これぞハンドヘルドの理想形 『ROG Xbox Ally X』で真に解放されたPCゲーム体験を

近年のPCゲーミング界隈には、ハンドヘルドの風が吹いている。すなわち、ポータブルゲーミングPCのトレンドだ。Valveの『Steam DECK』を皮切りに、ASUSやLenovo、MSI、GPD、AYANEOなど、多くのメーカーがロマンあふれる独自モデルを手掛けている。
このうち業界をリードするASUSが、2025年10月に最新のポータブルゲーミングPC『ROG Xbox Ally』と、上位モデル『ROG Xbox Ally X』を発売した。価格は『ROG Xbox Ally』が8万9800円、『ROG Xbox Ally X』が13万9800円。
ASUSはすでに「ROG Ally」シリーズを手掛けているが、今回はあのMicrosoftと協業。Microsoftはゲーム機としてのXboxや、同ブランドにまつわる多くの周辺サービスを手掛けている。Xboxの名を冠するということは、ある意味でMicrosoftお墨付きになったというわけで。
事実、筆者の感想としては「現在もっとも完成度の高いポータブルゲーミングPCに進化した」と感じている。詳しくレビューしていこう。
どっしりグリップが生み出す安定感

写真左の白いモデルが『ROG Xbox Ally』、右の黒いモデルが『ROG Xbox Ally X』。デザイン面では筐体カラーやボタンの色が異なり、さらにスペックも大きく異なる。
具体的には『ROG Xbox Ally』はSoCにAMDのRyzen Z2 Aを採用。このSoCはエントリー向けで、そこまで性能は高くない。一方の『ROG Xbox Ally X』はRyzen AI Z2 Extremeを採用し、ポータブルゲーミングPCが選べるSoCとしては最上位のモデルを搭載している。メモリも16GBと24GBで異なる。

ディスプレイはどちらも7インチの120HzFHD、輝度は500ニト。写真右の『ROG Xbox Ally X』のみディスプレイにGorilla Glass Victusが搭載されており、反射低減と耐久性向上の面で違いがある。実際にそれぞれのディスプレイを最大輝度にして見比べてみても、『ROG Xbox Ally X』の方が明るかった。
それぞれの価格差が5万円ということで、例えばインディーズゲームなどの軽量なPCゲームを楽しみたいのなら『ROG Xbox Ally』を、AAAタイトルを高画質で楽しみたいのなら『ROG Xbox Ally X』と、遊びたいゲームによって棲み分けているかたちだ。本記事では、上位モデルの『ROG Xbox Ally X』を中心に紹介していこう。

従来の「ROG Ally」シリーズからの大きな変更が、この大胆なグリップだ。グリップの形状はXboxのコントローラーから着想を得ており、握りやすさや操作性が入念に計算されている。

「ただグリップが変わっただけ?」と思うかもしれないが、侮るなかれ。
従来のモデルは筐体を握った際に落とさないよう、ギュっと側圧をかける必要があった。ところが、本機は自然に手を添えただけで手が筐体を支える形となり、側圧をかける必要がない。例えるならグリップのないデジカメと、グリップが深いデジカメを持ち比べた際の感覚に近く、この差はとても大きい!
この手の携帯型ゲーム機は、椅子に座ったりベッドに横になったりと、様々な姿勢でプレイできるのも魅力。グリップが安定すると姿勢を変えても落としづらく、腕も疲れにくい。このグリップを手に入れただけでも、Xboxと協業した意味があったと実感している次第だ。
カスタムOSが生む、ゲーム直行体験
ポータブルゲーミングPCすべての課題でもあるが、そもそも小さな画面ではWindowsが使いにくい。そこで本機は、カスタムされたWindows 11を搭載した。これもMicrosoftとの協業だからこそなし得た要素だろう。

