほかにはない独自性を『Clair Obscur: Expedition 33』にもたらしている。これまで数々のゲームをプレイしてきたコアゲーマーでも、その世界には目新しさを感じたはずだ。
また、そのような舞台のもとで描かれるシナリオでは、思いがけない展開が連続する。秀逸なストーリーと演出の数々に、映画を観ているような感覚をおぼえたプレイヤーも少なくなかったと想像する。
同タイトルにおいて、主人公たちは『「ペイントレス」がモノリスに描き出す呪いの数字によって死を決定づけられてしまう』という数奇な運命のなかを生きている。仮に「映画のようなシナリオ」を新しいアプローチのひとつであるとするならば、こうした理不尽とも言える設定は、古くから定番とされてきたものであると言える。
たとえば、王道の人気RPG作品のみに限定しても、『真・女神転生III-NOCTURNE』や『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』『ファイナルファンタジーX』などがこのような設定を用い、プレイヤーをその世界に引き込んできた。比較的新しい作品では、『NieR Replicant』もおなじ類であるだろう。こうした設定がプレイヤーにもたらすのは、圧倒的な没入感だ。「主人公やその世界に生きる人たちに感情移入した結果、物語にのめり込み、いつの間にか夢中となっていた」。プレイを通じて、そのような体験をした人も多いのではないか。
『Clair Obscur: Expedition 33』は、支持の理由であると考えられるシステムと世界観の両面に、伝統と新しさを共存させた設計を持っている。こうした対比が、馴染みやすさ、新鮮さとしてプレイヤーに作用している面もあるのかもしれない。
『Clair Obscur: Expedition 33』の快進撃はどこまで続くか。彗星のごとく現れた“「Game of the Year」最有力候補”の今後の動向に注目だ。