新たに追加された「Xboxボタン」を押すと、カスタムOSならではの柔軟な操作を味わうことができる。実際にやってみよう。

ボタンを押すと、ゲームバーが起動。ここでXboxのホーム画面、ゲームライブラリ、あるいはASUSが提供しているPC機能の一元管理ソフト『Armoury Crate』などにアクセスができる。つまり、他のアプリに移動するためにデスクトップを見なくても済むのだ。

長押しすると起動中のアプリも確認できる。画面下にタスクバーが見えるのでWindowsであることはわかるが、ユーザー側の体験としてはWindowsを触っている印象はほとんどない。本体起動時もデスクトップではなくXboxアプリが立ち上がるため、起動時から電源OFF時まで、一貫してデスクトップを見ずに操作ができるのだ。
もうデスクトップの小さなアイコンを触って、ゲームを立ち上げる必要はない。もちろんフォルダ操作が必要な際は各アプリを最小化すればデスクトップを触ることもできる。
AAAタイトルのゲームも大満足の操作性

気になるゲームの操作感だが、『サイバーパンク2077』や『Forza Horizon 5』といった重量級のAAAタイトルも、全く問題なくプレイできた。グリップの安定感も相まって、ボタン操作も従来より快適な印象だ。写真では画面が賑やかになる弾幕シューティングをプレイしているが、チョン避けのような細かな作業も問題なし。
では、実際にどれほどの性能が発揮できているのか、ベンチマークといこう。

『Armoury Crate』アプリを使うと17W動作のパフォーマンスモードと、35W動作のターボモードが選べるので、それぞれのモードで計測した。なお、計測時はバッテリー駆動状態にしている。

まずはパフォーマンスモードでの測定。グラフィック性能を中心に評価できる『3DMARK Time Spy』での総合スコアは、3,583と出た。

次はターボモードで測定。総合スコアは3,862と1割以上もアップした。従来モデルのスコアがおおむね3,500前後なので、着実に進化している。
なお、『ROG Xbox Ally」でも『3DMARK Time Spy』でベンチマークをしてみようと思ったのだが、うまくソフトが立ち上がらなかった。代用として『サイバーパンク2077』のベンチマークモードを使って、『ROG Xbox Ally』と『ROG Xbox Ally X』のグラフィック性能を比較してみた。なお『ROG Xbox Ally』はパフォーマンスモードで15W、ターボモードで20W出力となる。

まずは両機ともパフォーマンスモードで測定。『サイバーパンク2077』側のグラフィック設定は、レイトレが最低限表現できるプリセットとしている。『ROG Xbox Ally』が平均12.85fps、『ROG Xbox Ally X』は23.11fpsとなった。

続いて、両機ともターボモードで測定。それぞれ13.28fps、26.95fpsとなった。モードを問わず『ROG Xbox Ally X』が倍近い描画性能を出せており、なんとかレイトレにも手が届くことがわかった。やはりAAAタイトルを遊びたい場合は『ROG Xbox Ally X』を選ぶほうが良いというのもわかる。
ハードとソフト、両面で大幅進化
総評としては、いま現在選べるポータブルゲーミングPCとしては頭一つ抜けた性能を示せていると感じた。特にハード面ではグリップの採用が大きく、いくらか本体が大ぶりになったとはいえ、そのデメリットを打ち消せる快適さを提供している。
ソフト面ではカスタムWindowsがとにかく快適。こちらについては他メーカーにも供与される可能性はあるが、ポータブルゲーミングにおいての快適さが追求され始めている良い傾向でもある。
今回は上位モデルの『ROG Xbox Ally X』を中心に評価したが、デスクでもソファでも、快適にAAAゲームが遊べる万能感はたまらない。一方の『ROG Xbox Ally』はコスパが優秀で、グラフィックが軽いゲームであれば充分にプレイできた。AAAタイトルはコンシューマーでプレイしつつ、個性的なインディーゲームをPCで遊びたいという人にとって、良い選択肢となりそうだ。























